平成12年度 理科テーマ別研修講座 第20回(地学4) 2000/11/15  

神奈川の岩石のふるさと

 教育センターの所外研修で西丹沢方面の露頭を見学した。県立生命の星・地球博物館の学芸員、平田大二先生のガイドで、伊豆半島と丹沢の衝突の過程をたどった。
 概略のシナリオはこうだ。1700万〜600万年前に本州のはるか南の沖合で起きた海底火山の活動により丹沢層群が形成されたが、その間の1500万〜700万年前ごろには花崗岩体の貫入があり周囲に変成作用を加えた。フィリピン海プレートの運動に伴い、800万〜500万年前にはこの丹沢ブロックが、ついで250万〜70万年前に伊豆ブロックが相次いで衝突、本州に付加される。そのころ両ブロックの間に挟まれて堆積・隆起したのが足柄層や中津層だ。丹沢層と足柄層を分ける境界が神縄断層である。その後、箱根・富士の火山活動が起こり、今日見られるこの地域の地形が形作られたという。


本日第一の観察ポイントは、丹沢湖の北側、中川温泉。河内川にかかる新湯之沢橋の下の河原である。

河岸、河床は結晶片岩の石畳。観察しやすい絶好の露頭だ。

露頭を前に平田先生の解説をうかがう。丹沢層の凝灰岩などが圧力による変成を受けてできた広域変成岩だ。

応力の方向に平行に片状組織が発達している。それと直行するように入っている白い石英脈はあとからできた割れ目に熱水が通ってできたもの。いわば温泉の化石だ。

強い応力によって断ち切られ、ねじ曲げられた組織も見ることができる。

第二の観察ポイント、西丹沢自然教室に到着。暖冬とはいえ、山深いこの地では紅葉が美しい。

自然教室の前の岩石園で平田先生の解説をうかがう。この地域の主な岩石が網羅されている。カット・研磨した面があるので組織も観察できる。

展示室内の標本。石英閃緑岩(トーナル岩)とホルンフェルスが接触しているところ。地下深部で丹沢層の凝灰岩がマグマに触れて熱変成を受けたのである。

県指定天然記念物の「いぼ石」。ホルンフェルス内に菫青石の大豆状結晶を生じている。菫青石が風化に強いためいぼのように突出したもの。

河原によく見られるゼノリス(捕獲岩)を含む石英閃緑岩。貫入してきたマグマが周囲の岩片をとりこんだもの。

白い河原と真っ赤な紅葉の対照が見事である。

予報では雨が心配されたが、昼頃には陽が射してきた。河原で紅葉をながめながらのんびりと昼食をいただく。こういう研修なら大歓迎だなー(^^)v。

第三の観察ポイントは谷峨に近い用沢の河内川の河原。「道の駅・山北」のすぐ上流である。

橋の下の河原に足柄層群の堆積層が大規模に露出している。絶好の観察ポイントだ。

地層は大きく傾斜し、伊豆ブロック衝突の強大な力を物語っている。

足元の礫岩。まるでコンクリートのようだが、れっきとした礫岩。まだ伊豆半島が沖の島だった頃、丹沢から洪水で運ばれてきた岩砕だろう。

礫岩、砂岩、泥岩の互層が累々と積み重なっている。層序を詳細に調べると、はじめは深かった海がその後急速に浅くなったようすが読みとれる。

砂岩層の組織の拡大。

カキのコロニーの化石。タマネギ状に累積しているのは、当時カキが代々ここで安定して繁栄を続けていた証拠だ。

大量のカキの化石を含む層は川を越えて対岸まで一直線に続いている。100万年前の豊かな海底を彷彿とさせる。このポイントを最後に帰路につく。同時に雨。ジャストタイミングだった。


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