例会速報 2005/06/18 県立港北高校


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授業研究:等速円運動の実験について 宮崎さんの発表
 PSSCタイプの等速円運動の生徒実験。おそらくどこの学校でもやっているポピュラーな実験である。装置が簡単なので自作している方も多いだろう。宮崎さんも今までの勤務校では、ボールペンの軸やガラス棒を使って自作してきたが、港北には島津の製品の実験器具があった。おもりが軟質ゴムでできており、実験中に顔などにぶつかっても危なくないようにないし、糸も伸びないものでできている。
 宮崎さんの報告に続いて、この実験での工夫や実験に際しての注意点など、参加者から多くの意見が出てノウハウが集まった。

「光の干渉」のPPT教材 水上さんの発表
 水上さんのPPT教材シリーズ。今回は光の干渉の単元から、薄膜、ニュートンリング、楔形空気層の教材が紹介された。パワーポイントファイルなので、自分の授業用に変更できる。YPCメンバーには気前よく配布された。
 授業での展開例:「光の干渉の導入」→「光の干渉条件を探る(写真左)」→「薄膜による反射光の経路差」→「干渉問題解決手順」→「ニュートンリングに関する問題解答用(写真右)」

アイスモールド 高橋さんの発表
  「まるい氷を作る道具」。アルミ製の「型」だけで、何の仕掛けもない。アルミニウムの「熱伝導の良さ」だけで氷を溶かしてまるくする。キューブの氷が下の写真のように球形になるのに1分もかからない。見る見るとけていくと言った感じで感動を覚える。

  実は、アルミ製のものなら、ただの板でも灰皿でも放熱板でも氷をよく溶かす。アルミの側が冷え切ってしまうと使えなくなるので、熱容量が大きい(つまり全体の質量が大きい)か放熱がよいことも実用上の条件である。
 冷凍食品を溶かす「解凍プレート」もアルミの厚い板にフィンをつけたもの。アイスクリームをすくう道具には、「ヒートパイプ」の仕組みを使ったものもある。

浮沈ぶどう 高橋さんの発表
 炭酸水の中にぶどうやレーズンを入れると、泡がついて浮き上がり、そこで泡が消えてまた沈む、ということを繰り返すというデモンストレーション。比重が1より少し大きいものなら何でもよいが、浮きっぱなしになることもある。2次会ではレモンサワーとレーズンでうまくいったとか。
 出典はWilliam Henry Bragg "Concerning theNature of Things" .和訳は以下の2種(いずれも絶版)
■平凡社『世界教養全集 29巻』所蔵「物とは何か」(三宅泰雄訳)
■科学入門名著全集『原子の科学 宇宙をつくるものアトム』ブラッグ著 亀井理訳 板倉聖宣選 国土社 1991年

学研のエアエンジン 山本の発表
 学研が今年度創刊した青少年向け科学雑誌「科学のタマゴ」創刊号。テーマは「空気」でご覧のような「エアエンジン」の実験キットが付録で付いてくる。パーツの組み合わせを変えると、エアエンジンカー(写真)、フライングサークル発射機、エアエンジンヘリコプターの3通りの実験ができる。付属の空気ポンプでボトルに圧縮空気を送り込み、エンジンをスタートすると、バリバリとけたたましい音をたてて車が走ったり、エンジンもろとも宙を飛んだりする。税込1680円は創刊サービスで元値ぎりぎりではないかと思われる。これはお買い得だろう。

形状記憶ストロー 益田さんの発表
 常温では柔らかいチューブだが、氷水を吸い上げると固まって、そのときの形に固定される。やがて温度が上がると生き物のように動いてもとの形に戻ろうとする。塩化ビニル(?)の温度による堅さの変化を利用したものだが、はたしてこれを形状記憶とよんでいいものかどうか。

希土類元素入り光るガラス 大谷さんの発表
 2004年10月の東工大・オープンキャンパスで、ガラス関連の研究室でもらったという。光るガラス(Photonic glass lumi−GLASS)。紫外線を当てると光る。ガラスの中に、希土類元素(ランタノイド)の金属イオンを添加してあるのだという。元素により、発光する色が異なり、Ce(58):セリウム=青、Sm(62):サマリウム=赤、Eu(63):ユーロビウム=オレンジ、Tb(65):テルビウム=青などの発色をする。

コマの歳差運動 古川さんの発表
 古川さんは回転体にモーメントを加えた際の動きについて、日頃疑問に思っていることを問題提起し、皆で議論した。主な内容は

(1) 回転軸をキープしようとする例(競技用の槍など)
(2) 才差運動を行う例(地球など)
(3) 回転軸をキープする場合と、才差運動を行う場合の条件差

だった。
 強いスピンがかかっている物ほど軸が安定しているのは、回転の運動方程式から考えればリーズナブルで、同じ外力のモーメントに対して、角運動量ベクトルが長いほど向きを変えにくいことを反映している。
 地球などの天体が歳差運動を行う理由や、メカニズムについては、その場で詳しく語れる人がいなかったので、宿題にして各自勉強してみることになった。

バックスピンてっぽう 越さんの発表
 越さんは今年の科学の祭典千葉大会で、「輪ゴムのバックスピン」ができるワリバシ鉄砲を発表した。以前、YPCで発表したワザだが、手ではなく割り箸鉄砲で誰でも確実にできるようにしたものだ。親指に輪ゴムを巻きつける代わりに、ワリバシに取り付けた木の丸棒に輪ゴムを巻きつける。こちらの方が指で行うよりもより強くバックスピンがかけられる。
 また、輪ゴム(幅広のもの)が水平面内で回転するように空中に打ち出すと、カーブやシュートをかけられる。さらに、アダプターを取り付けると、普通のワリバシ鉄砲として、厚紙のミニミニブーメランなども発射できる。

「少年工作」の電気パン 右近さんの発表
 右近さんは科学教材社のHP http://www.kagakukyozaisha.co.jp/list01/syo.html で,かつて「少年工作」という雑誌が昭和21年(1946年)に創刊されたことを知った。興味を持ってインターネットの古本屋で探したところ,「創刊号」を一部1000円で売っていたのでさっそく購入した。写真の通りA5版68ページほどの本だ。巻頭にある「創刊の言葉」を一部引用する。

 「『少年工作』は皆さんに小手先の巧みな人間になれとはいいません。『工作』は物を作ることだけでなく,物をこわしたり分解したりしてそのでき上がりの順序や理屈を発見し,これを土台にして更に新しいものを創作して行くいとなみです。・・・」

 まず説教から入る。今とはだいぶ様子が違う。食べるのにも苦労した時代の人たちが,とにかく,こうした雑誌を出版していたこと,そして高い志を抱いていたことに敬意を表したいと思った・・・とは右近さんの弁。

 さて,その後の記事は「工作する少年の態度」「モーターの設計」「家庭用電気パン焼器の設計」・・・と続く。そう、あの電気パン焼器が記事になっているのだ。再び引用。
 「電気パン焼き器は方々の家庭で使い出しました。又持ち歩きに便利ですから旅行などにも喜ばれます。構造は第一図のようなもので箱(実際には4枚の板を周囲とし,上下に底と蓋各1枚計6枚の板からできた分解式のもの)の中に一対の金属板を入れ,之を極板として電気を通じます。箱の中には小麦粉を水でとかしたものが入っています。・・・」うーん,昔はこれを旅行に持って行ったんだ・・・まてよ,1946年に旅行していた?どんな旅行?買出し?小麦粉を持って?疑問は尽きないが,とにかく記事は,過電流を流さないためには,どのくらいの水や小麦粉を入れたらよいかとか,パンができあがるまでの電流の時間変化はどうなるのか,といった内容。
 ところで奇跡的というか,記事の図にあるものとそっくりの木製電気パン焼器が会場校の宮崎さんの手元にあった。年代も確かにあの頃と思わせる骨董品である。何でも,お知り合いの方からいただいたとか。これは貴重な文化遺産だ。


バッテリーチェッカーしおり 三上さんの発表
 電気の史料館の三上さんが、同館のイベントやら東電のキャンペーンのパンフを分けてくれた。その中に、紙製のバッテリーチェッカーしおりがあった。裏側に銀色の塗料で印刷された電極があって、写真のように乾電池をはさむと電流が流れて発熱し、その温度に応じて表側の液晶塗料の×△○が茶色から赤に変色する。写真の電池は新品で、全部のマークが赤に変わった。
 

二次会 東急東横線大倉山駅前の「養老乃瀧」にて
 20人が参加してカンパーイ!普段は静かな町はずれの閑散とした店が、時折こうして人で埋まる。座敷はここだけだから、ほとんどYPCで占拠したような状態だ。食材の残りを食い尽くしていくハイエナ軍団はしかし、上品に格調高く科学を語りながら、他のお客さんに気兼ねしつつおとなしく飲むのである(^^)。


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