例会速報 2000/12/13 慶応義塾高等学校


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ケヤキの落ち葉 喜多さんの発表

 慶應日吉キャンパスのケヤキの葉が木枯らしに舞うのを見ていた喜多さんは、それらの多くがくるくると見事に回転しながら落ちてくるのに気がついた。回転するものは写真のように複数枚の葉がついた枝で、中心に実がついている。子孫を残すための植物の知恵なのだろうか。こんな形のものがよく回転するというのも意外な感じだ。

米村さんのデジタル原理ロボ 右近さんの発表

 ロボット展覧会ROBODEX 2000を見学にいった右近さんが、会場で仕入れてきたお土産は、¥2000のプログラマブル自走ロボットのキット。天板の円形プログラムシートをフェルトペンで塗りつぶしてプログラムを書く。このシートがモーターで回転すると本体に仕込まれた2個のCdSが透過光をキャッチして、左右の車輪を駆動するモーターを制御する。単純な仕組みだが、原理がむき出しで、子供でも手作りロボットの楽しみを味わえる。ペンを取り付けて紙の上を走らせると、プログラム通りにパターンを描いていく。

 

開管共鳴 喜多さんの発表

 開管の気柱共鳴に使える手軽な素材を求めていろいろ工夫した結果を披露してくれた喜多さん。ボール紙の筒、トラペンシートを丸めたもの、上質紙を丸めたものなどいくつかを示して「どれが一番よく共鳴するか」というクイズを出題した。解答はさまざまに割れたが、意外にもトラペンシートを丸めたものがよく共鳴した。二つ重ね合わせてスライド管のような構造にしておくと、長さが自由に変えられるので便利だ。

 

人が乗れるセブン・ブリッジ 車田さんの発表

 以前の例会で喜多さんが開発したアーチ橋のモデル「セブン・ブリッジ」を、車田さんがデモ用に大型化して人間が乗れるようにした。素材は同じく発泡ポリウレタンで、台座には滑らないように紙ヤスリが敷いてある。片方に全体重を加えてもつぶれなかった。

 

光の屈折の実験 大谷さんの発表

 中学の光の単元で使える手軽な演示。カップヌードルの容器の底の中心に目印をつけておき、水を入れたものと空のものを並べて斜めから見下ろす。角度を選ぶと水入りの方は底の目印が見え、空の方は見えない位置がある。この状態で水を他方の容器に移すと状態が逆転する。よくある実験でもちょっとした工夫で格段にわかりやすいものになる。

 

レンズ効果説明用ビン 小河原さんの発表

 左は食用油にガラスを沈めると屈折率が近いのでほとんど見えないというおなじみの実験。ところでこの実験では生徒はしばしば中のビーカーの壁面の延長線上を探して「なるほど見えない」と誤解する。本当は容器が丸いので、レンズ効果で沈んでいる部分のビーカーの壁面はかなり外側にずれている。その辺を注意深く見ればかすかに境目は見えるのだ。水入りビンのレンズ効果を示す身近な例には、ワンカップ大関やズーラシアのペットボトル飲料などがあるが、小河原さんが紹介してくれたのは「磨美人」なる焼酎のボトル。右が水入り、左が空ビンである。収差も計算されているようで、周辺までかなりフラットに見える。

 

ミニminiラーメンカップ 小河原さんの発表

 海洋科学技術センターの見学記念品としておなじみの、高圧実験水槽で押しつぶしたラーメンカップ。左側の写真で一番右が標準サイズ、中央がそれを6500m相当圧で圧縮したもの、左端はminiカップを同様に押しつぶしたもの。ままごとの道具みたいに小さい。でもやっぱり大きいものがつぶれた方がインプレッションが強いね。

 

抵抗率の温度変化Part2 小河原さんの発表

 右近さんの綱引き実験でも使われたタミヤのタンク製作キットのモーター駆動回路に白熱電球(ガラスを割ってフィラメントをむき出しにしたもの)を直列に組み込んだ。走らせながらタングステンフィラメントを火であぶると走行速度がぐんと落ちる。金属の抵抗率が温度とともに大きくなることを視覚的に示す実験だ。

回る浮沈子製作実演 市江さんの発表と高杉さんのお手本

 このところ科学部の生徒と回る浮沈子づくりに凝っている市江さんが、ガラス細工での浮沈子づくりのコツを披露してくれた。ハンディトーチバーナーとるつぼばさみでガラス管を引き延ばし、ひねって作っていく。


 これを見ていた化学専門の高杉さんが、「そんな手つきじゃだめだよ」とその場でお手本を示してくれた。鮮やかな手さばきに一同感動。できあがった浮沈子はよく回るが、空気量の調節がなかなか難しい。さらに1本足ではぐらつきが目立ってぎこちない。やはり2本足にしたいところだが、工作は飛躍的に難しくなり手間もかかりそうだ。

 だからこそドイツのオリジナル品は高価なのだろう。手間ヒマがかかるのである。

 

手作り赤道儀 市江さんの紹介

 市江さんが顧問をつとめる鎌倉学園科学部の生徒諸君が「やってみよう何でも実験」に登場した。アマチュア天文家の平川氏が実験名人となって簡易赤道儀を工作し手動ガイド撮影で天体写真を撮ろうという企画だ。例会では番組の撮影に使われたハンドメイド簡易赤道儀の実物が披露された。

 回転軸を天の北極に向け、日周運動にあわせてカメラを乗せたプレートをゆっくりと回転させていくという仕組みだ。もちろん押しねじの単位時間の回転量は計算によって決めておく。これで天の川もバッチリ。

炎色線香花火 水野さんの発表

 線香花火を作る要領で火薬に銅、リチウム、ストロンチウムなどの塩を混ぜて色をつけようという試みであるが、確かに炎に色はつくものの本物の線香花火のようにパチパチとはいかない。ボッと燃え上がって一瞬で燃え尽きてしまう。まだ改良の余地がありそうだ。「原理的に無理」との声もある。

光の波動論からレンズの公式を導く 右近さんの発表

 Advancing Physics ASの記事の紹介である。凸レンズを光波の波面に「1/fの曲率を加える素子」と位置づけると、レンズの結像公式がきわめて直観的に導ける。凹レンズは逆に「−1/fの曲率を加える素子」と考えればよい。曲率という概念は高等学校では学習しないが、幾何光学での三角形の相似を使って照明する方法に比べるとずっとスマートで魅力的だ。

建物の固有振動数 小河原さんの発表

 鳥取県西部地震では大きな震度の割に人的被害や家屋の倒壊が少なかった。地震波のフーリエ成分や建物の固有振動から、その理由を考えようという探求授業を行っている。例会の席の討論では、新聞記事にある岩盤の固さはフーリエ成分には影響しないのではないか、地盤が弱く地震波速度が遅いところでは波が渋滞することによりエネルギー集中が起こるのではないか、家の倒壊を単純に共振現象で片づけてよいのか、などの疑問が提起され、継続課題となった。

アインシュタインの「ペニー」 大谷さんの発表

 ニューヨークのサイエンスホールでは、コインを入れるとそれを押しつぶして写真のようにアインシュタインの肖像を刻印してくれる機械が設置してある。日本ならさしずめメダル刻印機というところだが、本物の硬貨を加工してしまうところがすごい。むろんわが国では硬貨の加工改造は違法である。

二次会 日吉駅前浜銀通り龍竹酒家にて

 二次会には18名が参加。いつののように龍竹酒家に集う。20世紀最後の「忘世紀会」となった。きたるべき21世紀にカンパーイ!!


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