例会速報 2001/05/16 慶應義塾高校


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食塩の結晶 山本の発表
 冷蔵庫の中に長い間放置されていたパック醤油の小袋の中に、見慣れないきれいな六角形の結晶が育っていた。醤油から見えるほどの結晶になるとすると、食塩以外には考えられないが、おなじみの立方晶とは形が異なる。いったい、この結晶の正体は何だろう。

 理化学辞典などを調べてみると、塩化ナトリウムは0℃以下で二水和物を作るらしい。その結晶系は単斜晶系になるという。


 さっそく飽和食塩水を冷蔵庫の製氷室に入れ、数日かけて結晶を育成してみた。ビーカーの底には確かに六角形を基本にした平たい結晶が育つ。同じ母液を室温に置くと、見慣れた四角い結晶となるのと明らかに異なる。育成温度で異なる結晶になるのだ。

 このうちの一片を取り出して偏光顕微鏡下で観察したのが下の写真。右は左の状態から45度回転したところである。立方晶(等軸晶系)ならばクロスニコルでどんな角度に回転しても結晶は真っ暗なままだが、この結晶ははっきりと消光する。つまり、結晶系はあきらかに立方晶系ではないのだ。

 なお、この結晶は0℃以上に置くと結晶水を手放して自己潮解する。観察時も冷却をし続ける工夫が必要だ。


  

ルービックキューブのしくみ 車田さんの発表
 かつて一世を風靡したパズル「ルービックキューブ」は今も根強い人気を保つ。3×3×3が元祖だが、写真のように4×4×4の「リベンジ」や2×2×2のものもある。解き方はともかく、その構造はどうなっているのだろう。だれでも抱く素朴な疑問に車田さんはストレートに答える。分解してみればいいのだ。

 下は元祖ルービックキューブを分解したところだ。右の写真が基本構造で、各面中央を貫く三本の回転軸があり、面心のコマがおさえになっている。


 

 4×4×4のリベンジは面心にコマがないので、おなじ構造をとることができない。体心に溝をもった球体があり、面心の4コマがこの溝にはまるようにしてスライドする。外側のコマは中の4つのコマに押さえられて球面上を滑り動くような構造だ。こういうものを考える人はエライと思う。
  

ロボフェスタのCD 車田さんの発表
 先だって開かれた青少年センターのこどもの日大会で無料配布された「ロボフェスタ2001」のプロモーションビデオCDである。その冒頭のMPEGムービーに、ビー玉スターリングエンジンが登場する。大きなストロークでなかなかよく動く。ロボットよりももっぱらこちらのほうがYPCの目を引いた。
  

エイムズの部屋 車田さんの発表
 部屋の中に置かれたカップヌードルの容器。同じ大きさだがなぜか右のものはゆがんでいる。実は右のは海洋科学技術センターのお土産で、高水圧で圧縮されたもの。上から見るとこんなに大きさが異なる。それが同じ大きさに見えてしまうのは錯視のせいなのだ。
  

回る浮沈子フィッシングバージョン 市江さんの発表
 とどまるところを知らない「回る浮沈子」開発競争はついにここまできた。ドイツの元祖「回る浮沈子」を最初に紹介した市江さんの執念の逆転打だ。

 浮沈子の下部にゼムクリップを加工したかぎ針をとりつけ、底に沈んでいるターゲットをつり上げるのだ。回る浮沈子だからこそできる究極の技だ。鎌倉学園の生徒の発明だという。後世畏るべし。当然、重いと浮かないのでターゲット選びも大切。 

パラボラ 黒柳さんの発表
 これは何でしょう、と問われれば「扇風機」と答えたくなるのが人情。しかしさにあらず。なんとこれは「ストーブ」なのだ。名付けて「ハロゲンセラミック遠赤外線ストーブDW−803」。韓国製で発売元は株式会社万雄。特価¥8000なり。中央に右の写真のようなヒーターがあり、背面の放物面鏡で熱線を反射するしくみ。扇風機のフレームを転用しているので、ご丁寧にタイマーや首振り機構までついている。
  


 これだけでも十分面白いのに、黒柳さんはなんと同じものを二台用意。一台はヒーターをはずして集光器とした。向かい合わせにして、赤外線を集める実験をやろうというわけだ。はたして、焦点のところにサーミスタ温度計を置くと、たちまち100℃以上の温度に・・・。なかなかインパクトの強い実験だ。
  

青少年センターこどもの日大会 宮崎さんの報告
 5月5日、青少年センターではこどもの日イベントが開かれた。YPCからは黒柳さんのほか、渡辺さんも賛助出演し、各種の実験ショーを披露した。写真はそのときの実験用具の数々。中村理科の燃料電池の姿も見える。 

中村理科の真空実験キット 山本の紹介
 中村理科の新製品、選択理科実験シリーズ「真空実験キット」C15−6054を試用してみた。生徒用の自作実験教材である。

 キットの内容は左の写真の通り(風船は付属しない)。ディスポーザブル注射器にゴム弁を取り付けて真空ポンプを作る。ジャム瓶のようなもので真空容器も自作する。真空チューブや吸盤も付属している。これで各種の減圧膨張、真空沸騰、雲を作る実験などの真空実験を行うことができる。

 注射器真空ポンプは高松高専の矢野淳滋先生が開発されたものの改良版のようだ。注射器の内側に弁を取り付ける部分が多少コツがいる。組み立て説明書には接着剤で貼り付けるよう指示があったが、むしろ真空グリースやワセリンなどを使う方がよいようだ。工作のやり直しがきき、気密も良くなる。

 テストしてみたところ、真空容器内の気圧は0.1気圧以下まで到達し、風船が大きくふくらんだ。この真空度はハンドポンプ式の真空ポンプより好成績だ。付属の吸盤を空き缶にかぶせて吸引すると、数回ピストンを往復するだけでアルミ缶はぺしゃんこにつぶれた。

 4個セット定価¥4900を高いと見るか安いと見るかは意見の分かれるtころだと思うが、細かい材料調達の手間と費用を考えると、決して高い買い物ではないように思う。最初、生徒に作らせてそのまま学校の備品にし、班別実験に使うという手もある。 

 

プリンタの耐振設計 乙訓さんの発表
 民間会社にお勤めの乙訓さんが、プリンタなどの機械の動作に伴って生じる振動を抑制するのに、設計上どのような工夫をするのかを解説してくれた。共振しないように、いかに固有振動をはずすかで苦心するが、そこでは高校物理の教科書にも載っているような知識が実際に活用されているのだ。ハネナイトボールでおなじみの非弾性ゴムも解決策のひとつだ。

 家庭用の洗濯機なども同じ課題を抱えている。濃い食塩水を使った流体バランサやダイレクトドライブ方式モータなどが採用されている。身近な器具も振動をさけるために目に見えないところで工夫が凝らされているのだ。

測る君の分解 平松さんの発表
 放射線検出器の「はかるくん」のことではない。百円ショップで売っている、バッテリーチェッカーの話だ。百円なら分解してみようという気になる。内部は予想通り抵抗と電流計だけ。数オームの抵抗に電流を流してその両端の電圧を測定している。ばらして調べるという使い方で、直流回路の教材として利用できるかもしれない。
  

中国コマ即売会 平松さんの販売活動
 平松さんは、前回自身が実演して見せてくれた中国コマ(ディアボロ)を中華街で買い占めてきて、原価で分けてくれた。YPCメンバーはこうやって助け合ってコレクションを増やしていくのである。 

ランドマークタワーのエレベータ 喜多さんの発表
 神奈川一の高層建築、横浜みなとみらいのシンボル「ランドマークタワー」。その展望台への高速エレベータは267mを40秒足らずで昇る。喜多さんは、エレベータ内にある速度表示をビデオ取材してv−t図を作り、その面積を計算してエレベータの運動距離を求めてみた。結果は268mと良い一致を見た。等加速度運動の教材にいかが?
  

i-modeで気象観測 鈴木亮太郎さんの発表
 慶應義塾湘南藤沢中高(SFC)では、i-mode、EZ-WebおよびJSkyWebに対応したリアルタイムの気象情報提供サービスを行っている。SFCの現在の気象データとライブ映像が携帯端末で入手できる。

i-mode版: http://earth.sfc-js.keio.ac.jp/i/
EZ-Web版: http://earth.sfc-js.keio.ac.jp/cgi-bin/ez/
JSkyWeb版: http://earth.sfc-js.keio.ac.jp/j/

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臺灣土産 鈴木亮太郎さんの発表
 連休に台湾に行って来たすずりょうさんのお土産は、台湾の科学漫画。日能研編集の国内出版の中訳版である。2冊で読み比べれば物理と中国語が同時に学べる? 

八景島土産 奥野さんの発表
 奥野さんが八景島の土産物売り場で仕入れてきたのは、砂時計ならぬ液時計。スライム状の粘りけのある液体がとぐろを巻きながらおりてゆく。色もきれいだ。 

科学・学習の店頭販売 奥野さんの発表
 学研の科学と学習が、今春から書店などの店頭でも販売されるようになった。年間購読していなくても、ほしい付録の付いている号だけ単品で購入できる。小学校各学年用が毎月出版される。要チェックだ。 

二次会 東横線日吉駅前浜銀通り「龍行酒家」にて
 13名が参加。そろそろ「暑気払い」といえる陽気になってきた。お疲れさま、かんぱーい。

 ところで、この店には数年前から世話になっているが、今までずっと店名を「龍竹酒家」だと信じて疑わなかった。しかし、今回実は「龍行酒家」が正しいということが判明した。看板の崩し字の読み間違いなのだが、何年間も誰も気がつかないとは・・・失礼!これまでの速報も誤っていたので、お詫びして訂正する。


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