2016年12月3日(土)明和高校での例会の記録の第2ページです。


 連結ばね振り子の共振 (石川さん)  

 単独のばね振り子では固有振動数が3.7Hzとなる、金のこ刃を板バネとし、おもりをつけ、写真のようにばね振り子を連結させたとき、どのような定常波が生じるでしょうか?  ちょうど、3.7Hzの振動をあたえる(@)と、波はできません(石川さんの解釈ではλ→∞)。
 3.7Hz以上の振動をあたえたとき(A)、先端が固定端や自由端としてはたらき、定常波が生じます。
 また、3.7Hzよりゆっくりした振動をくわえる(B)と、先にいくほど振幅が小さくなり、先端は節となります。
 自由端での実験です。
 @の場合には、板バネの復元力だけで振動が起きるため、波の曲りが生じない。
 Aの場合、板バネが復元力の一部を担うため、波の曲りがゆるやかになる。
 Bの場合、波とは逆の曲がり方をして板バネの復元力を弱める。
 というように説明できるとのことです。

 さらに、式での現象の説明もプリントにまとめてありました。
 石川さんによると量子論のトンネル効果に近いのではということですが、理解にはさらなる学習が必要です。
 大きな振動数をあたえ、定常波が生じた様子です。


 プラスチック製!はく検電器 (林ひろさん)  

   アクリルパイプをティッシュでこすって、2つの検電器に近づけると、はくの開きに違いが生じました。「なぜでしょうか?」と得意げなヒロさん。

 プラスチックケースの容器でも使用できる理由は、静電気防止スプレーです。

 プラスチックは静電気を帯びやすく、はく検電器の容器としては使用できないと思われてきましたが、この静電気防止スプレーを使うことで実用できることが分かりました。

 2つの検電器に、はくの開きに違いが!理由は...
 容器は100円ショップで購入、容器上の円板はトタンを加工、真鍮パイプと真鍮板をカットし、アルミ箔は画材屋で大量に仕入れたものの残りを使用し洗濯糊で張り付けます。

 これなら自作できそうですね。

 市販の殺菌灯を使って、光電効果の実験も行えます。

 金属板を代え、トタンや鉄でもやってみました。これも自作ならではです!  
 光電効果の実験も融通が利きます。


 ガスコンロでヘルツの実験  (林さん)  

 火花放電によって電波を発生させる場合、着火ライターなどを加工し、発生装置を作る方法がポピュラーです。

 林ひろさんの提案は、発生源としてカセットコンロの点火器を使用することです。
 特別な加工は一切いらないため、手軽に実験できるのはいいですね。
 このように点火器ワニ口コードをつなぎます。
 受信機は手巻きのコイルとLEDを並列につなぎ、その両端にワニ口コードを2つずつ、接続し長さを確保しています。

 LEDの点灯で電波を検出こともできますし、LEDの代わりにオシロにつなげれば、波形の変化も観察できます。

 例会ではラジオでも電波を確かめました。
 受信機です。


 クルックス管でX線の実験  (林さん)  

 X線でレントゲンを撮る、ひろさん曰く、手軽(?)な実験の紹介です。

 高電圧をかけたクルックス管から出たX線を蛍光板で受けて、ロシア製の暗視ビジョン、高感度カメラで撮影し、モニターに透視像を映す実験です。  
 この実験、杉本さんとの連名で東レの理科教育賞も受賞されています。
 もちろん被爆しますので、手などを入れることは避けてください。

 右の写真は、5円玉を入れたときのモニターの様子です。
 教室で原理むき出しで、できることに意味がありますね。

 ちなみに、この実験は杉本さんとの共作で以前に東レの理科教育賞も受賞されています。

 実験を再現する場合は、出来る限り被爆を避けためクルックス管を鉛ガラスで囲むなどの対策を行うことに加え、クルックス管は昭和40年代までの古いものを使う事や高性能の誘導コイルを使うことなど、注意があります。詳しくは東レのページを参照してください。

☆ 参考  平成15年度 東レ理科教育賞 受賞作一覧
 5円玉の影が見えますね。


 大気圧の大きさを実感する  (岡田晴彦さん)  

 まずは、下敷きを使ったマルデブルグの半球と同じ原理の実験です。

 いろいろなアレンジがあり、愛知物理サークルでは、天井を忍者のように渡るゴム板を使った実験を杉本さんが発表されたこともありました。

 今回はもっと手軽な実験で、プラスチックの下敷きに輪ゴムをつけるだけです。

 これでも椅子が持ち上がりました。

 準備がほとんどいらないのが大きなメリットです。
 予備実験はできないものの、生徒の下敷きを使うなど演出を加えると、かなり授業受けはいいかもしれませんね。
 生徒の下敷きでやるというような演出も可能です。
 続いて容器内の水を大気圧でこぼさないようにする実験です。

 紙でやると、大気圧だけでなく表面張力による効果が大きいので、卓球のピン球で代わりに行いました。
 ともに、実験は成功しました。

 ただ、手で持つ際の容器の体積の変化による内部の圧力変化も含め、ピン球なら大気圧のみと断言するには無理があるように思われます。
 紙ではなく、この実験も面白いですね。
 ペットボトル内の活けた花も水も同様の原理でこぼれていきません。
 何も言わず、実験室に飾っておくのも面白いかもしれませんね。

 ピンホールと像 (伊藤さん)  

 三重県の先生が発表されていたという実験を紹介してくれました。

 まず、黒い円が描かれた厚紙の中央にピンで穴を開けます。

 次に、紙を点線で折り、端から5mmのところに針を刺し、針の先端が穴を開けた黒円の中心にくるようにします。

 これで準備完了です。
 伊藤さんが準備した厚紙です。
 それでは、実験です。

 紙の穴を蛍光灯の方向に向け、黒円の側から針越しに穴を覗きます。

 すると、穴の向こうには、針を直接見た場合とは上下反転した針の先端が見えました。


 なぜでしょうか?
 このように針を刺し、針の先端を2方向から観察します。
 この理由を皆で考えましたが、すぐには出て来ず。

 伊藤さんによると、上下反転した理由は、ピンホールにより、上下反転した像が、網膜に映り、それを見ているためだそうです。

 物理サークルでお馴染みの眼球モデルでの説明で皆すっきり理解できました。
 眼球モデル網膜に映る像を確認しました。


 卵の回転 〜どっちが速い?〜  (山本さん  

 「ゆで卵と生卵、割らずに見分けるには?」という問題は、TVなどでも放映され、世間でもそれなりに知られています。

 回転させるというのがその答えですが、固まったゆで卵の方が良く回ります。

 山本さんはこれを斜面で転がし、どちらが早くゴールに着くかという問題を考えました。

 実際、2つの卵を斜面の同じ高さに置き、同時に手を離すと、どちらが先に着くのか実験をやってみました。

 
 生卵とゆで卵、見分ける方法は?
 結果は、一回目、卵が斜面を横に落ちてしまうも、飯田さんがナイスキャッチ。
 二、三回目、ほとんど差がなし。

 ここで斜面を急にしました。

 再度、実験すると若干、生卵の方が早く着きました。

 ゆで卵は固まっているので、全体が回転し、生卵は殻だけ周り、白身は回らないので、慣性モーメントの差が生じ、ゆで卵が遅くなることを想定していましたが、結果はそこまで差がつきませんでした。

 白身の粘性が強いため、実際は白身も回転しているのではという分析がありました。  
 卵を割らないように、皆、集中しています。


 エイムズの部屋 (杉本さん)  


 杉本さんは『いきわく3』も掲載されている「エイムズの部屋」をダンボールなどで作ってみました。

 これは戸田さんが原稿を担当したもので、穴から光を入れ、透明なシートの絵を投影すれば、エイムズの部屋用の絵が計算しなくても描けるというアイデアが傑作で、製作もダンボールなどを使って手軽にできます。  
 無色透明シートに絵を描き、投影すると容易に歪んだ絵が描けます。
 観察する際は、直接と間接的にモニター等で見る方法を行います。
 片目で穴を覗くと遠近感がなくなり、歪んだ部屋が通常の直方体に見えます。2つの紙コップの大きさがなぜ違うのか不思議ですね。

 全員に一斉に見せるには、タブレットPC等をモニターとし使用すると簡単に提示することができます。
 全員に見せるには、タブレットPCが便利です。


 タコマ橋の崩壊と自励振動  (飯田さん)  

 先日、メーリングリストに林さんから「タコマ橋の崩壊は共振が原因ではなかったという論文が出ている」という情報が流れました。
 タコマ橋崩壊時には、はじめに垂直振動が生じ、しばらくするとそれにねじれ振動が加わりました。この論文によると、橋崩壊の原因は垂直振動による共振ではなく、ねじれ振動であり、このねじれ振動は自励振動が原因であると考えられるとのことです。

 自励振動とは、与えた力や振動数に関係なく、固有の振動数が現れるというものです。
 バイオリン、リコーダー、フルートなどの振動がが自励振動にあたります。
 例えば、バイオリンは弓で弦を擦ると、一定の力を与えているはずが、いつのまにか振動的な力に変化し、擦っている間、音が出続けます。これが自励振動の特徴です。

 チェックしてみたところ、教科書も書き直されているものがあり、対応が進んでいるようです。
 素直に納得とはいかず、論文を翻訳した飯田さん。


 誘導起電力の指導方法  (井階さん)  

 回路の中で磁束数の変化により生じるレンツの法則で説明される誘導起電力と、荷電粒子が動くことにより生じる誘導起電力は、教える側にとって指導する事が難しいところです。

 入試問題集のベータトロンの問題を解いた生徒が、電子が円周上を周るときに磁場を横切る導体がつくる起電力について、『円周上に生じる誘導起電力の大きさ=円周上の電場の強さ×円周の長さ』と記述されていることについて、「これはなぜこうなるのか。覚えなくてはいけないのか?」と質問に来ているのを見て、井階さんは誘導起電力の指導について、文献をあたり、指導方法を再考をしました。

 結果として、誘導起電力V=E+vBと捉え、電場が変化する場合は第1項が効き、荷電粒子の動きがある場合は第2項を電場E×電場が横切った距離の時間変化x(ドット)というように、2つの現象を結合させたものとして理解させる必要性を、強く感じたということです。
 大変参考になる話でした。

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