2009年2月14日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

 1月23日、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」を搭載したH2Aロケット15号機が鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。
 このロケットにはいぶき以外に6基の小型公募衛星も搭載されていました。
 この中で特に興味深いのは、東京都立産業技術高専チームの「航空高専衛星KKS−1」と東大阪宇宙開発協同組合の「SOHLA−1(愛称まいど1号)」です。
 KKS−1は、15歳から21歳の若いメンバーにより製作された衛星、SOHLA−1は、大阪の中小企業の技術力を結集して人工衛星を打ち上げようということで製作された衛星です。

 特殊な研究者だけが関与していた宇宙開発が、アイデアと技術の力で一般の人々でも参加が可能になってきたという大きな意味をもつ打ち上げだったように思います。
 「夢を打ち上げるんやない。夢で打ち上げるんや」(東大阪宇宙開発協同組合)、熱い思いが伝わってきます。

 一方、2月11日未明、シベリア(ロシア)の上空約800キロ・メートルで、ロシアと米国の2基の通信衛星が衝突し、多数の破片が宇宙空間に散らばった、というニュースが伝えられました。
 地球の周りにはすでに多くの衛星があり、それらが順次宇宙のごみとなっていきます。ごみとの衝突でさらに多くのごみを生むこともありえます。
 これからの衛星は、最後の後始末まで考えて打ち上げる必要がありますね。


 スターリングエンジン (伊藤 昇さん  
 伊藤さんの勤務する津島高校の自然科学部の生徒達が製作したスターリングエンジンを紹介してくれました。
 右の写真はその力作の数々です。
 機械リンク式エンジン、フリーピストン型エンジン、ジャンピングローラーカー等等。
 身近な材料で、試行錯誤を繰り返して完成させたものばかりです。
 その内の一つ(ジャンピングローラーカー)を動かしてしてもらいました。

 フリーピストン型エンジン

 機械リンク式エンジン
 
 缶の内部にはスチールウールとばねが入れてあり、下部にはゴム風船がつけてあります。
 缶の上部(高温部)をバーナーで加熱すると、風船部分が膨らんできます。
 十分加熱して、手を離して缶を落下させると、缶はゴム風船がクッションになりながらピョンピョン上下振動をします。本体にダンボールを利用したラチェットが作ってあり、これで本体が小刻みに前進します。
 缶が冷えると止まってしまいますが、うまく(?)加熱し続けると動き続けます。
 着地によって、中のスチールウールは 缶の低温部に移動するのでガスは高温部に流れ、加熱される。  加熱されたガスが膨張し、風船が膨らみ、缶が飛び上がる。
 空中でスチールウールが高温部に移動するのでガスは低温部に流れ込む。  冷却された結果、ガスは収縮し、風船がへこむ。着地によって@に戻る。

 熱音響 (伊藤 昇さん  
 試験管にスチールウールの塊をいれ、加熱部にアルミ箔を、管口付近に濡れたティッシュを巻きつけます。
 写真のようにアルミ箔部分を加熱すると、やがてピーと管から音が出ます。
 管内の空気が固有振動をしだすのです。
(釜鳴りと同じ原理です)
 うまく鳴らすには、スチールウールの詰め具合を試行錯誤する必要があるようです。これと紙コップで熱音響エンジンもつくりました。

 スターリングクーラー (伊藤 昇さん  
 スターリングエンジンを、モーターなどで強制動作させると、熱を吸収するクーラーの働きをします。
 本当に温度が下がるか、放射温度計で測ってみました。
 確かにモーターでエンジンがうまく動作すると、温度が下がっていきます。
 熱の学習に大いに役立ちますね。

 高校で原子物理学を! (伊藤 昇さん  
  現在、「物理T」の学習では、指導要領にある項目のうちのいずれかを学習すればよいことになっています。
 (3)物質と原子、(4)原子と原子核
 右の資料は現在私の勤務校で使っている、啓林館「高等学校物理II改訂版」の目次です。原子物理学は大学入試ではほとんど出題されないため、おそらく多くの学校では(3)物質と原子(熱の分野)を授業で行い、(4)原子と原子核は省略されているのではないでしょうか。
 1960年代には高校で1930年頃のことまで習っていたのに、21世紀に入って10年近くなる今、19世紀の物理の学習で終わってしまって良いのでしょうか?
 受験のために時間がなくても、時間を何とか作り出し、内容を精選して豊かに教えたいものだと思います。

 伊藤さんの指摘のとおり、指導要領の改訂(改悪?)と大学入試により、日本の若者の多くは原子の世界についての学びをほとんどせぬまま高校を卒業していきます。21世紀の日本社会に担い手がこれでいいのでしょうか。

 伊藤さんは授業で実践している原子・原子核分野の5枚のプリントを示してくれました。各学校の実情に合わせて私達も工夫していく必要を強く感じました。
 

 ラジオメーター (林さん  
 ラジオメーターです。
 上側のガラス部分をアルコールで濡らしてやると、気化熱で温度が下がり、中の羽が回り始めます。下側を手で暖めると、下の羽は上と反対方向に回ります。
 
 これは、ガラス部の温度が低くなると、羽の黒い面が赤外線を多く出し、白い面より温度が下がり、結果として黒い面が気体分子から受ける運動量が、白い面のそれより小さくなるため回りだします。
 ガラス部が暖まると、黒い面が赤外線を多く吸収し温度が上がり、先と逆に回るということになります。
 
 色による放熱の違いを確かめてみました。
 白と黒に塗った同じ材質の缶を用意します。
 ドライヤーで暖めて50度にします。温度は放射温度計で測ります。
 暖めた缶を氷で冷やしたなべの中にすばやく入れます。
 (なべの中には断熱用の紙シートが敷いてあります)

 タイマーではかり1分後、なべの中の缶の温度を測ります。
 白い缶も同様にします。

    なべに入れて1分後の温度を測ります。

    白い缶も同様にします。
 黒い缶は1分後に20.9度。
 白い缶は1分後に23.3度。 
 黒い缶が早く冷えるのは、多く赤外線を放射するからだということになります。
 暖まりやすいものは冷えやすい・・・・。
 先のラジオメーターの説明を裏付ける実験でした。 
  

 おもちゃ美術館 (佐野さん  
 東京おもちゃ美術館に行ってきました。
 面白いおもちゃがたくさんあったそうです。
 いくつかお土産を紹介してくれました。
 
 1つめは2段こま。(正式名称は不明?)
 上のこまを回すと、下のこまも回りだします。
 下のこまは上のこまと同じ向きに回るでしょうか、それとも反対向き?
 物理的に明らかだそうですが・・・・・。
 
 次は、いくつかの木球のセットから正四面体を作る立体パズル。
 元は小さいものでしたが、大きな木球で自作しました。
 残念ながら短時間で解は出せませんでした。結構難しい・・・
<参考>東京おもちゃ美術館:http://www.goodtoy.org/ttm/about.html

 卵はどうなる? (林さん  
 浮き上がる?沈み込む?(いきいき物理わくわく実験2)の卵版です。
 塩水の中で浮いている卵を、容器ごと落下させてやります。容器が床に衝突したとき、卵はどうなるでしょう。
   卵は浮く?
   卵は沈む?
   卵は動かない?

 塩水は底のほうが濃いように濃度勾配をつけておけば、液中に静止します。
 さてどうなるでしょう。
 一瞬の現象で肉眼でははっきりしませんが、高速度カメラで撮ると動きがはっきりわかります。(最近、私達でも手に入れることのできる秒間1200コマのビデオ撮影ができるカメラが売り出されています。) 
 以下のコマ送り写真を見てください。
床に衝突直前
床に衝突!
容器がバウンドし始めました。
卵も容器と同じ動きです。
容器が徐々に上に上がります。
卵も容器と同じ動きです。

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