平成12年度 理科テーマ別研修講座 第18回(地学2) 2000/08/29  

海洋科学技術センターを訪ねて

 教育センターの研修で横須賀にある海洋科学技術センターを訪ねた。高圧環境体験、施設見学、講義、ROV操縦実習、飼育室見学など盛りだくさんの内容で充実した一日を過ごした。そのうちのいくつかを報告する。

高圧環境体験


潜水高圧を体験するシミュレーター。このタンクの中に人間を入れて4気圧(差圧3気圧)まで加圧する。水深30mまでの潜水に相当する圧力だ。

タンクの内部。非常に狭い。座って入るが足を伸ばすと壁についてしまう。

加圧開始。内部のようすをモニターし、音声で連絡をとりながら慎重に加圧していく。それでも5秒に1回ぐらいツバを飲み込んで「耳抜き」をしないと鼓膜が痛くなる。

断熱圧縮のため内部の気温はぐんぐん上がる。温度計は最終的には33℃を超えた。上は湿度計。人間の発汗も手伝って内部は蒸し風呂状態になる。

モニターで見た内部のようす。蒸し暑い以外はごく普通に生活できる。空気の成分は変わっていないにもかかわらず、気圧が上がるにつれ声がダックスボイス状態になる。うちわもずっしりと重く感じるようになる。

水深30m相当。圧力計はタンクの内外の差圧をさしているので内部は約4気圧に達している。

ボールもPETボトルもぺちゃんこに押しつぶされている。でも身体は何ともない。呼吸も普通にできる。酸素供給量が多くなって気分的にハイになることが多いそうだ。

減圧開始。減圧時は「耳抜き」は必要ないが、関節付近の血管中に気泡が滞留するのを防ぐため、手足を伸ばすように指示があった。

減圧時は断熱膨張で霧が発生する。霧が発生して湿度が56%というのは納得がいかないが、気温は23℃を下回った。10度ほど降下したことになる。汗ばんだ身体には寒いぐらいに感じる。

無事生還、おめでとうございます。貴重な体験だった。

目の前でボールがつぶれていく

高圧環境体験中の実験のようす。先端を封じた注射器がよい指標になる。

1気圧(差圧0気圧)
2気圧(差圧1気圧)
4気圧(差圧3気圧)
3気圧(差圧2気圧)
断熱膨張で霧が発生
1気圧(差圧0気圧)
もとにもどった

しんかい6500見学

稼働率の高いしんかい6500にお目にかかれるチャンスはめったにないが、運良く整備中の本物にめぐりあえた。


整備棟の前にシートピア計画で実際に使った潜水実験施設が展示されていた。'69年から静岡県沖で開始された飽和潜水海底居住実験で、'74年には水深100mでの居住に成功している。

これが深海6500の実機である。明日からの航海に備えて整備が完了したところだ。全長9.5m、高さ3.2m、空中重量は26tである。

マニピュレータとグラバを装備した前部。丸い窓のついている直径2mの球部が乗員3名を収容する耐圧殻。6500mの深海でも耐圧殻内は1気圧の常圧だそうだ。

後部の主推進器。しんかい6500は水平・垂直スラスタとこの主推進器により、6500mの深海で自立航行ができる。世界一の性能を有する潜水調査船だ。

ビデオカメラ・スチルカメラと闇の深海底を明るく照らし出す照明装置。電源はもちろん蓄電池だ。

耐圧殻の窓ガラス。厚さ14cmのアクリルでできている。円錐台形をしていてすぼまっている方が内側。水中でうまく視界がとれるように設計されている。

導体中央の穴は蓄電池が格納される空間である。出航に備えてただいま充電中。茶色いブロックがぎっしり詰め込まれているが、これは浮力材。ガラス微小中空球を樹脂で固めたシンタクチックフォームという素材でできている。

上部の搭乗ハッチ。入り口も内部もいかにも狭そうだ。この中で最大8時間にも及ぶ潜水調査を行うのはさぞ苦痛だろうと思う。ちなみにトイレは・・・ない。

高圧実験水槽


水深15600m(もちろんそんな深い海は実在しない)相当の水圧を作り出すことのできる高圧実験水槽の制御盤。深海で使用する各種装置の試験に使う。

おなじみ、水圧でつぶれたカップヌードルの容器。常圧から15000m相当圧までずらりと並んでいる。6500m相当圧のものをお土産にいただいてきた。カップは日清食品から新品を提供してもらっているとのこと。

展示館


展示館は常時一般公開されている施設だ。しんかい2000のコックピットの実物大カットモデル。深海底で採集された珍しい生物の標本なども展示されている。

しんかい6500(下)、無人探査機かいこう(ランチャー(左)、ビークル(右))の1/2モデル。かいこうは母船かいれいからケーブルで懸垂され、1995年、マリアナ海溝の最深部10911mに達した。

ROV実習


実習用の小型ROV(RemotelyOperatedVehicle)。テレビカメラを搭載し、有線遠隔操作でスラスタを制御しながら海底散歩が楽しめる。

センターの前の岸壁から海におろす。長さ1mほどの小型潜水機だ。

これがリモートコントローラ。目前のモニタでテレビ画像を見ながら、右手のジョイスティックで方向を、左手のダイヤルで深さを調節して航行する。魚や貝が観察できた。


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