風船の内部気圧  (PDF版176KB)

湘南台高校・山本明利

 5月の柏陽例会で、時間切れのため高杉さんが出しそこねた「連結風船の原理について」と題する幻の発表ネタがありました。「大きいシャボン玉と小さいシャボン玉を管で連結すると、必ず大きい方が膨らみ、小さい方がしぼんで終局する。」というよく知られた現象を、よりダイナミックにゴム風船で演示する際の説明のしかたについての議論でした。

 この話題は、その後YPCメーリングリストで討論されていましたが、結論からいうと風船での実験は必ずしもシャボン玉と同じ結果になりません。それは「ゴム風船の表面張力がシャボン玉のように一定ではないから」という理由によります。

 この議論に関連して、ゴム風船の半径と内部気圧 の関係を測定してみましたのでご報告します。測定 は自作の「水マノメータ」によりました。そのしくみは右図のとおりです。風船の内外の圧力差を、水管の水位差で読み取ります。1cmが約1hPaでわかりやすく、かなり鋭敏です。

 測定の結果を下のグラフに示します。風船内外の気圧差は、膨らませはじめの時大きなピークを迎えますが、その後半径が大きくなるにつれ低下していき、ゴムの弾性限界に近づくにつれ、再び急速に増大します。

 圧力差と半径から計算によって求めた表面張力は、膨らませはじめで0からジャンプして一定値に達してしばらく保持されます、弾性限界に近づくと急激に増大します。これはメーリングリストでの右近さんの予想の通りでした。

 その結果、例えば中ぐらいに膨らませた風船と、限界まで膨らませた風船を連結すれば、シャボン玉と逆の現象(大きい方がしぼみ、小さい方が膨らんで、結局同じぐらいの大きさになる)も起こると予想されます。

99/07/09 YPCニュースNo.136掲載 (PDF版176KB)

追記:本件に関しては、以下の先行研究があることが分かりました。この現象の理論的背景についても触れられています。また、1982年3月の電気通信大学の入学試験問題の1テーマとして、この現象が取り上げられていることも分かりました。参考のため書き添えます。
1)安達健、松田和久,「ゴム風船の力学実験」,第35回日本物理学会秋の分科会講演予稿集第四分冊4a−D−4(1980/10)
2)安達健、松田和久,「ゴム風船の力学実験」,物理教育Vol.29(No.1)pp.26-27(1981)

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