2017年9月23日(土)明和高校での例会の記録です。

   

 振動を測る精密装置の開発 (岡田さん)  
 以前に振り子の周期などを測れる装置を紹介した岡田さん。

 単振子の周期が振り幅が小さいときのみ成り立つ、近似式であることを実感させてくれる、優れた手作りの測定器でした。

 今回は名古屋EHCで製作会を行った振り子の周期、モーターの回転数の測定に特化し、製作した測定器を持参してくれました。

 この測定器は、設定した回数、光を遮るごとに時間間隔を取るようになっています。

 単振り子の振動の場合は3回光が遮られるごとに時間を取り、周期を測定します。測定値は赤外線で送信され、大型の液晶に表示されます。
 装置の全景です。  表示板です。
 この仕組みを使って、ばね振り子の周期も同様に測定しようと試してみました。しかし、上手く感知できなかったため、岡田さんは黒画用紙を付けて、再度トライ!

 今度は周期が安定しません。おもりの重心がずれて、振動が安定していない事が原因と思われたため、画用紙を対称に張り付けることで、周期の測定も可能となりました。

 少しのことですが、実験してみて初めて分かる、細かな工夫です。
 光を遮りやすいよう、振り子のおもりに画用紙をつけています。
 もう1つの目的である、モーターの回転数の測定では、光を遮るために、モーターにプロペラをつけます。今度は、30回遮るのにかかる時間間隔を測ることで、1分あたりの回転数であるrpmを計算、表示します。  
 スイッチとプロペラをつけ、回転数を測定できるようにしたモーター。


 モンキーハンティングの定量化 (前田さん)  

 モンキーハンティングを半定量的に行うことを目指し、装置の改良に取り組む前田さん。黒板に準備された装置が本気度をうかがわせます。

 肝心の打ち上げ装置はばねを6本並列につなぎ、弾性力で円筒状の棒で球を押し出し、電磁弁の導線を切ると同時にさるが落ちてくる方式です。発射する玉は、木製の球ですが、水平投射や斜め下方への投射でも転がらないように釘を打ち込み、木棒の磁石と穏やかに引き合っています。

 また、初速度を測るためビースピをセットし、前田さんお手製の調整可能なガイドで軌跡をあらかじめ示し、距離は視覚的に分かりやすいように表示板を。
 さらに、前田さんお気に入りの運動アナライザーでモンキーハンティングのストロボ写真も撮影します。
 装置の全景です。そこそこお金もかかってます。
 説明後、実演となりました。  飛距離確保を考え、水平方向から45°上向きに発射された球はサルに命中せず、軌跡はガイド若干のずれが生じてしまいました。何度も挑戦するものの、上手くいかず。
 よくよく観察すると、サルの落下のタイミングがボールの発射のタイミングより目視でも分かるほど遅れていることが判明!

 議論の結果、残留磁場が抜けなくなっているのではという話になりました。

 杉本さんが電磁石の鉄心を取り除き、空芯コイルとネオジム磁石でサル?まらせるというアイデアがありました。いろいろな所で活用できそうなナイスアイデアでした。
 練習では上手くいったという記録です。
 さらに、ガイドとのずれが、導線を切る際の0.1m/sほどの減速とその際に受ける力積で打ち上げ方向が不規則に変わってしまうことも原因と考えているとのことでした。

 減速する問題は、前田さんが行っていたように減速分をあらかじめ計算することでガイドの調節が可能でしょうが、後者の方向が定まらない問題はかなりやっかいであると言わざるおえません。

 動きが速すぎて、当たったどうかの確認が困難なため、音が出る方がいいのではなどといった簡単にできる改善点も含め、半定量的な実験にできるならば、様々な使い方ができそうに思います。

 今後、明らかになったいくつかの課題を克服をできるでしょうか?
 打ち出し部の機構。欲しい速度を得るための、角度ごとの目安あり。


 赤外線デジタルカメラ (深谷さん  

 yashicaというメーカーのEZ Digital F537IRというデジタルカメラはナイトモードで赤外線撮影が可能なことでマニアの中では知られているそうです。

 発光部はすべてふさいであります。  暗くした室内でも撮影です。
 深谷さんは赤外線などを発するカメラの発光部をふさぎ、ヒーターにカメラを向けました。すると、ヒーターが白くなっているのが確認できました。

 このように簡単に赤外線を捉える事ができます。 ケーブルをつかってモニターに映すこともできるのでいろいろ活用ができそうですね。
 白くなっているのが赤外線です。

 水面での1円玉と木片の動き (飯田さん  

 茶碗に水をあふれる直前まで入れ、1円玉を水面に浮かべます。すると1円玉はどのような動きをするでしょうか?
ア. 動かない イ. 水面上をコップの中央に動く ウ. 水面上をコップの端に動く



 では、実験でと1円玉を手にする飯田さん。一円玉はどんどん水に沈んでいきます。すかさず、ピンセットの声、成功率が目に見えて高くなりました。

 実験結果はウとなりました。

 次に、四角く切った薄い木片を浮かばせるとアからウのどれになるでしょうか?
 1円玉1枚だと端にいきます。
 この答えはイです。

 問題は続きます。

 1円玉2個を浮かべるとどうなるでしょうか?

 この場合、2つの1円玉は  次は木片2つです。どうなるでしょうか?

 今度は中央に2つが動きくっつきます。

 それでは、最後の問題です。
 1円玉1つと木片1つではどうでしょうか?
 1円玉2枚だと...  木片2枚だとどうなるでしょう?
 木と一円玉は離れ、木が中央へ、1円玉が端に移動します。  
 1円玉と木片を同時に浮かべると。
 飯田さんはこれを静止した物体がどちらに動くかは、その物体が受ける力によって決まることから、1円玉と木片が受ける力から、動きの説明を行うことを考えました。

 飯田さんの考えた図は右の通りです。

 力の大きさは等しいと考えると、力の矢印が傾くほど、水平成分が大きくなり、そちら側に進むことになります。

 一円玉一枚なら端の方に、木片なら中央に寄る理由が説明できます。  
 1円玉が2枚の場合はどうでしょうか?

 木片は中央の水面が下がるため、力の矢印が倒れ、中央向きの力が大きくなることから、2つがくっつくことが分かるでしょう。
 同様に、木片2枚でもくっつきます。一方、1円玉と木片だと斥け合います。
 その後の動きは1円玉1枚や木片1枚の場合と同様です。
 他方、奥村さんは重力による位置エネルギーの和が小さいところで安定するという考えを用い、結果を予想していました。
 アルミニウムは水より密度が大きいので下にある方が全体の重力による位置エネルギーの和が小さくなります。

 逆に木片は水より密度が小さいので、上にある方が小さくなります。

  力での説明の方が納得がいきますが、エネルギーでの説明も面白かったです。

 最後にこの問題の出所が話題になりました。大学生への宿題だったそうです。解けない大学生に答えを聞かれ、答えてしまうのが飯田さんらしいですが、教授の答えが違うとかどうとかで、例会後、飯田さんとの議論に時間を要したのは想像に難くありません。
 エネルギーを考えた答え。スマートでした。

 声紋をみる (杉本さん)  

 この夏、科教協の広島大会に佐野さん、成相さんとともに参加した杉本さん。
 ナイターではガリレオ工房 滝川さんの100円ショップで購入した題材で実験道具をつくるワークショップに行き、参加だけでなく準備の手伝いもしてきました。

 数ある実験の中から、杉本さんは声紋を見る実験に興味を持ちました。実験では、光源として滝川さん無償提供の赤色レーザーを使い、紙コップの裏に十字に切れ込みを入れ、サランラップをピンと張ります。


 その上中央に、小さく切ったアクリル鏡を置き、レーザー光を反射させます。その反射光をアクリル鏡をつけたつまようじを手動で回転させることで、回転鏡の役割をさせ、そこで反射した光を黒板等のスクリーンに投影します。
 滝川さんの指導の元作った装置。安価ですが、動作しませんでした。
 紙コップの開口部に口をつけ、声を出すと、その振動によって、声紋をみるという試みでしたが、ナイター会場には数十人がおり、各々がこの実験を試みたため、光線がそこらじゅうを行きかうきわめて危険な状況に!

 周りでは誰も成功せず、時間となり、次の実験に進んでしまいました。

 この実験に魅力を感じ、改良したいと考えた杉本さん。偶然にも、会員であるAAPT(American association of physics teacher)の会報によく似た実験を見かけ、そこで紹介されている木に固定する方法を使うことにしました。
 AAPTの会報にあった記事です。
 また、回転鏡には電気消しゴムを回転式に改造し、筒状のプラスチックにゴム膜を被せてあり、円形の面に鏡が張り付けてあります。実際にゴム膜に向かって声を出しながらレーザー光を鏡に当てると、その振動が生じます。それを回転鏡で投影することで、変位の時間の変化(おおまかな波形)を見ることができます。

 実際に、実験となりました。
 確かに波形は見られるものの、あいうえおすべてが同じような波形になってしまいました。

 この結果にがっかりしたという杉本さん。名古屋市科学館の学芸員の山田さんからはゴムや膜では、固有振動数が出ているのではないか。そのため、ゴムや膜などを使うのではなくスピーカそのものを繋げばいいのではないか等の意見がありました。
 杉本さんの改良版。手動による不確定要素を減らしました。  左に見えるレーザー光を黒板に投影しています。


 ハンドスピナーでマクスウェルのこま (山本さん  
 様々な種類のハンドスピナーを買い集めた山本さん。

 高価なものは見かけのかっこ良さに加え、重心をずらし、回転の
 ただ、性能は100円ショップのものでも十分実用的とのことです。これを使って何か作れないかと考えていたところ、ハンドスピナーでマクスウェルのこまを作ることを思いつきました。
 土台の釘の受けとして、ハンドスピナーの蓋を上下とも外し、そこに鉛筆のキャップを差し込み、必要ない部分を金鋸などで切断します。

 片方の蓋は、上に接着すると出来上がり。重心が自然にとれる、お手軽なマクスウェルのこまの完成です。
  山本さんが以前に作ったマクスウェルのコマです。   買い集めたハンドスピナー値段ほどの性能差はないとのこと。
 

  切り出した鉛筆キャップとハンドスピナーで作ったコマ。   この通り、本当によく回りました。

 物体を複数の人が支えるとき、人にかかる力 (佐野さん  
 重くて大きなものを複数人で手に持って運ぶとき、重くて手が下がってくるとより重くなることを体験したことはあるでしょうか?

 佐野さんはこの理由を理論的に証明するとともに、作図で明快に説明できないかと考えていました。

 そこで作ったのが黄色い教具です。

 一様でないサッカーゴールなどを2人で運んだ時のモデルで、糸が繋がれている点が力の作用点を意味します。
 黄色い物体の重心と、人が支える点を示しています。
 ワッシャーは糸をピンと張るために使用しているだけです。
 この黄色い水糸の間隔を見ることで、うでの長さの変化を視覚的に観察しようということなのです。

 例えば、左側の持つ人の手が下がるとどうでしょうか?物体が傾くにつれて、回転の中心として考える重心からのうでの長さが短くなっていくことが明確に理解できます。
 逆に右側の人は手が上がり、うでの長さが長くなります。重心を中心としたときの力のモーメントのつりあいより、必要な力はうでの長さの逆比になるので、結果は明らかです。
 うでの長さがひもの間隔で視覚的に分かります。

 球形ガラスで水中での空気レンズと水レンズの比較 (鈴木さん  
 空気中にガラスやプラスチックの凸レンズを置く実験は、中学・高校で広く行われています。そこで、レンズ中に空気の凸レンズを置くとどうなるか気になる生徒がいることでしょう。

 そこで、鈴木さんは丸底フラスコを空気で満たしたまま、水中に入れることで、その実験を行ってみました。
 水中での凸レンズはどのようにはたらくでしょうか?


 答えは右の写真の通り、凹レンズのように(*)光が広がり、正立虚像をつくります。
 フラスコの下半分に水を入れたのは、上と下の違いを観察させたかったとの鈴木さんの配慮からです。目的に応じて、水はなくてもいいかもしれません。

 *もちろん、球体であるフラスコは正確な凹レンズではありませんので、像はひずみます。  
 水中での空気の凸レンズは凹レンズのような像をつくります。

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