マグネトップの実験(桜井昭三)

 マグネトップという名前の科学グッズがあります。写真のようなものです。直径8cm高さ3.5cmのプラスチックの台と、直径2cmくらいの小さなコマです。(写真1)
写真1(外観)

 コマの裏にはリング状にマグネットがはめ込んであり、直径方向に着磁されています。(写真2)
写真2(コマの着磁方向)

 台の上でコマを回すと、だんだん速度が速くなり、いつまでも回り続けます。(写真3)
写真3(回転中)

 中を開けてみました。中央にコイルがあり、006Pという9Vの電池が付いています。コイルの根っこには、なにやらトランジスタのようなものが見えます。(写真4)
写真4(内部構造)

 この部分を拡大すると、まさしくトランジスタです。コイルは外側に薄い色の細いエナメル線、内側が少し太い線(色も少し濃い色)です。写真では少し見えにくいと思いますが、ルーペで拡大してみると、電池のプラスが、トランジスタのコレクタ、マイナスが太い方のコイル、エミッタに両方のコイル、そしてベースに細い方のコイルがつながっています。(写真5)
写真5(トランジスタ)

 どうやらコマが回転すると、コマの磁石の回転による磁力線の変化が、細い方のコイルに誘導され、それがトランジスタを動作させて電流を流し、その電流によるコイルの磁力線がコマを動かし、そして・・・・・と循環するようです。どんな電圧が発生するかみたくなったので、コイルに細い線をつないでオシロスコープで波形を観察することにしました。(写真6)
写真6(テストリード線)

 電池をつながない状態では、きれいな正弦波(サインカーブ)が見られます。上が誘導波形で、下は周波数校正用の50Hz(ヘルツ)です。(写真7)
写真7(1次誘導波形)

 電池をつないだ状態では、波形は大幅にひずみます。大体方形波に近い波形です。これはトランジスタの特性や、コイルの過途現象、コマの磁力線変化などとの相互作用だと思いますが、かなり難しい理論が必要で、ワタシの手には負えません。(写真8)
写真8(電池駆動波形)

 ついでにコイルの巻き数を推定してみました。
 
 まずエナメル線の太さですが、手元にあった一番細い縒り線の素線が、マイクロメータではかると0.11mmφ、色の薄い方の線とルーペで比較すると、それよりわずかに細いので、0.1mmφと推定、それとの比較で、色の濃い方は0.2mmφとしました。

色の濃い分の巻き厚は約2mm、巻き幅は約22mmありますから、
  2×22/0.2/0.2=1100(T)

薄い分の巻き厚は約4mm、巻き幅は同じで、
  4×22/0.1/0.1=8800(T)
位ではないかと思います。

 外側の細い方が、コマからの磁気誘導で電圧を発生、トランジスタのベースを 駆動して、太い方で発振する、これは多分ハートレイ型の発振回路だと思います。

 非常に簡単な構造ですが、なかなかよく考えてあります。リクツを考え出すと結構面白くて、1週間ほどあれこれ楽しんでしまいました。