2014年7月5日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

   

 ワンセグチューナーでラジオ受信 (臼井さん)  

 通常、ラジオを聞くためには、電波を受信するチューナーとAM、FM波用にハードウェアがそれぞれ必要でした。 しかし、ワンセグチューナーを使うと50〜1700MHzという周波数領域をカバーしているので、TVだけでなくAM、FMラジオも聴くことができます。

 ワンセグチューナーは受信したアナログ信号をA/D変換し、復調させ、PCに送ります。PCではソフトウェアでチューニングや音声を制御します。

 
 チューナーは1500円ほどと非常にお手軽です。   
 チューナーは1500円ほどと非常にお手軽です


 重力加速度測定器(臼井さん)  

 科教協の「お楽しみ広場」で伊藤昇さんが紹介した「重力加速度簡易測定器」は落下させる距離を0.5mとし、ビースピで測った初速度と落ちた地点での速度から重力加速度を簡単な計算で出せるように工夫されており、魅力的だったので、真似て作ってみました。

 しかし、なかなか昇さんの測定値のように正確な値がでません。

 実験器具を作る際、細かな工夫が多々あるので、昇さんに直接聞いてみたところ、ホームセンター等ではなかなか手に入らない鉄球の直径よりわずかに大きい径にパイプを東急ハンズで購入し、使用していることが分かりました。
 臼井さんが難しい顔をしている理由は...
 臼井さんは、せっかくなので購入した鉄球やパイプや手持ちのものも使って、重力加速度に近い値を出すために、適当なパイプと鉄球径の条件を調べてみました。
 用意したのは、直径15mm、20mm、25mmの鉄球と、直径18mm、26mmのパイプです。

 結果は、パイプの径が26mmで鉄球が15mmのときと、パイプの径が26mmで鉄球の径が20mmのときに、加速度は9.6m/s2程度となり、パイプの径が18mmで鉄球の径が15mm、またはパイプの径が26mmで鉄球の径が25mmのときは、加速度が9.2m/s2以下となりました。  

 空気抵抗に加えて衝突や摩擦、接触による摩擦などの影響でしょうか、鉄球の径とパイプの径が近いときは期待する自由落下より抵抗力の影響が大きく重力加速度からのずれが大きくなってしまいました。  
 距離を計算しやすい値にし、実験値からすぐに公式が確認できます。


 プリンターを分解 (臼井さん

 近頃、発売当初では考えられないほど価格が下がってきたプリンターですが、ちょうど壊れてしまったので、分解してみました。

 すると、偏光板のようなものや回折格子のようなものがありました。

 早速、回折格子らしきものにレーザー光を入射し、干渉縞の明点間隔から格子定数を計算しました。

 結果は、格子定数が約210μmとなりました。
     
 風船を膨らませた状態で、質量を求めるには...
 偏光板のようなものが見つかりました。  すぐに格子定数の測定となりました。

 これなら作れる「霧箱」 (林ヒロさん  

 市販品は何十万円もすることで、なかなか高校までの教育現場には広がって来なかった霧箱ですが、愛知物理サークルでは林ヒロさんが、長年に渡って改良を重ね、多少の労力と時間を使えば、授業で使えるものとなりました。

 今回は、さらなる改良を加えられ、物さえ作れば、手軽に使えるようになりました。

  作り方です。塩ビシートを丸め直径15p程の円筒状にします。そこにベルベット紙(大塚屋で購入)をかぶせ底を作り、輪ゴム等で固定します。
  次にストレッチフィルムをベルベット布を覆うように被せ、液体が漏れないようにし、輪ゴム等で固定します。
 これなら誰でも(?)作れそうです。
 最後に、黒画用紙を容器の高さよりわずかに長さが短くなるように3枚切っておきます

 発泡スチロールの箱にドライアイスの板を入れ、冷却装置を作ります。そして、ドライアイスの上に銅板やアルミ板など(熱伝導の良い板)を置き、霧箱を載せます。  霧箱に燃料用アルコール(取扱注意!高価だが、エタノールでも可)を底から1cmほど入れ、切った黒画用紙をたっぷり浸けます。さらに、浸み込んだ画用紙を筒の内側に3重になるようにはりつけ、ポリエチレンのラップを被せます。

 これで15分ほど待てば、準備完了です。

 部屋を暗くし、強力なLEDライトを斜め上方から当てながら、観察すると宇宙線や自然放射線が観察できます。  
 写真では高照度のLEDを利用していますが、LEDライトでもOK。

 ドップラー効果で光速測定 (林ヒロさん  

 林さんが長年取り組んできた卓上版マイケルソンの干渉計ですが、なんとドップラー効果を使って、光速度を測定する装置に発展しました。

  装置は、鏡の一方は固定鏡、もう一方は可動式になっており、パルスモーターで等速に動きます。
 そして、反射光を入射方向にのみ反射できるように、鏡はコーナーキューブプリズム板を利用します。
 検出はオシロに光センサーとして太陽電池をアンプで増幅し、オシロにつないで波形を調べます。
 同時にスピーカーにも接続し、振動数の変化が実感できるように、音でもうなりを聞けるように工夫されています。
 持ち運びもできるほどのコンパクトな装置です。
 可動鏡で反射した光の振動数と固定鏡で反射した振動数の違いで、うなりが発生し、これをオシロで読み取り、光の速さを求めます。

 人の動きによるわずかな振動でも装置が動いてしまいノイズが発生します。このようなノイズにはマイケルソンも相当苦労したそうです。

 この実験で、水中での光の速さも計算できます。可動ミラーを水中に置くことで、振動数は変化せず、光速が変化することから、水中の光の速さと空気中の速さの比が、うなりの回数の逆比で求まるからです。

 林さんの努力の結晶が、革新的な光速度測定の方法を生みました。  
 この先も更なる発展があるのでしょうか?

 自作コイル巻き装置 (前田さん  
 テスラコイルの製作等には、費用を抑えるにはコイルを何千回も巻く必要があります。そこで、手で巻くのは効率が悪いということで、考案した装置を紹介してくれました。

 巻く速度の調節は、最高速度をスライダック(変圧器)で決め、速度を落とすときはミシンの可変抵抗を押すことで対応します。

 なお、炭素型ではなく巻き線型でないと上手くいかないようです。
 
 コイルが必要だからと、コイルを巻く装置まで作ってしまいました。

 黒板上での等加速度運動 (前田さん  
 100円ショップで見つけたゼンマイと磁石を使ったテントウムシの形をしたおもちゃは、磁石の磁力で黒板上で運動させることができます。

 このテントウムシは運動は黒板上で生徒の目を引き付けるだけでなく、ゆっくりした速さで加速度運動するため、加速度を言葉で説明しても理解が難しい生徒にとっては格好の教材といえます。

  裏にはゼンマイ式のローラーに加えて磁石が付いています。
 この玩具の使い方を見出すべく、例会では様々な動かし方の提案がありました。上向きに動かすと重力で減速し止まる様子が観察でき、水平方向に動かすと重力で水平投射の軌道とは言えないもののいくらか下方向に曲がりました。
 また、斜め上方に動かすと、斜方投射といくらか似通った軌道になりました。

  表はこんな感じです。

 抵抗力の式の検証 (川田さん  

 以前、水や空気など流体の抵抗力は、雲粒など非常に小さな物体ではVに比例する(ストークスの抵抗法則)が、物体が大きい場合は、V2 に比例することを紹介した川田さん。

 今回は風船につけたおもりををビースピをセットしたアクリルパイプ中に落下させることで、合力Fと物体の終端速度Vの関係を調べました。
 このとき、風船が縮むのを防ぐため、風船は2重にしてあります。

 ヘリウム風船を使って、定量的に求めました。
 実験結果を両対数グラフにまとめたところ、グラフのようにlogVはlogFに比例し、傾きは0.48と約0.5になりました。このことは、抵抗力Fは終端速度Vの2乗に比例することを意味します。

 このことから、風船にはたらく空気抵抗は雨粒等が該当するストークスの抵抗の法則(FがVに比例)でなく、抵抗FがVの2乗に比例するというニュートンの抵抗の法則に従うことが分かりました。
 高校の教科書ではストークスの式しか記載がありませんが...

 シンプルな投げ上げ装置 (川田さん  

 石川さんの装置を参考に打ち上げ台車を作りました。コイルばねで筒を打ち上げ、大きな筒で受けるというシンプルな構造です。
 木の板に台車用のローラーを4個取り付け、コイルばねは斜めにならないように廃棄される印刷機のマスターの芯をガイドにするなどほとんど費用がかかりませんでした。
 石川さんの装置を参考に
 早速、実験してみましたが成功率はそれほど高くありません。

 さらに静止時でも筒が真上に上がりません。良く見ると、コイルばねが斜めになった状態で筒を打ち上げており、板も反っています。

 動作原理が単純で大きさもあり、教育効果は抜群に思えますが、板を平らにし、ガイドとばねの隙間を減らせば、さらに完成度の高い装置になりそうですね。
 シンプルな構造に魅力を感じます。

     [次ページヘ]