北陸電力エネルギー科学館・ワンダーラボスペシャルイベント・春の科学祭り(2001/02/10-11)

大気圧と真空の不思議を体験しよう 見えない空気がそこにある

 北陸電力エネルギー科学館・ワンダーラボの招きで、子供向けの科学実験教室の講師をつとめました。行った実験の概要をご報告します。

 写真は館内の会場のようすです。教室ほどのスペースに観客用の実験卓が4脚、約20人が実験に参加できます。教卓は広く、遠隔操作できるテレビカメラがあって、後ろのスクリーンに実験装置を大きく映し出すことができます。

吸盤とゴムピタ君(埼玉県立北本高等学校・石井登志夫先生ご考案)

 はじめに吸盤を見せて、くっつくしくみを考えます。ゴムピタ君は大きなゴムシートに取っ手をつけただけのものですが、持ち上げようとしても持ち上がりません。いすの上でやるといすが持ち上がってしまいます。

スタンダードな逆さコップ

 コップに水を入れて厚紙でふたをして逆さにし、手を放しても水は落ちません。これはよくあるスタンダードな実験なので、半数以上の子供が知っています。でも、どうして落ちないのでしょう。

ふたをとっても水が落ちない逆さコップ

 逆さコップの厚紙を水平に引き抜いてしまいます。あれっ?それでも水は落ちません。何かしかけがあるみたいです。
実はプラスチックのコップの口に、台所用の水切りネット(ストッキング状の薄いもの)が接着してあります。ネットを通して水を出し入れすることはできますが、逆さまにすると水はこぼれないのです。一人一人この「マジックコップ」を自作します。


水ももらさぬザル

 接着剤が乾くのを待つ間、こんな実験も見てもらいました。お料理に使う裏ごし器や園芸用のふるいでも逆さコップを実現することができます。網の目が1mmぐらいでも楽勝です。

逆さ試験管

 容器の口径が小さければ、もはや厚紙もネットもいりません。そのまま逆さにしても水をこぼさないように保つことができます。だって、目薬の点眼瓶やスポイトは穴を下に向けても水がこぼれませんね。外径13mmの試験管までは子供でも楽にできます。普通サイズの外径16mmの試験管になると逆さ試験管の実験は極端に難しくなります。

富士山の空気

 次に、大型真空デシケーターと真空ポンプを使った実験を見ていただきます。

 富士山の頂上で栓をして持ち帰ったPETボトルはぺちゃんこにつぶれています。山頂では空気が薄く、下界の大気圧で押しつぶされてしまったのです。周囲の気圧を富士山と同じぐらいにしてPETボトルが元通りにふくらむのを観察します。お菓子の袋とアネロイド式高度計がいっしょに入れてあります。


真空中の風船とマシュマロ

 風船とマシュマロを入れて周りを真空にしてみましょう、風船もマシュマロも大きくふくらんできます。周りから押さえつけていた空気がなくなったためです。


 元どおり空気を入れて、デシケーターから取り出したマシュマロは、こんなふうにしわしわにつぶれています。マシュマロの中の気泡がはじけて空気が抜けてしまったためです。

真空中の扇風機と低温沸騰

 ミニ扇風機を回すと風がおきて吹き流しがはためきます。真空にしていくとプロペラは回転しているのに吹き流しが動かなくなります。コップの中にはぬるま湯が入れてありましたが、気圧が下がるにつれぼこぼこと泡立ちながら沸騰をはじめます。でも温度計を見ると温度は上がっていません。取り出して指を入れてみても熱くないのです。


真空中の吸盤と逆さコップ

 はじめに考えた問題、吸盤はなぜくっつくか、逆さコップの水はなぜ落ちないかを、もう一度考えてみましょう。吸盤を天井にはりつけ、ネット付き逆さコップをセットして、デシケーター内部を減圧していきます。やがて吸盤は自然にはがれて落ちてしまいます。


 逆さコップの水は空気の圧力で支えきれなくなった分がネットの網の目から漏れてしたたり落ちます。吸盤を押しつけていたのも、コップの水を支えていたのも空気の力だったということがよくわかります。

水中逆さコップ

 おまけでもう一つ不思議な実験をしてみましょう。底に穴のあいたプラスチックコップを用意します。穴を指でふさいで逆さにし、水槽の水に沈めます。指を放すと穴から空気が漏れはじめますが、コップは浮かんできません。空気がたっぷり入っているのに浮かばないのはとても不思議です。理由はとってもむずかしいぞ。


実験教室用シナリオのダウンロード(PDFファイル13.9KB)


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