当世ヨーヨー事情   (PDF版328KB

湘南台高校・山本明利

 若者や子供達の間でヨーヨーが流行している。人気商品は品薄でプレミアム付きで販売されており、ひところの「たまごっち状態」である。最近の日本でのブームの火付け役は小学館の少年雑誌「コロコロコミック」らしい。中でも主流の「ハイパーヨーヨー」シリーズは米国ダンカン社およびヨメガ社のライセンス販売でバンダイが発売元である。たまごっちといいヨーヨーといい、市場操作のテクニックはさすがである。そして、このブームに便乗した類似品の流通も飽くことなくくり返され、闇市場も含めて巨大なマーケットが形成されているようだ。

 ところで当節のヨーヨーはただ回転してもどってくるだけでなく、糸が伸び切ったときに空回りする「スリープ」という機能をもたせてあり、その時間を利用して「トリック」と呼ばれるアクロバティックなプレイを楽しむように進化している。この「スリープ」機能をもたせるため、各製品とも軸まわりに工夫がこらしてある。軸は文字どおりのヨーヨーのかなめである。米ダンカン社が開発したスタンダードなスリップストリング方式(糸をループにして軸にかけ、より合わせてあるもの)に加えて、摩擦を減らすためにベアリングを施したもの、高速回転時に遠心力で軸受けがはずれて空回りする遠心クラッチ機構を備えたものなど多様である。

 子供達、若者達の旬の話題についていくための理論武装として、現在市場に出回っている主なヨーヨー実際に入手し、その構造などを比較してみた。まず、軸まわりの構造は以下のように分類できる。


スリップストリング式(固定軸)

金属製固定軸 ハイパーホイールズ(ダンカン・バンダイ)など
ナイロンコーティング固定軸 ハイパーミレニアム(ダンカン・バンダイ)など

遠心クラッチ式

遠心クラッチ(てこ式) ハイパーブレイン(ヨメガ・バンダイ)など
遠心クラッチ(直線式2個) SPACE Yo-Yo!!!(DELITONE)など
遠心クラッチ(直線式4個) DYNA YO(TOY TECH)など
遠心クラッチ(挟み込み式) スクリューボール(トミー)

ベアリング式

ナイロンベアリング ファイヤーボール(ヨメガ・バンダイ)など
木製ベアリング ハイパーループ(プロヨー・バンダイ)など
金属ボールベアリング ステルスレイダー(ヨメガ・バンダイ)など


 このほかのパラメータとしては軸比とストリングギャップがあげられる。軸比はヨーヨーの本体円盤と軸の太さの比で、軸が太いほどスピード感が出る。逆に軸が細ければ回転の持続性が高まる。市販の各種ヨーヨーを調べてみると軸比は下記のような傾向がある。スポーツヨーヨーではスピード感を重視して軸を太くしていることがわかる。金属ボールベアリングの製品はスリープタイムをできるだけ長時間とることがコンセプトなので、軸を細くして強い回転を得るように設計されているようだ。 ストリングギャップは糸を巻く隙間の幅で、市販のヨーヨーでは2.8〜3.5mmのものが多い。

クラッチ式・ナイロンベアリング式 約6:1
金属ボールベアリング式 約8:1
木製ベアリング式 約3:1
民芸ヨーヨー(従来型) 約10:1


 「トリック」と呼ばれるヨーヨーの技は、スリープ(空回り)時間を利用してあやとりのようなテクニックを見せる「ストリングプレイ」と、スリープまたは往復の間にヨーヨー本体を振り回すダイナミックな「ルーピングプレイ」に大別される。ギャップの広いものは前者、狭いものは後者に向いているとされる。 

 ヨーヨーの運動を制御するためにプレイヤーが操作できるのは初速度(初スピン)と糸の張力だけである。特に投げ出しの初期条件は重要で、正確に投げないとジャイロ効果のためにあとの制御が難しくなる。スリープとリターンを切り替えるのは張力の制御で行なう。糸をちょっとたるませることで、それまでスリップしていた糸を軸部の「スター」と呼ばれるギザギザに絡ませ、巻き戻させるのである。遠心クラッチを装備したものは回転数が落ちてくると自動的にリターンするので初心者向きとされる。

 バンダイはトリックに階級を設け、各地で認定会を開くなどしてブームを盛り上げている。米国では以前からヨーヨートリックを見せることを生業とするプロスピナーと呼ばれる一種の大道芸人がいるが、わが国でもそこまでブームが拡大するか注目される。新聞報道などによれば「テレビゲームに比べれば社交的で健康的」と親も好意的であるとのことで、今後しばらくは街角でヨーヨーを振り回す子供達の姿が日常の光景となることだろう。

【参考文献】

ハイパーヨーヨーコレクション(小学館) ハイパーヨーヨーシリーズの製品紹介
ハイパーヨーヨーメンテナンス(小学館) チューンアップテクニック紹介
ハイパーヨーヨーテクニックス(小学館) トリックの攻略本

YPC(横浜物理サークル)ニュースNo.121(98/04/11)に掲載】 (PDF版328KB


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