例会速報 2001/03/14 県立城郷高等学校


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変形電気パン  小林さんの発表

 ホットケーキミックスを牛乳パックに入れ、ステンレス電極を差し込んで、交流100Vを加え、パン生地自身が発するジュール熱で焼き上げるというおなじみの「電気パン」の実験。普通は平行に向き合った平面電極2枚で行う。

 小林さんが授業で生徒にやらせたところ、ある生徒から「牛乳パックの他の2面も電極にしたら、もっと早く焼けるのではないか。」という提案を受け、さっそくその生徒と共にやってみることにした。生徒のこういう発想は大切にしたい。

 さて、実際にやってみると予想に反してパンはうまく焼けない。そればかりか写真のように鞍形の奇妙な曲面ができあがった。左右のコーナーは盛り上がって焼け残る。くの字に折れ曲がった電極のため、電界が一様ではなく、ムラができるのだ。電極どうしが接近しているところは大きな電流が流れ早く焼けてしまう。逆にへこんだ部分はなかなか焼けないというわけだ。

 話はまだ続く。こうして焼けた鞍形のパンを取り出してみると、底部に対角線に沿って焦げ筋ができる。小林さんが見せてくれたビデオ映像にこの線が映っている。ちょうど両電極の中間点に当たる面に沿って焦げるらしい。この焦げはなぜできるのだろうか。

 例会での議論はこうだ。左図は焼きはじめのある瞬間の電気力線または電流線(黄)と等電位線(赤)を表す。たぶん、電極が接近している部分の電流密度が高くなっているだろう。ここがまず焼き上がり、電流が流れなくなる。すると右図のように電流の流路は狭められていく。このとき電極付近にくらべ、中央付近が常に電流密度が高い。焼き上がった部分は中央をめざして成長していき、焦げて絶縁壁を作り電流を遮断する。まだ焼けていない生地は右下左上の角に押し出され、そのまま焼け残る。
 こんなシナリオがその場の結論だった。

 小林さんは写真のような三角形に配置した電極でも試してみた。これも折れ曲がった電極の角のところが焼け残る。いろいろなバリエーションを試してみるのもおもしろそうだ。一人の生徒の素朴な発想からの発展だった。

平行平板コンデンサー 右近さんの発表

 前に右近さんが紹介してくれた、秋月電子のポケットマルチメーター(P−10、¥2100)は小型・安価ながら、周波数や電気容量も測れるスグレモノだ。YPCではちょっとしたブームになっている。
 さて、金属円盤2枚を向かい合わせただけのコンデンサーのモデルだが、その容量がナノファラッドオーダーでちゃんと計測できる。極板間距離を変えるとちゃんと容量が変化するのがわかる。リニアリティはあまりよくないが、定性的な演示には使えそうだ。

 大型はく検電器に電荷を与えてはくを開かせ、平行平板コンデンサーを接続する。極板間距離を狭めて容量を増すと、コンデンサー側に電荷が移動していき、はくが閉じていく。

 

感音炎 右近さんの発表

 ものの本には、ろうそくの炎が音でゆれるようなことが書いてあるが、炎はそう簡単にはゆれないと右近さんは指摘する。チンダルの感音炎の実験装置はガスのノズルの下に太鼓の皮のような膜を張った容器があり、音圧によってふきだすガス量が微妙に変わるようになっている。さらに、ガスの流量を調節して、炎が吹き消える一歩手前のクリティカルな状態を作って実験しないと炎が踊ってくれないという。

電磁波の速度測定 右近さんの発表

 右近さんは200mもの同軸ケーブルを買い込んで、AdvancingPhysicsASにある実験の追試を行った。発信器で生じた電気振動を同軸ケーブルに送り込み、他端で受信する。送信信号と受信信号を2現象オシロで比較し、位相のずれを測定すればケーブルの中の電磁波の速度がわかる。周波数は330kHzを使用した。
 両端で測るのではなく、一端から矩形波パルスを送って、同じ端子で反射パルスを受信する方法もあるという。この場合、他端がオープンなら自由端反射、ショートなら固定端反射が観察される。

回る浮沈子・お手軽版 車田さん・高杉さんの発表

 奥野さんのキュウリのたれビンにならって、子供向けにクマさんのたれビンで浮沈子を作ったところなかなか成績がよい。口は接着剤で封じ、足としっぽの出っ張りにそれぞれ横向きに針穴をあけてトルクを生み出す。検尿用の容器でも作れる。このときは回転がわかるように容器に油性マジックで絵を描くとよい。

 

 高杉さんも回る浮沈子の新ネタを持ち込んだ。飛行機の機内食で出たというねじれた形のしょうゆビン。浮沈子にして上下させると、何もしなくても回る。これは噴流形ではないので、ホバリングして回転することはできない。

 YPCでは浮沈子といえば回転するのが常識になりつつある。

大人向け科学教室の提案 天野さんの発表

 大和市林間学習センターの天野さんは、地域の「お父さん」を集めて子供向け科学実験の伝達講習会を企画しようとしている。大人に実験技術を身につけてもらい、地域の理科教育力を高めようというねらいだ。このコンセプトに共鳴し、YPCとして全面協力することになった。6〜7月の偶数週の土曜日に、中央林間の学習センターで開催の予定。

北欧土産 宮崎さんの帰朝報告

 ノルウェーのトロムソにオーロラ見物に行って来た宮崎さんの帰朝報告があった。

 宮崎さんが示しているのは、夏の北極圏の白夜・沈まない太陽の絵はがき(左)。星座早見盤(下左)も北極圏ではずいぶん丸い。北極点では早見盤はいらない道理だ。

 ノルウェーの200クローネ札(下右)には地球のプラズマ衝撃波面を図案化した蛍光すかしが入っていた。ブラックライトで光る。肖像の人物はKristian Birkeland(1867-1917)。物理学者、オーロラの研究者で実験室でオーロラを再現した。

 本命のオーロラについては宮崎さんのWebページに宮崎さん自身が撮影した写真がアップされているので見に行こう。


サーモクロミックペンワンダーカラー 高杉さんの発表

 温度で色が変わる色素を使ったマーカーペン・ワンダーカラーが「今だけもらえる!」。

 パイロットの0.3mm激細ボールペンHI-TECH-Cの二本組セット¥400におまけで付いてくる。マーカーペンの方は非売品である。

 オレンジと緑の2色があり、10〜15℃を境にいずれも黄色に変色する。冷やせばまたもとの色に戻る。ケシゴムなどでこすると摩擦熱で変色する。なにか実験での使い道はないだろうか。

ワンカップ 喜多さんの発表

 清酒ワンカップ大関のラベル裏のデザインはシリンドリカルレンズ効果を意識して印刷されている。すなわち、お酒が入っているとき正しい縦横比で見えるように仕組まれている。気泡があるとその部分だけ凹レンズになるため、ちょっと面白い効果が見られる(写真右)。


 PETボトルに水を満たして、シリンドリカルレンズの効果を確かめることができる。左の二重円は実は細長い楕円である。一見正しく見えるドラエモンはもとはどんな形かわかるかな?


二次会 新横浜駅前「北海道」にて

 前回、二部屋に分けられて「身分制度」問題が再燃したいわくつきの酒場だが、今回は大きな部屋で全員一堂に集まって飲むことができた。このあと2次会だけ合流したすずりょうさんを入れて15名が参加。それぞれの職場事情など、ここでしか話せないオフレコの話題で盛り上がった。


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