2012年9月29日(土)の例会の記録の第3ページです


 簡単糸車 (川田さん  
  大型糸車が壊れてしまったので、100円ショップの品を使って手作りしました。
 簡単にできますので、作ってみてください。

 巻きつけたテープを引く角度によって、糸車の動きが異なります。
 水平方向に引くと、回転して引いた方向に動きます。
 大きな角度で引くと、反対方向に転がります。
 ある特定の角度で引くと回転が起こらず、引いた方向に動き出します。

 この角度がいくらかを求めるには、理論的に考える必要がありますね。
 
 

 モーメントの問題 (川田さん  

 棒を水平に保ちつつ、バネの先端を動かしたい。先端をどう動かせばよいでしょうか。 図の@(円)、A(直線)、B(円と直線の中間の線)のどれが正しいでしょう。
 
 

 棒がバネから受ける力の鉛直方向成分が一定であればいいのでだから、答えはAと思ってしまいますが、バネから受ける力は、その全長ではなく、伸びに比例するのだから、Aではありません。

 角度がθのとき、弾性力の鉛直成分が一定として計算すると(右図参照)
    

 となります。
 グラフで書くと
  
 簡単そうな問題の答えの中に、面白い曲線が潜んでいますね。
 
 
 右の写真のような、黒板での演示実験用の小道具があると便利です。


 ボルトにかぶせるアルミの筒は、弓道部がある学校なら、使用済み廃棄処分の古い矢をもらって切ることでOKです。
 モーメントの実験や、振り子の実験にもってこいです。
  スムースに回ります。
 使用例です。
 輪軸と棒の融合問題。
 左のおもりを2個にすると、どんな角度で止まりますか。


 便利な小道具をたくさん持っていると、黒板が輝いてきますね。
 

 超簡単霧箱 (成相さん  
 東京学芸大学での研修で学んだ超簡単霧箱を紹介してくれました。
 発案者は東京学芸大学大学院 教育学研究科 大学院生の窪田美紀さんです。

 プラコップを図のように2つ逆さにつけ、間に薄いアルミ板をはさみます。
 上側のコップに60度ほどのお湯を入れ、下側のコップの底に、アルコールを浸み込ませたフェルトをつけます。

 -20度程度の冷媒の上に(写真はアルミ容器の中に冷媒を入れてあります)放射性物質(マントル:トリウムが含まれる)を置き、コップをかぶせてしばらくすると・・・。

 研修のときはしっかりアルファ線が見えたそうです。残念ながら、ここでは、冷媒の温度が上がってしまったせいでうまく見えませんでした。
  

 冷媒(下写真)は、お菓子屋さんなどで使われている保冷剤。
 写真のものは-18度まで下がり、比較的長持ちするそうです。
     過冷却層が下から数センチの厚さにできるので、そこでα線の軌跡が見えます。
 株式会社ラックストン で購入できます。
  
  

 静電気メーターをイオン学習に (田中さん  

 同僚の化学の先生から、イオンの学習で使える実験器具はないだろうかと相談を受けました。
 手持ち(田中さん設計製作)の静電気メーターが使えることに気がつきました。
 検出器の部分(アルミ缶の部分)に、紙袋入りのストローを置いておきます。ストローを抜くと、紙のほうは正に、ストローは負に帯電し、その絶対値は等しくなります。
  白は帯電量0を表します。   ストローを抜くと、残った紙袋が正に帯電していることを示しています。
 
 静電気メーターの感度を調節して、ストロー1本分の帯電でLEDが1つ点灯するようにします。
 2本ストローを抜くと、帯電量が2倍になること、3本なら3倍になることがわかります。
 
 ストローを電子と考え、抜かれた紙袋は正のイオンになると考えるのです。
 ストローを戻すと(電子を受け取ると)帯電量は0に戻ります。 中性の原子になったと考えます。
  検出器部分に2本のストローを入れておきます。
  白色LEDは帯電量0を示しています。
  1本抜いて、他方の検出器に入れると、ストローが入ったほうは
  正に帯電します。絶対値は等しくなります。
  2本抜いて他方の検出器に入れると、ともに2倍の帯電量になります。
  当然、絶対値は等しいこともわかります。
 
 2本で同様に行うことで、2価のイオンの電荷について理解できます。(3本使えば3価のイオンについて学べます)
 電子を出したり受け取ったりして、中性の原子が帯電してどんなイオンになるかを、LEDの目盛りで見て理解できます。

 細長いストローを電子と考えるには、思考の訓練が必要かもしれませんが・・・・。
 

 共鳴音さの振動数 (田中さん  
 共鳴音さの振動数はぴたりと同じでしょうか。

 2つ同時に鳴らすと、5、6秒の周期のうなりが聞こえます。
 0.1〜0.2Hzぐらいの差があることがわかります。

 手作りの周波数カウンタで、測定時間を長くしてカウントすると、確かに0.1〜0.2Hzぐらいの差があることが確認できます。
 完全に一致しなくても、共振曲線のω0の近くの振動数であれば、強制振動が引き起こされ、共振現象が起こるというわけですね。



 10秒間カウントすることで、小数点以下の振動数の値も計測できます。

  正確な測定器が手元にあると、いろいろなことをはっきりさせることができますね。
 それにしても、全部手作りの田中さん。すごいですね。

 CERNへの旅 (林さん  

 この夏にヨーロッパに研修旅行に行きました。イタリア、スイス、ドイツを周りました。
 
 イタリアはグランサッソ国立研究所に行きました。
 ニュートリノが光より速いことを示した実験について話題になりましたが、時刻を精密に測る全地球測位システム(GPS)に取り付けた光ファイバーケーブルに接続不良の部分があり、計時が狂ったというのが事の原因で、そのケーブルが写真のケーブルだそうです。
 修正後の再実験では光速との差は見いだせなかったようです。

 CERNで作ったニュートリノビームをグランサッソで検出します。   ケーブルの接続不良がが誤差の原因でした。
  
 スイスではCERNに行きました。
 右は、CERN(欧州原子核研究機構)の素粒子検出器。
 7月にはヒッグス粒子検出の報が出されました。

 ベルン大学にもいき、大学内を見学しました。
 
 ドイツも周り、充実した旅行になりました。

 注:当然ですが、グランサッソ国立研究所やCERNなどの内部へは案内者が必要です。
 

 プロジェクタの偏光 (林さん  
  プロジェクターの光を定規を当てると、定規の向きによってスクリーンに映る影や、定規の色づきが異なります。

 不思議ですね。                                       
  定規が青っぽくなります。影は緑。   定規が緑っぽくみえます。影は青い。
  2枚の偏光板をつないだものです。偏光軸が互いに直交しています。
 これで外を見ても、境ははっきりしませんが、この板にプロジェクターの光を当てると、見事に色違いになります。
 
 プロジェクターの光は色によって偏光しているということですが、どうしてそうなるのでしょうね。
    2枚の偏光板をつないでいます。境は波型。   偏光軸によって反射光の色が違っています。
  

 東日本大震災を経験して―理科教室― (伊藤さん  
 
 副題に ―高校地学教諭の目線から当時を振り返る― とあります。
 伊藤さんの親類が、岩手県大船渡で教員をしており、何と初任の年に、あの大地震を体験しました。若い教員の目から見た、地震とその後の出来事の貴重な記録です。理科教室2012年10月号の記事です。ぜひ購入して読んでいただきたいです。 

 以下は本文の一部です。

 私は2010年4月、初任校・岩手県立大船渡高等学校に赴任した。2011年東北地方太平洋沖地震が発生したのは、その翌年3月のことである。私は初任の年の締め括りとして、東日本大震災を経験したことになる。

 さて、震災当日、本校は午前授業日だった。午後、大部分の生徒は部活動に励んでおり、また私は職員室の自分の机で、年度末の仕事をしていた。

 3月11日(金)午後
 14時46分過ぎ、私は途方もなく大きな初期微動に度肝を抜かれた。「これはちょっと、大変なことが起こるのでは」と思って間もなく、10秒ほど後だっただろうか、今度は激しい横揺れに襲われた。振れ幅は非常に大きく、長い間続いた。私はその間、左手で机上の本棚を、右手で隣にあったコピー機を、必死に押さえていた。それ以外にできることはなかった。・・・・・
   

 放射線副読本 (井階さん  
 福島の原子力発電事故後、放射線に関する正しい知識をひろめるということで、副読本などが学校に配布されています。

 福島の避難されている方々からは、「反省がない」という批判の声も出ているようです。

 岩波科学の10月号に、こういう事態についての特集が載っています。
 授業で、原子力や放射線について、どう教えていくか、ということに無頓着であってはいけないと思います。
 


 電磁波過敏症 (井階さん  

 いきいき物理わくわく実験の読者の方から手紙をいただきました。
 その方は、電磁波に過敏なため、身の回りにある微弱な電磁波を浴びただけでも、頭痛や吐き気を感じてしまうそうです。
 電磁波過敏症と名づけられているようです。携帯電波の基地局や、放送局の近くにいくと、急激な体調不良を起こすようです。

 いきいき物理わくわく実験3に電波検出器の記事が載っていますが、ガイガーカウンタのような高性能の電波検出器はつくれないだろうか、という相談です。

 無線LAN、携帯電話、衛星放送等、現代は電磁波が至るところで利用されています。その電磁波で苦しんでいる方がおられるという事実に、まずは理解を深める必要がありそうです。
 
 残念ながら、今の私たちの技量では、微弱電波を正確に定量測定する精度の高い装置は難しいと思います。周波数による影響度の違いもわかっていません。 
 ご要望にこたえるだけの力がないことは申し訳なく残念です。しかし、普段意識しない電磁波の影響を身をもって教えていただいたことに感謝です。これからの教育に役立てていけるのではないかと思います。
 

   [前ページへ]