例会速報 2005/03/12 横浜桜陽高校


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授業研究:中3の「エネルギー」 平松さんの発表
 平松さんは、授業研究のため、中3「エネルギー」の単元における授業を録画し、披露してくれた。

 先月の鈴木さんの授業をみて、自分もできるかな、と思っては見たものの、自分で見ただけでも反省点が山積、恥ずかしさを押し殺し例会で見ていただきさらなる指摘をいただき、大変にありがたかった、と語る。授業研究は自分の勉強になるのである。

 学年末ののこり僅かのところということで、かなり急ぎ足だったが、もっと生徒に問いかけるようにすることができないかという指摘や、内容的には演示実験だけではなく生徒実験を取り入れた方がよかったのではないかという意見もあり。有意義な評価会となった。

エネルギー保存則の演示 右近さんの発表
 ベニア板とカーテンレールで写真のようなコースを作り,鉄球を転がす。飛び出たボールの達する最高点の高さはどこか,と生徒に発問する。多くの生徒はこちらの思惑通り,ボールを転がした場所の高さと同じ,と答える。そこで,実験をやってみせる・・・
 右近さんはこんな風に授業を展開している。力学的エネルギー保存の法則を一通り学習したところでこの実験をやると効果的だ。

揺れる巨大水球(慣性の法則) 右近さんの発表
 19世紀を代表する英国スコットランドの物理学者ロード・ケルビン(ウィリアム・トムソン)は演示実験の名手でもあった。右近さんは、ケルビンが工夫した実験の中でも代表的なものを2つ紹介してくれた。
 まずは「揺れる巨大水滴」の実験。これは200ポンド(90.6kg)の水の入った巨大風船を割る,という豪快な実験。水の慣性により,風船のゴム膜が割れても,水はその慣性により一瞬その場にとどまる。後始末が大変なので,ケルビンはこれを一連の実験講演の最後に持ってきたとか。例会では写真のようなゴム風船を使ってそのミニチュア版を実演した。風船が割れた瞬間を肉眼で捉えるのは難しかったが,デジタルカメラは決定的瞬間をしっかりと捉えていた(鈴木健夫さん撮影)。
 

 

ケルビン発電器 右近さんの発表
 続いて有名なケルビン発電器。水滴が落下していくたびに電荷が蓄えられていく。以前紹介した振り子発電機や起電ポンプと同じ原理で,静電誘導を巧妙に使っている。右近さんは、これらの材料のほとんどを百円ショップで調達したという。
 その他,ケルビンゆかりの実験としてはスモークリング(空気砲の名称で米村さんが普及させた実験)や卵の回転実験(生卵とゆで卵を回転させ,生卵は一旦止めても回転を続ける,という実験),弾丸をつるしたサンドバックに命中させ,その運動量を求める実験(よく物理の問題集に載っているヤツ),などもあるという。いずれも著名だが、ケルビンがオリジナルだったとは知らない人が多いのでは?
 

ストローのこすり方 山本の発表
 大阪の山田善春さんが開発した「ストロー君」の静電気実験はすっかりポピュラーになった。ストロー(ポリプロピレン)を紙(セルロース)で摩擦すると負に帯電し、プラ消し(ポリ塩化ビニル)でこすると正に帯電する。ちょうどNS一対の磁極をもった磁石のように、「電石」が作れるわけだ。同じ物質が正にも負にも帯電できる好例で、引力・斥力を明確に示すことができる。
 さて、この実験の一つの困難は、プラ消しでこするときに消しカスがストローにつくと、正の帯電性能が著しく低下することだった。そこで、同じ塩ビでこするのに適した身近な素材はと探し求めた結果、ビーチボールが最適であることがわかった。100円のビーチボール1個から数十枚の塩ビシートを切り出すことができるので、きわめて経済的でもある。これでこするとストローは強力に正に帯電する。しかも、塩ビシートの方も電荷の保持性能がよいので負の帯電体として使用できる。

ブロックヘッド 加藤俊さんの発表
 加藤さんが台湾からのお土産として披露してくれたパズル。4つの木のブロックを四角い升にぴったりと入れるというものだ。一見何でもなさそうだが、これらの木のブロックは立方体ではなく、きわめていびつである。各辺は平行ではなく、稜の角度も直角ではない。一個一個入れていくと必ずつっかえて最後の一個がはまらないのだ。さてどうすればいいか。これはパズルだから答えはヒ・ミ・ツ(^^)。
 このパズルは島根県の匹見で開催された第2回パズルコンペでのグランプリ受賞作品で、デザイナーはアメリカのシカゴに住むビル・カトラーだそうだ。日本国内ではもう売られておらず、今回台湾製を見つけて買ってきたという。
 

サーモアムール 加藤俊さんの発表
 同じく台湾土産のハンドボイラー。エーテルのような揮発性の高い着色液が減圧したガラス容器に封入されていて、手で温めると上の容器に吹き上がる。ラブメーターなどの商品名でおなじみだが、こいつはちょっとアダルトなデザインである。写真を見れば解説は不要だろう。加藤さんのうれしそうな顔を見よ。
 

New Roller Ball 加藤俊さんの発表
 ジャイロ玩具&リストトレーナーとして有名な元祖「ダイナビー」。これはそのコピー商品の「ローラーボール」だが、目新しいのは蓋がはまっていて、糸ではなくラックギヤが刻まれた専用スターターが付属している。確実に回せる反面、指で初速を与えて回転させる高級ワザが通用しなくなった。

長い紙筒 黒柳さんの発表
 「これ何かに使えませんか?」と黒柳さんが持ち込んだのは2mほどの長い紙筒。体育館に敷くビニルシートを巻いていた芯だ。たくさんあるという。その場でさっそく気柱共鳴の実験が始まった。管の口のところで手を叩くと、長さに応じて「ボン」と響く音がする。こうやって叩くといいよと、脇でコツを伝授しているのは高杉さん。
 管の長さを調節すると楽器が作れるはずである。セットにした方が有効だろうということで、紙筒は幹事校の右近さんに引き取られることになった。

放射光の話 江尻さんの発表
 シンクロトロン加速器で荷電粒子を回転させるときに副産物として発生するシンクロトロン放射は、放射線の漏洩やエネルギーロスの要因として厄介者扱いされていたが、最近はこれを良質の高エネルギー光源として積極的に利用するようになってきた。それが「放射光」であり、それを得ることを目的としたシンクロトロンも各地に建設されている。
 江尻さんは、放射光発生の理論(J.Schwinger Phys.Rev.75(1949)p.1912)や放射光用シンクロトロンの仕組みなどについて簡単な紹介をしてくれた。

サウンドセンサとFFTによる音波の実験 山田さんの発表
 ファンクションジェネレータとPASCOのサウンドセンサーを使い、気柱共鳴の音を拾ってFFTにかける。倍音構造を示す明瞭なピークが見られる。写真は閉管の例。
 

ミラクルフルーツ 猪間さんの発表
 なめると酸味を感じなくなる不思議な木の実、ミラクルフルーツ。レモンをかじってもミカンのように甘く感じる。もうすっかり有名だが、難点は入手と保存が困難なことだった。猪間さんが紹介してくれたのは日本で初めてという、フリーズドライ化したミラクルフルーツ。これなら保存も利くし流通させやすい。口に含んでかまずに舌の上で転がすようにすると、生や冷凍の実と同様な効果を発揮する。これでずいぶん実験計画が立てやすくなった。
 価格は5粒入り1050円。入手方法はワールド・アグリ・エンタープライズのHP(http://www.w-agri.biz/)へ。
 

屈折って何? 古川さんの問題提起
 古川さんから次のような問題提起があった。光が屈折する理由を、ホイヘンスの原理などによらずにもっと直感的な表現で説明できないかというのだ。こういう素朴な疑問が実は難題であることが多い。例会出席の面々もその場で即答できず宿題となったが、正当がこういう質問をしてきたら、どう答えたらよいのだろう。以下、古川さん自身のコメントを掲載する。

 空気中から水中へ入射する光が屈折するように、光(電磁波)は光学的密度差があれば屈折します。でも・・・何故屈折するのか? 長い間疑問でした。『エネルギーを最短時間で目的地へ送るための最適ルートが屈折角を決める』という人もいます。でも・・・大自然が『最短時間』に拘る理由は何なのか?
 『最短時間』に拘らなければ、屈折せず直進しても構わないのではないか、とも思います。しかし、この大自然は大変合理的に構成されていますから、本課題に関しても必然的な理由があるに違いありません。どなたか教えて下さい。
 量子力学分野まで踏み込まなくてはならないのであれば、それ以上の追求は諦めざるを得ませんが。

台湾の本 加藤俊さんの発表
 加藤さんが台湾で仕入れてきた科学解説本の数々。お奨めは「不可思議的科学実験室」シリーズの本;「物理篇」「宇宙篇」「地球科学篇」「化学篇」「生物篇」それぞれ250台湾ドル(約日本の800円と日本の約半額!)・・・地球科学篇にはYPC例会でも話題になった立方体の氷を浮かべた時の氷の向きの例題も載っていた。
 写真の真ん中は本ではなく、故宮博物館で買ったマウスパッドで傾けると蝶が現れるもの。

音波の位相 山田さんの発表
 サウンドセンサやマイクを二つ用意して、スピーカーの前後で同時に音を拾い、二現象オシロに表示すると、位相が逆になっている様子がはっきりとわかる。マイクを同じ側にある距離離しておけば、その距離と位相のずれ方から音速を求めることができる。準備いらずですぐにでもできるお手軽実験だ。
 

二次会 戸塚駅前「北海道」にて
 14人が参加してカンパーイ!常連も初参加の人も分け隔てなくうちとけられる。やっぱり酒っていいね(^^)v。


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