例会速報 2005/04/16 筑波大付属高校


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授業研究:物理I力学の実験 小沢さんの発表
 高2物理Tの力学分野について、10種類の生徒実験のプリントが配布され、そのうちの「自由落下」の実験の様子がビデオで紹介された。
 小沢さんの授業展開では、まず運動記録テープを元に反射神経測定器を作らせる。次に、x-t、v-tグラフを描かせ、重力加速度の導出に発展させる。
 その後の討議では、方式やメーカーの異なる記録タイマーの特性を踏まえた重力加速度の正確な測り方、実験のさせ方などについて、参加者それぞれの手の内を披露し合った。スタイルは違うにせよどこの学校でも行なっている実験なので、活発な意見交換ができた。

金属斜面を転がるネオジム磁石 右近さんの発表
 またまた、右近さんが面白い話題を見つけてきた。5mm厚アルミニウム板で東西方向に斜面を作る。その上で円筒形ネオジム磁石を転がすと,不思議な動きをする。まるでスキーヤーが描くシュプールのように左右に弧を描きながら転がるのである。ネオジム磁石がアルミニウム板上に作る「渦電流が」が原因らしい。磁石が斜面の端に来ると,斜面の端側の渦電流が減少し,磁石は斜面の内側に力を受けて向きを変える。反対の端に来たときはその逆である。板幅を5cm,3cm,1cmと変えてみたが,いずれも磁石はその幅内でシュプールを描く。板厚が薄くなると,生じる渦電流が減少し,うまくいかなくなるが,5mmという厚さがクリティカルな値というわけではない。
 The Physics Teacher, April 2005 Vol.43, Issue 4, pp. 196-256の記事,Michael Gore,"More Rolling Magnets"(p. 248)が出典だそうだ。

 右の写真はネオジム磁石を同時に滑らせて、板の幅による渦電流の制動力の違いをみているところ。幅広の方が制動がきいているのがわかる。
 

放射熱を感じる 高橋さんの発表
 アルミダイキャストの立方体の箱の4面にそれぞれ、(1)アルミそのまま(2)アルミ箔を貼る(3)スプレー塗料で黒く塗る(4)黒いフェルトを貼るという処理を施したものを用意し、箱の中に熱湯を入れる。それぞれの面の近くに手をかざすと、黒い面(3,4)ではかなり暖かく感じるのに、ピカピカした面(1、2)では、ほとんど熱を感じない。もちろんさわればやけどするほど熱いのだが。
 放射温度計で測ると(3,4)は60〜70度を示すのに(1,2)は25〜30度しか示さない。熱放射の率が「表面の状態〈だけ〉で決まる」ということがよくわる。伝導、対流と比べて、「放射」の現象は理解されにくいので、身近に感じられる実験をと思って紹介している。
 原典はチンダルの「動きの一形態としての熱」(John Tyndall "Heat: as a Mode of Motion")。
 

 下は百円マグカップで作った同様の実験器具。温度計を差し込む穴があいていて、中の湯の冷め方が示せる。黒くぬったカップが明らかに冷めやすいのである。右の写真は高橋さんが見せてくれた放射温度計の数々。測定する角度などにそれぞれ個性があり、見極めて使うことが必要だ。
 

瞬間冷却剤 加藤俊さんの発表
 加藤さんが街角で試供品としてもらった瞬間冷却剤。軽く叩くだけでパックはたちまち冷え冷えになる。保冷剤や打ち身・ねんざの応急手当にも活用されるこの冷却剤のしくみはどうなっているのだろう。さっそく分解して調べてみることに。
 中身はご覧の通り直径2ミリほどの白い錠剤と水の入った中袋。叩くと中袋が破れて、錠剤の薬品が水にとけて吸熱反応で冷える。薬品はおそらく硝酸アンモニウムだろう。

スプーンで鐘の音 加藤俊さんの発表
 スプーンをひもで吊るして、両手の人差し指にそれぞれ2回ほど巻き、その人差し指で耳をふさいでからスプーンを軽く叩くとお寺の鐘の音のようなきれいな響きが聞こえてくる。スプーンの固有振動を聞いているわけだ。学研のキットボックスなどにも収録されている有名な実験だが、加藤さんはこれをさらに発展させて、いろいろな金属製品で試してみた。一番良い音はパスタ用トングで、イギリスの教会の鐘のような心地よい音だった。それぞれ個性のある音が聞こえるが、面白いことに全く鳴らないスプーンもあるのだ。なぜだろう。
 

ローリングすとん 竹内さんの発表
 日本製の木製のからくりおもちゃ。ハンドルを回すとカム機構で柱が上下し、小球を次々と上に運ぶ。ハンドルを逆転させてもやはり球は上にしか運ばれない。動きがユーモラスで楽しい。
 木のおもちゃBrookのWebページから通販可能。¥3990。製造元はMOCCO平和工業。動画付き詳細説明はこちら

やせる鏡・太る鏡 竹内さんの発表
 横にすればやせて見え、縦にすれば太って見える不思議な鏡。実はこれ、百円ショップの普通のガラス鏡なのだ。平面性が悪く、円筒状に反っているため像がややゆがんで太ったりやせたりする。ものは使いようってことね。

オーストラリア土産 山本のお土産配布
 春休みに旅したオーストラリアで仕入れた珍味、クロコダイル、エミュー、カンガルーのジャーキーを参加者全員で試食した。けっして美味しいものではないが、まあ「話の種」にどうぞ。それぞれ香料が使ってあり、乾し肉になっているので、本来の味ではなく、好みが分かれるところ。ちなみに現地ではステーキ料理などもあるが、当のオーストラリア人は、牛肉の方がやすくてうまいので、これらをゲテモノと呼んで好んでは食さない。あくまで観光用なのである。
 

 例会参加者にもれなく配布された絵はがき。世界の中心、エアーズロックの比較的珍しい写真を集めてみた。

クインケ管 小沢さんの発表
 小沢さんの授業では、「波の世界では1+1が2にならない」ことを印象的に示すために、自作のクインケ管を利用している。可変長部はステンレスパイプの外側を塩ビパイプがスライドするようにした。スタンドはゴミ置き場から頂いてきた扇風機の台座だ(これがあつらえたみたいによくできている)。スピーカーはスタンド内のパイプ中に上向きに配置され、その周りには吸音材を詰めて元の音を漏れにくくしている。長さの異なる左右のパイプを経て重なり合った音は上部から出てくる。音源には低周波発振器(中村理科A05-7630)の3400Hzを用い、普通教室の授業で音の強め合い弱め合いを十分に識別できる。次のホームーページを参考に製作したという。
http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/ypc/ypc005.htm
http://www.ishikawa-c.ed.jp/~rikaken/kanazawa/kanazawabuturi4.html
http://www.geocities.jp/ta_sekiguti/kuinke.htm
 

放射線ホルミシス 西尾さんの発表
 ジャパン・スケプティクスなどでも活動している西尾さんは、巷に蔓延する「非科学」と戦っている。今回プレゼンテーションで紹介してくれたのは、「放射線ホルミシス」の問題点だ。「放射線ホルミシス」とは、高線量では有害とされる放射線も、微量ならむしろ浴びた方が体細胞が活性化して健康によい、あるいは適応応答でより高線量の照射に対する抵抗性を誘導するとする考え方である。西尾さんは、「ホルミシス学派」の示す「科学的根拠」を追求し、数々の問題点を明らかにした。
 

Function Viewによるシミュレーション 山田さんの発表
 群馬県立桐生工業高校の和田啓助先生が開発したフリーソフト「Function View」は、多機能な関数グラフ表示ソフトだ。マクロによるアニメーション表示も比較的簡単にできる。山田さんは波動単元で説明に使うシミュレーションのいくつかをこのソフトで作ってみた。
 ソフトの詳しい紹介とダウンロードはここ


二次会 茗荷谷駅前「さくら水産」にて
 23人が参加してカンパーイ!久しぶりに東京会場でやると、普段とは違った顔ぶれが集まって楽しい。アクセスがよいので、例会も40人近く集まり盛況だった。二次会もご覧の通り部屋を埋め尽くす勢い。参加者の60%が二次会まで出席ってのもすごいね。


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