例会速報 2002/11/16 慶應義塾高等学校


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The Making of SPEED 山本の紹介
 2000年4月例会で小河原さんがパニック映画「SPEED」のバスのジャンプを解析して教材としていた。そのときの例会ではバスの飛び方がおかしいのでクレーンで吊っているのでは?という結論だった。先日、BookOffでそのメイキング版LDを百円で入手した。それによると、この映画では同じ型のバス12台を使って、実際に走行させながら撮影を行っており、件のジャンプシーンも、実物のバスを使ってスタントを行っていることが判明した。姿勢が不自然なのは、踏切台のようなものをつかって跳び上がったためである。映画では高速道路のとぎれた部分を飛び越えるのだが、そこは映像処理でバスの部分だけを切り抜いて背景と合成している。
 

写真が写せて現像ができるピンホールカメラ 山本の発表
 実際に写真が写せて、日中明るいところで現像処理までできる実用的なピンホールカメラである。百円ショップの黒い弁当箱などを利用して作る。感光剤は白黒印画紙を使う。工夫したのは現像タンクと兼用するしくみで、箱の底に穴をあけてゴム管を接着してある。ここから現像液や定着液を流し込んで、撮影したその場でカメラ内で現像処理をしてしまう。印画紙は、事前に暗室や暗箱内でセットしておく。

 晴天時室内での撮影例。この撮影には、使い捨てカメラから
取り出したプラスチックレンズを使用している。露出15秒。
現像1分、定着2分で、5分水洗してできあがり。写真はネガになる。

 工作が面倒という向きには、こんな装置はいかが?同じく百円ショップで売っている黒い小物入れの仕切り板を黒マジックで塗りつぶしておく。底には写真のように印画紙を仕込み、上からアルミホイルや黒い紙でふたをしてセロテープで密封する。撮影開始時に針でつついて穴をあけ、終了時には黒ガムテープで閉じる。現像液や定着液は注射器で注ぎ込み、穴はすかさず黒ガムテープでふさぐ。

 上記の簡易装置での撮影例。晴天時屋外を0.5mm径のピンホールを
あけて撮影した。露出5秒。
 左側の黒い部分は薬液注入時の感光部。黒く塗った仕切り板の効果が
わかる。

 PDF版の資料はここをクリック。


 例会での撮影風景。
「はい、穴をあけますよ。20秒間息を止めて動かないで。」

水が跳ねる・自然に拡がる表面 岩沢さんの発表
 塗料会社にお勤めだった岩沢さんが、固体表面の濡れ特性の制御について、さまざまな実例を示して紹介してくれた。
 固体の濡れ性は固体全体の組成とは関係なく、表面の化学的性質と物理的形状で決まる。固液間の濡れやすさは接触角という角度(固液界面と気液界面のなす角)で表される。この角度が小さいことを「濡れる」といい、90度より大きい場合を「はじく」という。左の写真は塗料で形成した超撥水膜で、水との接触角は150度にもなる。接触する水は水玉になってころころところがる。このような塗料は、着雪防止や汚れ防止の塗膜として利用される。
 撥水性の評価は動的にも行われなければならない。右の写真のように簡単な装置で「滑り角」を測定することで、滑り性が評価できる。表面上の水滴が動き出すときの斜面の傾きを測ればよい。これなら生徒にもできそうだ。

 こちらは超親水性塗膜により極めて濡れやすい表面を形成した例。まるでしみるように水が拡がっていく。さまざまな方法により、表面に水酸基を多数形成させるのだそうだ。固体表面で水和をおこすわけだ。このような塗料は曇り止め処理やラジエータのアルミフィン材などに利用される。

ダイソーの銅箔テープ 山本の発表
 ダイソーに登場した「銅箔テープ」なる商品。その名の通り銅箔の裏に粘着剤を施したテープである。アルミやステンレスのキッチンテープとちがって、はんだが使えるのがメリット。木材、紙、ガラス、プラスチックなどの絶縁材料に貼り付けて、はんだ付けで回路を形成することができる。右の写真は塩ビの下敷きの上にテープを貼り、電池ホルダやLEDをはんだ付けした回路。スイッチ部分はハトメで止めて動くようにしてある。大きな演示用の装置を作るのにもってこい。太さいろいろ、一巻き数メートルで百円。これはGETだ!
 

メロディガンと光スピーカー 山本の発表
 銅箔テープをつかった作例の一つ。右の「メロディガン」は電子メロディICの出力を高輝度LEDで光信号にして飛ばす光送信機である。レンズで平行光線にして射出する。電池ホルダをグリップにして、ピストル型にしてみた。
 左は「光スピーカー」。紙コップに圧電スピーカをはりつけ、フォトトランジスタで駆動する光受信器である。メロディガンの信号を受信するとコップからメロディが聞こえてくる。
 回路はいずれも中部大学工学部の岡島茂樹先生から教わったものを採用している。部品点数が少ない割りに性能がよい優れた回路だ。

 下の写真に銅箔テープで紙筒や紙コップの上に回路を構成しているようすを示す。

 

 送受信のようす。焦点をちゃんと合わせれば、10mぐらい離れても信号を送受信できる。光スピーカのフォトトランジスタは赤外線にも感じるので、赤外線リモコンの信号を音で聞くこともできる。

波の実験アイディア求む 大谷さんの問題提起
 波や弦の振動をダイナミックに見せたい大谷さんは、いろいろな材料を物色中。ビニールの縄跳びひもだと、減衰が著しくて弦の振動らしくない。細いつる巻きばねも中央がたるんでしまってイマイチ。何かいい方法はないですか?

輪ゴムのギター 大谷さん、鈴木亮太郎さんの発表
 板目紙にギターの絵を描いて、輪ゴムをかけただけのチョー簡単弦楽器。板目紙をたわませて音程を変える。右はすずりょうさんが見せてくれた一弦琴。紙コップの共鳴器とつまようじのフレットつき。
 

ダイソーの生物教材 大谷さんの発表
 百円ショップ・ダイソーは理科教材の宝庫だ。中学の生物分野で裸子植物の例に大きな松ぼっくりのオーナメント。右は立派なプラケースにおさまった葉脈標本。10枚入りで百円ならわざわざ作るより安いかも。
 

「一様な電界」の実験 徳永さんの発表
 教科書実験の発展型として行った予備実験。目玉クリップと大きさの違う導体紙を使って、一様な電界を作り、デジタルテスターと指針式のテスターで電位差と距離の関係を調べた。
 電位差と距離は比例関係になるが、デジタルテスターの結果と比較すると、指針式のテスターは内部抵抗の影響が出て傾き(電界の強さ)が小さくなった。特に、導体紙の面積が小さい場合はその影響が効いてくることがわかった。

音波シミュレーション入門 山本の紹介
 都立戸山高校の吉澤純夫さんがこのほど出版した「音波シミュレーション入門」(CQ出版社)\2500。VisualBasicで物理がわかる・シリーズの3作目だ。前作に続き、物理を題材にしながらVisualBasicのプログラミングを学ぶという趣旨の本だが、作品のプログラムは付録CDに収録されており、そのままシミュレーションソフトとして使える。音声のサンプルファイルや、実験のようすを収録した動画ファイルもたっぷりついていて資料的価値もある。特に日光の本地堂(薬師堂)の「鳴き竜」の取材ムービーは必見。
 付録CD-ROMには、吉澤さんのオリジナルソフトの他、YPCでもおなじみの「野津FFT」も収録されている。

音声の鑑定 鈴木亮太郎さんの発表
 その「野津FFT」による音声スペクトルの解析例。周波数測定倍音構造の観察などが手軽にできるスグレモノのソフトだ。すずりょうさんは、ビンラディン師の声紋分析などの時の話題も取り入れて、生徒の興味を喚起している。

島津のCD−ROM 右近さんの発表
 右近さんは田中氏のノーベル賞受賞決定の直後に島津製作所の「島津創業記念博物館」を訪れた。CD-ROM「科学の森」\1000は子供向けの仕立てだが、資料的価値が高い。わが国初の気球有人飛行の記録が興味深かった。熱気球ではなく水素気球だったのだ。なお、このCDやパンフ(右)には、まだ田中氏のノーベル賞については一言も触れられていない。まもなく、改訂版が出ると予想されるので、この旧版は入手できなくなり、レア物として価値が出るかも(^O^)。
 

喜多式剥離帯電実験用缶 徳永さんの発表
 剥離帯電の実験で使う器具の工夫である。缶の取っ手をプラスチックものさしで作り、クッション付きの超強力両面テープで上蓋に固定した。ラップを缶から剥がす時に勢いよく剥がすことができるので、強度的に問題のあるストロー式よりも帯電量が稼げる。
 加えて缶の側面を全てラップで包めるので、密着がよくなり成績がアップする。実験の結果は、いずれ報告されるという。

小柴先生の本と科学博物館の色紙 徳永さんの紹介
 ノーベル賞受賞の直後に出版された本、第一号。小柴昌俊著『ようこそ ニュートリノ天体物理学へ』(海鳴社、520円)2001年度に行われた仁科博士記念科学講演会の講演録をもとに加筆した本のようだ。講演に使われたOHP?がカラーで入っていて、高校生以上向け。
 右は上野の科学博物館の企画展「ノーベル賞受賞記念コーナー」に置いてあった色紙のコピーをもらってきた。スーパーカミオカンデが出来るまでの様子を撮ったビデオ(東大宇宙線研編集、岩波映画)を会場でみることができる。光電子増倍管の実物や、田中さんの受賞論文が載っている雑誌『質量分析』も置いてあった。
 

ビー玉スターリングエンジン 加藤さんの発表
 例会の当日、山梨県立科学博物館の講座で制作してきたというスターリングエンジン。注射器とビー玉を使ったタイプで、YPCでもおなじみだが、ジョイント部分や支点などに細かな改良点も見られる。

ダイソーのネオジム磁石 小沢さんの発表
 百円ショップ「ダイソー」についにネオジム磁石も登場。サイコロ型の「クリアマグネット」や「蓄光マグネット」を分解すると、百円で2個のネオジム磁石が手に入る。ちょうど、簡易無接触電流計に使えるサイズだ。二六製作所で買うより安いぞ。

二次会 日吉駅前浜銀通り「龍行酒家」にて
 12名が参加して今宵もカンパーイ!物理でストレスを解消し、アルコールでさらに学習効果を高めよう。え、普通じゃないって?・・・よく言われますね(^O^)。


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