2004年8月28日(土)、29日(日)静岡県静岡市清水で第2回目の電磁気集中討議が開催されました。
  関東、中部から13名が集まり、電磁気分野から始める物理Tの実践報告、イギリスの新しい教科書
「アドバンシング物理」の内容についてのレポート、実験交流等と盛りだくさんでした。

 旅館の前で記念撮影


磁力線を強調した電磁気のプラン
(加藤さん)
 電磁気から始める今回の改訂はよかった、と主張する加藤さん。電磁気分野の授業案と研究授業の様子を撮影したビデオで報告してくれました。
   

物理T「電気の授業」実践報告
(右近さん)
 今年授業で行なった、物理Tの電気の分野の実践報告です。
 
 授業案は、フランクリンモーターの製作や電流計の製作なども含み、教師側の演示実験や演習問題まで含んだ力作です。
 電気振り子については熱心な討論まで起きたそうです。

 右近さんは現在単位制高校で勤務中。授業は90分で週2コマだそうです。
  生徒に製作させた電流計  生徒の討論を巻き起こした電気振り子

「アドバンシング物理」モーター、発電機を生かした電磁気学についての評価と日本の高校物理
(山崎さん)
 生徒から見た電磁気学習の困難性、アドバンシング物理での電磁気学の特徴、日本の高校物理
で検討すべきこと等を説明してくれました。
 イギリスでの制度と日本の制度との比較から教授内容まで、京都での研究会の成果をふまえて
わかりやすく説明してもらいました。
 日本の物理教育のあり方を世界との比較で考えていく必要がありそうですね。
アドバンシング物理についての評価
 1 もの作りを通して発見していくカリキュラムである
 2 工学的な内容を導入して、原理を理解させようと試みている
 3 科学技術が社会に果たしている役割を意識させ、考えさせていく開かれた物理カリキュラムである

日本の高校物理で検討すべきこと
 1 カリキュラム:
   電磁気学の体系全般の見直し。
   モーター、発電機などを用いた実験等、生徒の関心に沿った題材の導入
   現代科学技術を結びつけた電磁気学の視点。
 2 教材のあり方:
   上の内容を満たす実験器具、演示装置、副読本の工夫。
   生徒が探求学習に取り組める実験器具の整備、実験の開発
 

物理T1学期の記録
(湯口さん)
 見えないものをどう認識させるか、という視点で、物理Tの1学期の授業記録を報告してくれました。
 生徒全員にデジタルテスターを使わして、いろいろな回路での電圧、電流の具体的な測定を通して電位概念を育てる。
 相互誘導による信号の伝達など具体的な例を通して空間を伝わる何かがある、ということを知らせる。
 参考になることが多い発表でした。
 
 右は、湯口さんがサイエンスキャンプに生徒を引率した際に作ったスターリングエンジンです。
 出っ張りのところを加熱すると、すごい勢いでピストンが動きます。
 こうゆう物作りも科学教育には必要ですね。
 

電流と磁界・・・・磁界の合成と力
(飯田さん)
 エナメル線を厚紙に通し、電池をつなぎ、周りに鉄粉を振り掛けると、線の周りの磁界が現れてきます。
 モーターの内部の磁界の様子もつくれます。
 
 磁界の中で電流が受ける力を、磁界の磁力線の性質で説明したり、ローレンツ力で説明したりします。
 この現象の説明の歴史的変遷について、あるいは電磁波の発生についての説明の変遷についても発表してくれました。
 
 エナメル線の周りの磁界

高電圧・大電流
(山岡さん)
 知らず知らずのうちに生活に入り込む高電圧を使った機器。
 高電圧についての経験も必要という事で簡単にできる高電圧発生回路の紹介です。
 
 コッククロフト・ウォルトン回路やマルクス回路で高電圧を発生させ、ミニ雷を作ってくれました。電源は12V電池で20万Vぐらいを作れるそうです。

 大容量コンデンサのショートによる大電流の実験もありました。
 細い導線が大音響とともに融けてしまいました。怖いですね。

 

 高電圧発生回路です。

管内が高真空だと雷のような放電になりません。

まとめと討論

 イギリスの教育体系と日本の教育の比較から様々な意見がだされました。

 特に、日本の物理教育はピュアな物理、つまり物理概念の形成に重きを置きすぐているのではないか、もっと工学的な視点と内容が必要なのではないか、という意見が出されました。
 
 日本の目指す(?)物理概念の形成もうまくいっているわけではないということも指摘がありました。

 概念は、教えるのではなく育てていくものだ、ということでしょう。

 いずれにせよ、目の前の生徒の未来に役立つ物理とは何か、ということを不断に追求する必要があることを強く感じました。