バンドン通信 

インドネシア バンドン日本人学校
松本太志先生のレポート
From April 2006

●2007年4月10日号 第3号

赴任早々デング熱にかかったり、妻がアメーバ赤痢と思われる症状を発症したり、そんなこんなをしているうちに、もうすぐバンドンに来て1年目が終わろうとしています。赴任当初は、家と学校の往復だけで毎日が過ぎ去っていったのですが、時間が経つにつれ行動範囲も広がり、色々な場所へ出かけることも多くなりました。実質的な第2回となる今回は、バンドン市内および近郊の名所を紹介をいたします。

 1 タンクバンプラフ

インドネシアは環太平洋造山帯に面しており、そのために、各地に火山や温泉があります。また、そのために地震や火山噴火による災害も多く、私が赴任してからも『プロモ山噴火』やスラバヤ近郊での泥の噴出(学者によると、「泥火山」とされていますが、多くの住民は天然ガス採掘による人災であると訴えています)、さらには、ジャワ島のインド洋側にあるパガンダラン海岸の津波被害、スマトラ島での大規模な地震が複数回などと、頻繁に災害が発生しています。
 山頂の火口。カルデラ地形。


幸い、バンドンは至って平和であり、安否を気遣う日本からのメールと、NHKワールドのBSニュースでコトの次第を初めて知るということがよくありました。

さて、バンドンの北側には、活火山であるタンクバンプラフがそびえます。標高は2076mと、世界的に見て高い山というわけではないのですが、南国にあるのにもかかわらず頂上は非常に寒いです。名前の由来は、この地に伝わる神話にちなんでおり、「怒った王子が船を蹴飛ばして船がひっくり返った」そうで、ひっくり返った船底の形をした火山です。


山頂には売店が立ち並び、さまざまなおみやげが売られている。

 2 チアトル温泉

タンクバンプラフのふもとには、温泉公園と、いくつかのホテルがあります。温泉公園には、バンドン近郊はもちろん、ジャカルタからもバスを仕立てて観光客がやってきます。


最上流の「足湯」。ここはさすがにキレイ。

公園内には、源泉が噴出す『足湯』のほか、傾斜地を『温泉の川』が流れるようになっており、要所要所に『湯だまりの池』が作られています。観光客は、ここに入ったり(主に子ども)足をつけたりし、ゴザ敷きの休憩所(有料)に寝転んで休日を過ごします。

最も下流の池には、足こぎボートもあります。


最下流の足こぎボート池。色々なものが入っていると思われます。

 3 チハンプラス通り

バンドンは、繊維業で栄えた街です。最近では、世界の繊維業の生産現場が中国へとシフトしてしまい、一時期に比べるとずい分繊維工場は減りました。しかし、今もなお、バンドンは繊維の街であり続け、市内には数多くの衣料品店が立ち並びます。週末にはジャカルタなどからの観光客がどっと押し寄せて渋滞を引き起こします。

写真は、多くのジーンズショップが軒を連ねるチハンプラス通り。通称、ジーパン通りと言われますが、どこの誰が通称として使っているのかは不明です。


 ランボーを飾っているのはミリタリー・ファッションの店。

この通りの店は、なぜだかハリウッドスターやディズニー映画のキャラクターの人形を看板にする店が多くあります。

ここには、『チー・ウォーク』というショッピングモールもあり、日本食レストランや中華のお店、映画館などもあり、多くの若者が集まります。センターモールの広場では、さまざまなイベントが行われます。


チー・ウォーク


年中夏なのに…

 4 アンクロン小屋 

残念ながら、現時点で写真がありませんが、バンドン市内観光でイチオシの場所です。「小屋」というと、なんだかバラックをイメージしますが、きちんとした観光名所です。アンクロンと呼ばれる、竹で作られた楽器の演奏や、スンダ地方(西ジャワ州はスンダ民族が多く住んでいます)の歌や踊りを、幼稚園くらいから高校生くらいまでの子どもたちが披露します。小さな子供たちが中心のパフォーマンスはとてもかわいらしく、ショーの後半は子供たちが観客席にやってきて観客をステージに連れ出し、踊りや歌を楽しみます。観客一体型の素晴らしいエンターテインメントです。

 5 パサール  

アジアといえば市場!バンドンにもいたるところにパサールがあります。たいていのものはパサールで安く手に入ります。ただし、場所によっては衛生環境が非常に悪いので、キレイ好きの人には向いていません。
 市場というと、広場での青空マーケットや、びっしりと簡易店舗が立ち並ぶというのが一般的です。バンドンでも、小さいものから大きいものまで、たくさんのパサールがあります。
 一方で、きちんとした大規模商業ビルになっているパサールもあり、こちらはフードコートやゲームセンターなどを備えた『デパート』のような雰囲気です。
 野菜や果物などは、このような市場で買うと、我々が利用する「日本食スーパー」の値段よりも一桁安くなります。


パサール・レンバン…総合的なパサール 
 その他:パサール・ブアー … 果物市場
       パサール・バルー … デパート風
       電化製品ならあそこ、花ならあそこと 
       いうように主力商品が決まっている。

 6 ブンガバンカイを探して、いざ、カンプンへ! 

バンドンは人口200万人の大都市です。その人口のほとんどは、『カンプン』(場所によってはカンポンという)と呼ばれる住宅街に住んでいます。そもそもカンプンとは、「田舎」「故郷」を意味する言葉ですが、いわゆる庶民の住宅街をさす言葉としても使います。

 月収1万円以下で働くものが多いバンドンで、カンプンには人がぎっしりとひしめい
ています。


カンプンの人たちはカメラが大好き!

ある日、「バンドンでブンガバンカイが咲いた」というニュースが新聞に載り、これを見に出かけました。ブンガバンカイとは、日本名「シガイバナ」で、『スマトラオオコンニャク』の仲間です。スマトラオオコンニャクは、世界最大の花(1.5mの花!)として有名ですが、それと同時に「腐敗臭がする」ことでも有名です。ブンガバンカイは、それと比べるとずい分小さいですが、開花は非常に珍しく、新聞にも載るくらいです。


ブンガンバカイ

 なにやら、夜になると『ジーッ!』というラジオノイズがするらしく、謎の多い植物です。

バンドンのいいところは、このようなカンプンに我々が入り込んでも、人々がいたって好意的であるところ。この日も、近くにいたベチャ(人力車)の運転手がこの家まで案内してくれました。家の人々は我々日本人を大歓迎!色んな説明をしてくれますが、はっきりいってちんぷんかんぷんです。そうこうしているうちに、周りの住民が集まってきて、一大撮影会になりました。別に、写真をプリントしてあげるわけではないのですが、「この子も撮って!」と泣く子を抱き上げ、撮っただけで「テレマカシィー(ありがとう)!」



 「そうか、日本から来たのか」
 「インドネシア語が話せるか?」
 「バンドンにはどのくらいいるのか?」

 ブンガバンカイを観察に行って、逆に観察される我々ですが、このフレンドリーな人々の笑顔が、私たちの滞在を楽しいものにさせてくれます。

 7 うちの近所(名所か?)   

朝から大音量でガンガン音楽が鳴り響き、何かと思って見に行ったら、結婚式をやっていました。バンドンの結婚式は、その家庭の生活レベルによってさまざまですが、少しお金のある家はローカルな歌手や演奏家を呼び、スンダ音楽を演奏しながら祝います。朝(7時頃)から昼過ぎ(2時頃)まで続きます。
 色々な人が入れ替わりで訪れ、ご祝儀を払ってご馳走を食べて、あいさつをして…
 人がたくさんいるので、誰が本当のお客さんなのか全くわかりません。


会場の外から撮影

遠慮しながら遠巻きに写真を撮っていたら、「そんなところで撮ってないで、中に入らんかいっ!」といわれ、またしても散歩が『日本からの取材』に早がわり。
 「写真を撮らねば帰さんぞ」くらいの勢いですが、そういう本人がはたしてこの結婚式の親族なのか何なのか不明です。一見、交通整理に呼ばれた手伝いの人に見えるのだけれど…


会場の中に半ば強制的に入れられて撮影

このようなお祝いの席は、我々がカメラを持って近づくと、マズ間違いなく「おぉ、日本人か。ヨクキタ!入れっ!入って撮れっ!」といわれます。結婚式のほかに、見知らぬ老夫婦の結婚30周年記念祝賀会や大学の卒業式なども、日本代表として取材することができました。


この人が新郎。残念ながら新婦は衣替え。

まだまだ紹介したいところの多いバンドンですが、この街のよさは「スンダ人の笑顔」につきます。在外の地にあるわけですから、常に危機管理意識を持って行動しなければならないのは当然ですが、このように我々日本人に対してとても好意を持って接してくれるバンドンの人々であるからこそ、色々な場所が楽しく感じられます。また、だからこそ、私たちが彼らが好意を寄せる『よき日本人』でなければならないないと思います。