2016年5月14日(土)明和高校での例会の記録です。


 ICTを使った相対速度のリアルタイム実験 (前田さん)  

 相対速度の指導では、等速で動いている物体から見た速度を理解するのに躓く生徒もいます。

 物体の動きと動いている物体から見た速度の両方をPCモニターに同時表示できるように、2台のWebカメラで2つの物体の動きと、動く物体から見たもう一方の物体の動きをモニターに映し、理解を深めようという試みです。  
 この映像だけでは不十分ではないかと考え…
 いい工夫ではありますが、2つの映像を同時に観察することに関しては少し難しさも感じました。

 実物の動きを見ずに運動を把握するというのなら、映像で十分とも言えます。
 1つは直接見て、電車のカメラの映像を背景にする方法など、比較検討の余地はありそうに思います。
 2台のWebカメラを併用しました。


 物理シュミレーション (前田さん)  

 1つ目は、Algodooという二次元の力学のシミュレーションソフトです。現在はドネーションウェア(寄付歓迎のフリーウェア)だそうです。

 力学の実験に強く、準備されたシミュレーションも多数あります。

 前田さんは、授業で物理概念を掴ませるために使ってみようと考えました。そこで、相対速度の導入にその理解を測る右の図のような「どれが先にぶつかるか?」という問題を作りました。
 相対速度を教える前の生徒の理解を見ます。
 結果は、シミュレーションで見せるという方法を取りました。

 2つ目は、コロラド大学の電磁気分野や原子分野のシミュレーションです。

 アメリカでは大学のアクティヴラーニングで実際の実験が困難なこれらの分野では、議論の後に実験の代用としてシミュレーションを使う事を模索しているグループが多く、これらのソフト開発が進んでいるものと思われます。

 シミュレーションですから理屈通り、結果はきれいに出ます。
 例会で紹介のあったのは、電場の向きと電場に荷電粒子を放出した場合の軌跡のシミュレーション、そして光電効果のシミュレーションでした。

 光電効果のシミュレーションでは、光の色(波長)や光の強さ、金属の変更などが変更可能で、その時の電子の動きを模式的に表示してくれます。

 演習問題後の演習の答えと物理現象の関連付けには効果を発揮しそうです。

 実物を見せることを大切にしてきたサークルの参加者が多いわけですが、実際に行うことが困難な実験もあります。誤概念の修正にシミュレーションを使うことを考慮すべきときかもしれません。
 光電効果のシミュレーションです。


 運動アナライザー  (前田さん  

 植田さんの活動に触発され、物理の授業で使えるソフトウェアを探していたところ、植田さんの試みに似たソフトウェアがすでに東レ理科教育賞で文部科学大臣賞を受賞していたことが分かりました。
 開発者は、高校教員の末谷健志さん。

 運動アナライザーと名付けられたこのソフトは、ストロボ撮影のような連続写真やv−t、s−tグラフを表示できます。

 
 生徒が板を持っているのは背景を黒くするためです。
 動く物体の認識は色で行っているため、前田さんは6色のスーパーボールを購入し、背景や明るさで認識しやすさを使い分けています。

 同じようなソフトウェアの開発を目論んでいた植田さんにはショックですが、センサー類の購入の必要のないこの様な有益なソフトが無料で提供してもらえるのは助かりますね!    
 6色のスーパーボールを使っています。


 大井川鉄道の汽笛と和音 (臼井さん  

 旅行で大井川鉄道を訪れた臼井さん。お土産物として、直観で汽笛ふえを手に取りました。

 これを吹いてみると、きれいな和音が聞こえます。

 早速、自作の笛を製作開始!  
 中はどうなっているのでしょうか?

 閉管の共鳴になるため、木の気柱の長さがほぼ1/4λになります。長い方が約7p,短い方が5.5p,λ=0.28mよりV=340m/sとすると1200Hz,1500Hzとなります。  

 これをフリーウェアの「FFTスペクトログラムソフト紋声」で分析しました。

 すると、確かに理論通りに2つの固有振動が確認できました。  
 窪みを吹きます。この切込みの角度が大切だそうです。
 
 100円のリコーダー2つを同時に吹き、音色を再現する臼井さん。  はっきりと基本振動に加え、倍振動も確認できました。


 透き通る蛍光物質 (臼井さん)  

 紫外線ライトを購入しました。

 蛍光ペンで紙に文字を書き、ライトで照らしてみると、
 「くっきり」が浮かび上がりました。

 次に、紙を2枚重ねにし、照らしてみます。
 前回紹介できなかった石川さんの実験が紹介されました。
 すると、紫外線が紙をも通り抜けました。

 紙にも蛍光物質が塗ってあるそうで紙全体が光を出し、透けて見えるそうです。

 紙を手に取り、紙の薄さを指摘する飯田さん。厚手の紙でやってみると、2枚目は見えませんでした。


 実験を行う際は、シャツや女性の下着等にも蛍光物質が含まれているため、人体への照射は下着が浮かび上がる可能性があり、注意が必要だそうです。
 薄めの紙がポイントです。


 吊り下げ式デジタルスケール (臼井さん)  

 40kgまで測れる吊り下げ式のデジタルスケールがなんと680円で売っていたので、精度を見てみました。

 1g単位のデジタルスケールでは324g、臼井さん購入の吊り下げ式のスケールでは320gとなりました。十分な精度がありそうです。
 質量の精密(!?)測定にキッチンスケールを使いました。
 思いっきり引っ張ると、手で引く力も計測できます。

 残念ながら臼井さん購入のショップでは売り切れだそうです。
 手での簡易測定では4gの誤差でした。


 車の力を測る (植田さん)  

 物理の学習に有用なアプリ開発を目指している植田さん。
 現在、製作を思案中という速度と時間のグラフをリアルタイム表示するアプリを開発すべきか、既存のソフトウェアを使った「車の授業展開例」を紹介してくれました。  車やエレベーターのv−tグラフを表示できます。

 これを授業で使えないかという提案でした。
 身近な運動がグラフ表示できるのは魅力的です。
 植田さんは自身で撮影した車の走行中の映像や電車の映像を見せてくれました。

 実際に車等に乗った状態では加速の感覚がつめますが、視覚情報のみでは加速度感はそれほど感じません。そのため、加速度の大きな状態の方が加速の感覚はつかみやすいです。
 逆に、グラフと映像を同時に見ることが困難なため、車の動きとグラフの関係をつかむには、ゆっくりした加速運動が適しています。
 この相反する課題を解決すにはスローモーション映像や、加速度を大きくしなくても加速していることが分かるよう景色が変わらず、等間隔な電柱等の目印を置くなど、工夫が必要に思えました。

 また、車がカーブする場面もあったため、単純な直線の運動の方が、入り口としては生徒に分かりやすいとの声もありました。
 加速度を求めるならより等加速運動に近いデータが欲しいところです。
 植田さんは授業例として、速度と時間のグラフから力を求め、電車や車の質量も使い、F=maの式から力を求めるような展開を紹介してくれました。

 
 これには、力を求めた後にそれが正しいのか確かめるすべがないため、力を求める必要性をそれほど感じないという意見も出ていました。
 電柱が等間隔の電車の方が運動の状態が捉えやすそうでしたので、生徒への課題として利用することは面白いかもしれません。
 等加速運動として扱うには、電車の方が使いやすそうです。


 偏光板で光子の裁判 (林さん)  

   
 林さんは、ご自身を含め、川田、杉本、中村、藤田さんの連名で日本物理学会で発表した光像増幅装置と偏光板を用いて、ダブルスリットを使ったヤングの光の干渉実験をシングルフォトンで行うという実験を紹介してくれました。

 装置の全景です。
     光像増幅装置「Image Intensifier」を含む装置の概要図です。
 光源とImage Intensifierの間に右の図のように直交するようにした2つの偏光板A、B、その後にダブルスリットをつけ、スリットを抜けた光をカメラで捕えます。

 この装置では光子1つ1つの光をモニターに映すことができ、時間積分した様子を表示することができ、光子1つ1つが干渉縞を作る様子を見ることができます。

 この状態ではランダムに光子が現れ、干渉縞は生じませんでした。
 次に、偏光板A、Bから45°傾けた偏光板Cをカメラの前に入れると、光子1つ1つが干渉縞が作っていく様子が見事に観察できました。

 量子力学の世界の入り口として、ぜひ高校生にも見せたい実験です。
 物理サークル通信の画像をお借りしました。
 光子が干渉縞を作る様子が見える感動的な映像です。  干渉縞ができる理屈を説明する川田さん。


 水中の圧力 (飯田さん  

 「水中に水で満たしたプラカップが右の写真の図のようになっているとき、カップ上部の圧力Pが大気圧より高いか低いか、それとも同じか?」

 参加者が挙手で自分の意見を表現します。

 確かめるには、そこに穴を開け、泡(空気)が入るかどうかで簡単に判断できます。
 明和高校のSSH部の生徒を前に饒舌な飯田さん
 この条件では、空気が入っていきました。
 泡が入るかどうかテープをはずせば簡単に分かります。
 続いて、飯田さんが長らく検討を続けてきた、サイフォン内の圧力についてです。
 
 泡が入るかどうかテープをはずせば簡単に分かります。
 この場合、ベルヌーイの法則を使った理論的な計算では、ホース内の入り口より高さの低い場所では泡が入っていきます。
 ただ、これは完全流体という粘性がない理想的な流体に成り立つ関係で、実際の流体(実在流体)では、管との摩擦や出入口でのエネルギー損失が考えられるため、入り口より少し下でも、水が溢れ出てくる範囲があるそうです。  
 この場所では、泡が張っていっていますが、条件によると...

 8の字クリップモーター (飯田さん  

 名古屋大学の中村教授が思い付いたクリップモーターのコイルを8の字にするアイデアですが、中村教授に正式な文章の依頼をした飯田さん。
 中村教授が調べたところ、なんとこのアイデアが特許申請済みだったそうで、書く気を失くされたそうです。

 とは言え、やや複雑なエナメル線を表面削りが、クリップと接触する部分のすべて削ればよくなるため、簡単にクリップモーターを作るには最適です。
 簡単な発想の転換ですが、思い付いた中村さんはさすがです。
 販売などのように利益を求める活動をしなければ、使えるそうですので、みなさん是非利用してください。
 例会でもモーターは快調に回っていました。

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