高等学校物理学習指導案 (略案)

 

京都教育大学教育学部理学専攻3回生 ○○ ○○

対象 2○講座(男13名、女17名、計30名)

日時 2000年9月7日(木) 第5校時(1:00〜1:40)

場所 グラウンド

指導教官 川村康文教官

 

1.本時の主題:生徒実験「運動量保存則」   水ロケット

 

2.本時の教材観

運動量は,一般にはpで表される。質量mの物体が,速度vで運動しているとき,その物体の運動量は,

p=mv

である。また,1つの系の中で,系に対して外力が作用しない場合,運動量の総和は保存される。これを運動量保存則という。

 水ロケットは,元々は,1992年にカヌー初心者のための救命具の一つとして開発されたものであり,それ以来開発がなされ,近年は理科教材としての利用が注目されている。

 適量の水の入ったペットボトルの中に空気を送り込んで加圧し,その空気圧で水を噴射して飛ぶ。ここには,運動の第3法則である「作用反作用の法則」や,今回の小単元である「運動量保存則」が働いている。

 多少簡略化して考えてみる。速度vで水平飛行しているロケットの本体質量をM,燃料の質量をmとする。切り離し後のロケット本体の速度がVで,燃料(固まりとしておく)の速度がvであるなら,運動量保存則により,

  (M+m)v=MV+mv

となり,ロケット本体の速度は

  V=v+(v−v)×(m/M)

となる。ただし,v−v>0 より,ロケット本体が加速されたことがわかる。

 

3.本時の生徒観

本時の授業は遊びの要素が大きく、実際,私が高校生の時も結構楽しみながら取り組むことができたので,生徒は、ある程度興味を持って授業に参加してくれるだろうと考える。

 運動量については,前回の授業ですでに学習しているが,その内容を十分に会得している生徒は,多くはないと考えられる。また,運動量と,今回の水ロケットとの関係も,十分には理解していないと考えられる。

2d講座の生徒は,前回の授業を見ている限りでは,授業中に私語をしたり,居眠りをしたりということはなく,集中してきいていると感じた。

 

3.本時の指導観

今回,運動量保存則を理解させるための教材として,水ロケットを選んだ。

運動量は,速度や加速度,力などといった物理量と違い,日常生活と縁遠い言葉であるから,その概念をイメージすることはやや困難である。したがって,水ロケットを使って視覚的に現象を体験することは,非常に大切であると考えられる。比較的簡単な式で現象を表すことができ,なおかつ楽しみながら理解できるので,教材として適していると思われる。

今回の授業は,生徒が興味を持って参加することが望ましいので,できるだけ,生徒自身がロケットを飛ばすことのできる時間を多くとりたい。したがって,原理説明などの導入部分を,円滑に進めていくことが重要である。

 しかし,単なる遊びで終わってしまわないように,授業で行っていることの物理的な意味は,しっかりと学力として定着させる必要がある。水ロケットを通して,運動量についての復習を行い,理解を深めていけるように,ポイントは押さえていかなければならない。

 

5.本時の目標

実験に積極的に参加する。

水ロケットの原理を,運動量の概念を用いて説明できるようになる。

運動量に関する内容を確認する。

身近なところに,物理法則が働いていることを知る。

 

6.準備物

水ロケット(5個)

空気入れ(5個)

ジャージ(着替えておく)

 

 

 

 

 

 

7.展開計画

過程

学習内容

教師の活動

生徒の活動

留意点

出席など

(3分)

 

 

 

 

 

 

・挨拶

 

 

 

・出欠確認

・簡単な自己紹介

 

 

 

 

・返事する

・自己紹介をきく

・大きな声で明確な指 導を行うよう留意す る

生徒にロケットを飛ばさせるまではテキパキと進行するよう留意する

 

導入

10分)

授業内容の提示

 

 

 

 

水ロケットの原理説明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諸注意

 

 

 

 

今日の授業の内容を伝える

「今日は,水ロケットを飛ばします」

ロケットの現物をみせる

水ロケットの原理を説明する

「水ロケットは,前事に学習した『運動量』の概念を使って考えることができます」

運動量の定義を質問する 

外力が働かない場合,一つの物体系の中で,運動量はどうなっているのか質問する

飛ばし方についての注意をする(演示の準備をしながら)    

今日の授業内容を知る

 

 

 

 

・説明をきく

 

 

 

 

 

当たった生徒は答える

 

 

 

 

 

 

 

・注意をきく

 

 

 

 

 

 

・水ロケットと運動量 保存則の関係を確認 させる

見えない人がいないように配慮する

 

 

・運動量がmvで表さ れること,運動量は 保存することを答え させる

展開

25分)

演示

 

生徒実験

水ロケットの発射の演示を行う

「じゃあみなさんもやってみて下さい」

 

 

 

 

・演示をみる

 

・水ロケットを飛 ばす

・他の実習生に手伝っ てもらう

どのくらい水を入れればよく飛ぶかなどの指示は事前に行わず,生徒に試行錯誤させる

適宜巡回する

生徒全員に体験させる

まとめ

(2分)

まとめ

「水ロケットがそうであるように,衝突だけでなく,爆発も運動量で考えることができます」

例:爆弾,花火

 

「水ロケットような遊びの中にも,物理の原理が生きています」

「身近にある何気ないことでも,何でこうなるんやろう,と思う視点を持ってみても面白いと思います」

 

 

 

8.本時の評価

積極的に実験に参加できたか。

水ロケットの原理を,運動量の概念を用いて説明できるようになったか。

運動量に関する内容を確認できたか。

身近なところに,物理法則が働いていることを知ることができたか。