神奈川県立教育センター・高等学校理科教育研修講座(地学第2日)受講報告

海岸の砂の観察 講師:萩谷宏先生 (98/07/21)

 第2日は所外研修で湘南海岸の砂のサンプリングだ。午前9時、小田急線片瀬江ノ島駅前に集合した一行は、まず江ノ島に近い、片瀬東浜で砂を採取。江ノ電で七里ガ浜へ。さらに徒歩で稲村ヶ崎を経て鎌倉の由比ヶ浜まで、海岸砂の比較観察をして歩いた。炎天下、若くて元気な萩谷先生の後を追っての野外研修はなかなかきつかった。


 片瀬東浜でのサンプリング。海の家が建ち並ぶ前で、浜にはいつくばってルーペで砂を見る一行。明らかに場違いな軍団に海水浴客の不審そうな目が・・・。東浜の砂は石英、長石のほか、黒雲母を多く含み、きらきら光っている。花崗岩由来の砂と考えられる。しかし、この海に注ぐ境川流域には花崗岩はなく、境川の河岸の砂には雲母は見られない。したがって、この黒雲母は相模湾から供給されたものだと考えるべきだという。丹沢の花崗岩が起源だろうか。


 七里ガ浜で萩谷先生の説明を受ける。海岸の砂が明らかに黒い。有色鉱物が豊富なのだ。波の加減か特に重鉱物が集積する場所がある。白く見える部分の砂もかなりの有色鉱物を含んでいる。輝石類が非常に多いのが特徴だ。

 七里ガ浜の海岸には波が周期的な凹凸を刻んでいる。何らかの干渉により生じる周期性だろうか。凹凸に沿って重鉱物が黒い隈取りを作っている。物理的にも興味深い光景だ。向こうは江ノ島。

 七里ガ浜の稲村ヶ崎に近いあたりで見た、側溝のような小さな川の出口。重鉱物が自然に選鉱されて黒々とした堆積を作っている。


 稲村ヶ崎の七里ガ浜側(左)と、由比ヶ浜側(右)。ここを境に海岸砂の鉱物組成が大きく変わる。七里ガ浜側の砂は見るからに黒々している。稲村に近いあたりは輝石のほか、磁鉄鉱も混じってくる。

 終着点の由比ヶ浜にて記念撮影。海岸の砂はかなり白っぽくなる。日本としてはノーマルな(?)砂に近い。岩片(軽石)が比較的多い。
 いずれにせよ神奈川の砂は特殊なのだそうだ。

 一行はこのあと鎌倉高校へと向かい、昼食をはさんでさっそくサンプルの分析に取りかかるのだった。うーん、鬼のような研修だなあ。

 

 波打ち際にはおびただしい数のナミノコガイ(フジノハナガイ科)が見られる。波が引いた瞬間に砂の中から一斉に姿を現す。そして、次の波に乗って移動するのだ。全ての波に反応するわけではない。強い波を見分けているようだ。一斉に行動するところから見て、何か共通の物理条件をキーにしていると見られる。研修テーマとは無関係だが、これも興味深い。

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