2023年3月11日(日)向陽高校での例会の記録です。
 インスタグラムで写真や動画を公開しています。straycatsaichi(ストレイキャッツ愛知)です。
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 シンテッポウユリを用いた花粉管観察実験(伊藤さん 
 東レの理科教育賞で佳作を受賞した実験の紹介をしてくれました。 花の雌しべの先端である柱頭に花粉がつくと、花粉管が伸びて雌しべの根元にある子房内の胚珠まで精細胞を届けます。 シンテッポウユリやタカサゴユリの雌しべに1日前に受粉して、雌しべを縦断してから固定・アニリンブルー染色・脱色の処理を行えば、雌しべ内の花粉管を観察することができます。 図1は柱頭から伸びる花粉管、図2は花柱内の花粉管です。いずれも青い筋が花粉管で、無数の花粉管が子房を目指して突き進んでいるのがわかります。 3日前に受粉しておけば花粉管は子房まで伸びるので、子房を3分割すると胚珠へ伸びた花粉管を観察することができます。 胚珠は子房内で2つずつペアになって3組が並んで数100個存在していますが、花粉管はそのペアの2つの間を進んでいくので、それが見えるように分割するところがポイントです。さらに寒天培地上で、花粉の近くに雌しべの各部切片を置いて花粉管誘引効果を調べることで、雌しべ内部で花粉管を導く仕組みを考察することができます。
 図1 


 図2 


 変位電流が作る磁場を測る(林さん 
 「変位電流」は高校の教科書にはその名前は登場しませんが、電磁波の発生では「コンデンサーの中の変化する電場のまわりには磁場が生じる」として趣旨は紹介しています。この磁場を生じるもとである電場(電束密度)の変化∂D/∂tを変位電流と呼ぶのです。林さんは以前から変位電流が作る磁場の測定をしてきましたが、今回は以前にも増して明らかに変位電流の存在を示す測定です。 ポイントは、トロイダルコイルで検出された微小な磁場をOPアンプを用いて増幅したことです。それによって、回路に流す電流を小さくできました。そしてコンデンサーも複数使って長くし、コンデンサーの極板間のまわりを測定していることをわかりやすくしました。 写真左が使用したコンデンサーです。スパークチェンバーのトリガー用に使用されていたもので、直径52mm、厚さ38mm、1900pFのセラミックコンデンサーです。こんなコンデンサーは初めて見たので驚きでした。3つ直列に接続されています。写真右の手で支えているのが磁場検出器です。トロイダルコイルとプリアンプで構成されています。発振器(1.0MHzとして使用)からの交流をコンデンサーに送り、磁場をトロイダルコイルでキャッチしてオシロスコープで表示します。トロイダルコイルは電場の影響を無くするためにアルミホイルで静電シールドしてあることを付け加えます。コンデンサーの電極の電荷の影響を無くすためです。  
図が結果。青が検出された磁場を表します。リード線の部分とコンデンサーの側面の部分を移動させてもオシロスコープの磁場のシグナルはピクリとも動きません!

 改良「古い10円玉(亜酸化銅)で光通信」 (石川さん  
  「古びた10円玉を水につけて光をあてると起電力が生じる」つまり10円玉の表面が太陽電池と同じ働きをするということです。この驚きの実験は30年ほど前に岐阜物理サークルが開発した実験で、この起電力を利用して光通信に発展させていました。ただし、出力が小さいという欠点がありました。石川さんは、10円玉の代わりに酸化させた銅板を使って大幅に出力を向上させ、確実に光通信ができる装置にしたのです。 図がその装置。音声電流が乗ったLEDからの光が重曹水の中の表面が酸化された銅板の表面にあたります。すると、表面と溶液の間に電位差が生じます。光のあたる銅板はCuOの電位、もう一方の銅板が溶液の電位となるために両極板間に光の量に応じた信号が発生します。その信号をオペアンプとアンプで増幅して元のラジオからの音声信号がスピーカーから再現されるわけです。 図 が実験風景です。ビンの中に2枚の銅板が入っていて、至近距離から変調された光をあてています。プリアンプまで写っていますが、プリアンプの出力はオーディオアンプでさらに増幅されます。スピーカーからは元のラジオの放送がクリアに聞こえました。   

 原子も電子もつぶれる — 微細構造定数で星を表す(飯田さん  

(2)微細構造乗数の物理的意味
 刺激的な題目です。私は「電子がつぶれる?!ありえない」と思ってしまいましたが、宇宙の世界では、星が重力に耐え切れず、白色矮星になり、さらに中性子性になる過程では原子や電子さえもその形でいることができず形を変えます. それを「つぶれる」と表現するのですね。飯田さんは、それを微細構造定数を使って素粒子のレベルから論じました。 いきなり黒板に式を並べてのレクチャーとなったので面をくらいましたがレジメを見てちょっと理解できました。以下概略(一部略)ですが、細かい式展開については飯田さんに連絡をしてください。
(1)水素原子を微細構造定数αで表す
(3)微細構造定数で星の大きさを表す
よって、
木星の大きさはR=0.71×108m、質量はM=1.9×1027kgと大体同じ程度であるが水素原子がつぶれて核融合はおきておらず、太陽になりそこねた星であることがわかる。 核融合を起こすにはさらに熱運動のエネルギーが1千万度程度の温度が必要である。これを生みだす重力エネルギーが必要である。計算によると、 水素核融合が起こるためには木星より少し大きめの星でないとだめなことがわかる。 以下、同じように各種エネルギーを比較しながら白色矮星、中性子性へと続きます。長くなったのでこのあたりで失礼!(/TD>

 浮き上がらないピン球の計算 (村田さん)  
 前回の例会で奥村さんが「図のようにピン球の下面だけ出して上から水を注いでも浮かないが、下面を水面につけても浮かず、ある程度深いところでやっと浮く」という実験を見せてくれました。浮力に見合うまで沈めないとピン球は浮き上がらないというのが結論でしたが、村田さんは実際にその計算をしてくれました。以下がその計算です。 簡単のためピン球の半分の位置がペットボトルの口だとし、図のように座標軸をとります。ピン球の上面が受ける水圧による力と下面が受ける水圧による力をdθごとに輪切りにして積分してもとめます。


 発想の転換 (奥村さん  
 
 奥村さんは最近あったおもしろい生徒の話をしてくれました。 力学的エネルギーの問題でよくある「最高点の高さをもとめよ」という問題です。
この問題を解かせると、成分に分けて考える生徒がよく見受けられます。こんな感じです。答えは同じですが、エネルギーが向きのないスカラー量なので危うい発想です。
ところが、ある生徒がやってきて曰く、「速度を方向別に分解したのではなくて・・・ こっち(B)からこっち(A)をみたんですよ・・・ええと相対速度・・・」この生徒は等速直線運動をする観測者から見て解いたというのです。
個々の物理量は見る人が変われば変わります。でも物理法則は、慣性系、つまり等速直線運動をする人からも止まっている人から見ても同じ!この問題も水平方向に-v_0/2 で進む人Pから見れば成分に分けたしきと同じとなります。これは一本!その発想の柔らかさに驚かされたという話でした。 いい話でした。こんなふうに生徒の発想を楽しみたいですね。

 オームの法則のレポート (植田さん)  
  最初にレジメが配られ植田さんから質問がありました。「6種類の「オームの法則」に関する学生のレポートがありますが。大学生、高校生、中学生、それぞれできる学生、できない学生からのレポートです。どれがどの学生かわかりますか?」 例えば、右はその一例。「書き方が幼稚だから中学生のできない学生」の声。 その後、植田さんから種明かし。もっともらしい6種類のレポートは今話題のチャットGPTで条件を入れてAIに作らせたものだということでした。 実にもっともらしいものが一瞬にできるということは驚きです。学生がレポート作りに使うのではという話がありましたが、それどころか実験データーまで捏造するのではという脅威もあるかもですね。


 球形ボトルで虹の実験 (杉本さん  

   スーパーで買った美しい球形のペットボトル。これで虹の雨粒の実験。 平行光線としてプロジェクターからの光を利用。球形ペットボトルに水を満たしてプロジェクターからの光の中へ入れ、斜めの方向から球をのぞき込むと。小さなスペクトルがボトルの中に見えます。 しかし、よく見るとボトルのふちにもう一つ明るいスポットが見え、色の並び方は逆です。角度を変えると2つのスペクトルがお互いに近づいて合体します。 「この2つは主虹と副虹?」「外側のスペクトルは球の内側を何度も反射した光?」いろいろな案がでました。
サークルの後で一つの結論に達しました。 虹の少し詳しい説明で右図のような水滴表面に対する太陽光の入射角を横軸に、水滴から出る角度を縦軸にとったグラフがあります。 主虹は、グラフがカーブしている入射角=60°のあたりの光が入射角が少し変わっても出る光の太陽光に対する角度が42°くらいで変わらないので、最も光を集める42°あたりで光の強度が最大になって虹が見えるという訳です。 このグラフから実験の理由がわかります。例えば入射光との角度が20°の方向から観察するとしてみます。グラフの縦軸20°に横線(赤い破線)を入れてみると、グラフとの交点は20°と87°付近にあり、そこから入射した光から来ることがわかります。実験の2つのスペクトルの正体は主虹の2つの光だったのす。そして、破線を上に動かすと2つのスペクトルがどんどんと近づいて合体することもわかります。