JOIDES Resolution 号見学記


 2000年7月19日、横浜港大黒埠頭において、深海掘削船「JOIDES Resolution号」の一般公開があった。本当は生徒を連れていきたかったのだが、終業式で落ち着かない日だったので、単独での取材研修となった。

 大黒埠頭までは横浜駅西口から一般公開参加者用の送迎バスが出る。途中、ベイブリッジから大黒埠頭が見える。奥に接岸している小さい方の船がJR号だ。高いやぐらが特徴的だ。

 船尾側から見たJR号。 JR号は以前は石油掘削船だった。改装して国際深海掘削計画(OceanDrillingProgram)に利用されている。一般公開に平行して補給作業が行われていた。

 海底ボーリング用のデリックと呼ばれるやぐら。船の長さが143mしかないのに、デリックの高さは甲板から62mもある。

 根元から見上げたデリック。ここでドリルパイプをつり上げ、継ぎ足ししながら、海底を掘り下げていく。深海掘削船ならではの設備だ。トップドライブと呼ばれるモーター部がてっぺんにある。

 デリックの基部。中央の柱のようなものがドリルパイプが通る部分だ。床の赤い板を取り外すと、ムーンプールと呼ばれる大きな穴が現れる。船体中央に穴が貫通していて海面が見えるのだ。掘削船なのだから当然といえば当然だが、ちょっと不思議。
 「なぜムーンなのか」との問いには、「丸いから」というしごく明快な答えが返ってきた。

 ドリルの先端部に取り付けられるパーツ。左端はAPC(AdvancesPistonCorer)カッティングシュー、水圧で海底に押し込み堆積物を乱さずに採集する。軟らかい海底に使用する。
 中央はXCB(ExtendedCoreBarrel)カッティングシュー、ある程度硬い海底のコアを切り取るシステムだ。先端のシューは、硬い岩石に突き当たると内部に格納され、周囲のロータリーコアビットがあとをついで掘り進む。
 右端はRCB(RotaryCoreBarrel)コアビット、ドリルパイプと共に回転しながら硬い岩石を削り取っていく、いわばドリルの刃にあたる部分だ。
 いずれの場合も、コアサンプルは中央の穴からドリルパイプの内部に収納されていく。

 舷側近くに積み上げられたドリルパイプ。この中にさらにサンプル保護用の塩ビパイプがおさめられる。長さ9.5mのサンプルは、甲板上でただちに1.5mの長さに切断され、ラボに持ち込まれる。「どうして割り切れない長さなんだろう」と考えたのは私だけではあるまい。

 船内に運ばれたコアサンプルは、物性ラボの入り口のこの棚に順番におさめられる。掘削が順調に進むときは、次々と上がってくるサンプルの運搬・整理に職員が奔走するそうだ。

 サンプルはまず物性ラボで非破壊検査を受ける。このマルチセンサートラックでは、コアをスライドしながら帯磁率測定、γ線密度測定、音波速度測定、γ線スペクトル測定が行われる。

 次いで、コアはカッターで縦に半割にされる。半分はただちに検査作業にまわされ、半分は保存用となる。保存用サンプルは写真撮影の後、将来の研究用として保管される。

 半割にされたコアサンプル。長さ1.5m。海底の地層断面を見ていることになる。

 あるサンプルの拡大。比較的砂利の多い、泥のようなサンプルだった。

 超伝導磁力計(SQUID)による古地磁気計測システム。地球の磁極反転により記録された帯磁パターンから、堆積物の年代を割り出すことができる。

 化学ラボでは、有機・無機の化学測定が行われる。岩石をプレスで圧縮して間隙水を絞り出し、元素濃度の分析を行うなどして、続成作用のしくみを解き明かす。堆積当時の地球環境の推定にも役立つ。
 掘削時のガス成分のモニタリングも重要な仕事だ。天然ガスが吹き出すと危険なので、その徴候があれば掘削を中止する。

 孔内計測ラボでは、掘削によってあいた海底の穴を利用して直接計測を行う。さまざまなロギングツールを掘削孔におろして、壁面のようすを観察する。観測ステーションを孔内に残して継続的に測定を行うこともあるという。

 孔内計測用ロギングツールのひとつ、FormationMicroscanner。孔の壁に電極を密着させ、地層各部の電気伝導度の変化を測定する。地層や岩石の組織、割れ目などが精密に画像化される。

 端末が並ぶ研究用のオフィス。調査の結果は航海中に論文にしてしまうという。研究は寸暇を惜しんで行われているのだ。

 狭い船内だが、ミーティングルームや、談話室、図書室などには比較的ゆったりとしたスペースが確保してある。快適な研究環境作りへの配慮がうかがえる。


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