神奈川県立教育センター・高等学校理科教育研修講座(地学第3日)受講報告
重鉱物分離と微量元素地球化学 講師:萩谷宏先生 (98/07/22)
昨日、7/21のサンプルの分析結果を、国内外の海岸砂(いずれも石英質)と比較し、QFLプロットなどでその違いを確かめる。七里ガ浜〜稲村ヶ崎のあたりの砂が、有色鉱物に富む極めて特殊な組成であることがわかった。
次のテーマは重鉱物分離。長野県の高瀬川流域、葛温泉付近で採取した河原の砂から、放射性鉱物のウラノトーライトやジルコンを分離しようという作業にとりかかる。放射性があるので、選鉱により目的鉱物が濃集していく過程を、放射能計測で確かめることができる。「はかるくん」および「はかるくん2」が活躍した。右は椀掛けにより荒く比重選鉱を行っているところ。
椀掛けを行っただけでこんなに黒々した砂になる。磁力選鉱にかけるため、この段階で乾燥機に入れ一度乾燥させる。
高瀬川の黒い鉱物の大半は磁鉄鉱である。弱いフェライト磁石でもごっそり吸い付けられる(左)。さらに超強力なネオジム磁石を近づけると、フェライト磁石にはつかなかった電気石や角閃石も吸い付いてくる。こうして後に残った方にお目当ての重鉱物がある。
磁力選鉱後の砂(右端)は量は少ないが、放射能は50倍にはね上がっている。分離した磁鉄鉱と比べると数百倍の放射能を示している。確かにこの中にウラノトーライトが含まれているのだ。
ポリタングステン酸ナトリウム(SPT)水溶液による重液選鉱を実演する神崎先生。軽い無色鉱物は浮き、お目当ての重鉱物は沈む。
最終段階は検鏡によって色と形で見分ける。慣れないとなかなか難しい作業だ。萩谷先生はどんな砂粒を見せても一目で鉱物名を言い当てる。さすがである。
透明で薄いピンク色をした鉱物、ジルコン(左)と、やや黒っぽい脂ぎった肌合いの放射性鉱物、ウラノトーライト(右)。
こんな感じでプレパラートにする。
3日間、みっちりと講習を受け、素人の私もだいぶ砂に親しみがわくようになった。歩いていてもやけに砂が気になる。たかが砂だが、その一粒一粒が地球の歴史の謎を解く鍵を秘めているのだ。
お世話になった講師の萩谷宏先生、センターの神崎洋一主事に心から感謝したい。