例会速報 2005/09/23 電気通信大学


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電通大の展示室 見学会
 今回の会場は、調布駅前にある電気通信大学。電子工学科の河野勝泰先生のお世話で、例会前に施設見学をさせていただいた。正門を入ると守衛所のうしろに学生の研究作品を展示する展示室がある。
 

 左は楽器演奏ロボット群muBOT。実物の管楽器の穴をアクチュエータで開閉して演奏するロボット楽団だ。右は3cm四角の制限の中で製作するマイクロロボット。

 

 「あれ!あれれ!」と題する錯視をテーマにしたコーナーもある。左の写真では赤い部分は無意味な図形にしか見えないが、緑の猫が前を通ると「め」という文字だとわかる(右)。これは平面図形だが、立体的な三次元錯視の研究も行われている。

 

電通大の歴史資料館 見学会
 さらに、構内の歴史資料館を見学した。電通大がかつて「無線電信講習所」だった時代からの通信・放送機器など、歴史的にも貴重な装置が保管されている。左はタイタニック時代の無線送信機。ゼンマイのような巨大なテスラコイルと空気コンデンサーが大出力の振動回路を形成している。右はモールス現字機。モール信号の送受信機で、右側の打鍵で送信し、左側の印字機が受信符号を紙テープに鑽孔する
 

 左は太平洋戦争前から戦後にかけて使われた、大型1kW短波送信機。当時の国際通信に活躍したもの。右は比較的最近まで某民放で使われていたテレビジョン送信機。

 

 核磁気共鳴(NMR)の日本最初の実験は電通大で行われた。左はわが国初のNMR用コイル。当時の研究者が手作りしたものだそうだ。右は現役で使われているNMR用超伝導マグネットのカットモデル。液体ヘリウム冷却を行うための断熱壁の構造がよくわかる珍しい展示だ。

 

授業研究:物理Tの授業 鈴木さんの発表
 鈴木さんは、夏の科教協鹿児島大会に「実験レポートの書かせ方」というテーマの実践報告を物理分科会に出した。そこで作った資料には、昨年1年間の物理Tの授業プリントをすべて添付し、また、実験の一覧も作って載せたので、YPCの例会の話題として提供することにした。
 以前の例会で「実験レポートの書かせ方」と言うテーマでは議論したことがあるので、この例会では授業の流れや授業の中での実験の扱いなどをテーマに話し合った。鹿児島大会で指摘されたのは、そもそも生徒実験で何を目指すのかという点であった。学習課題に沿って仮説を予想しそれを確認するためのものなのか、学習した内容・法則を確認するためのものなのか。もっと生徒に考えさせて生徒が発見してわかったと言えるような課題を設定すべきではないかという指摘もあった。この話を例会でも紹介したが、例会参加者からはそれぞれご自身の授業実践も踏まえて、具体的な話が交わされた。以下は、鈴木さんの弁。

 例会での話題提供として、せっかく作ったレポート資料を持っていった次第だが、私自身の予想を超えて、授業のあり方、教材の構成の仕方などの話題が深まり、有意義な時間になったと思う。ただ、このような単なる話題の交換で終わっていてはいけないので、今後テーマを絞り、それに関しての実践を持ち寄ったらよいと思う。たとえば「摩擦の導入」「運動の法則」「作用反作用の法則」など具体的な内容について、各人がどう扱いどう授業をしているかを、持ち寄るとよいのではないだろうか。

ミニ・エクスプロラトリアムとだまし絵ミュージアム 竹内さんの発表
 例会の会場となったL棟1階には、竹内さんのミニ・エクスプロラトリアムとだまし絵ミュージアムの常設展示がある。竹内さんがイベントカーに積み込んで各地て展覧している展示物の約半数が普段はここに展開されている。左は回転台で角運動量保存の法則を体験している高橋さん。右は錯視の展示コーナー。
 

 大きめのラトルバックの展示もあった。矢印方向に回転させると、やがていやいやをして逆転し始める。角運動量保存則に反するかのような振る舞いをする不思議な物体だ。

パラメトリック・スピーカー 松田さんの発表
 電通大の松田さんは、超音波スピーカーをアレイ状に多数配列して、指向性の非常に強いスピーカーを作った。超音波は耳に聞こえないが半数のスピーカーの超音波を可聴音で変調すると、生じたうなりの成分は可聴域となる。博物館の展示説明などで使われる、ある一角だけ音が聞こえる空間を作るのに使われる装置だ。至近距離では超音波の音圧で紙がなびく。スピーカーの近くは危険だ。
 

 「お、この辺だけ音が聞こえるぞ。」超音波ビームの進路に入ると、突然空耳のように空間から音がわいてくる。ビーム上にいない人には全く音が聞こえない。

逆さビン 水野さんの発表
 水野さんは、YPCではおなじみの逆さ試験管と同じ原理で、ビンの中の水が逆さにしてもこぼれないものがあることを見つけた。黒酢のビン、めんつゆのビンなどだ。しかし、中には口の形状により表面張力による水面の安定が得にくく、水がしたたるものもある。そういう仕様なのだろう。右の写真で上がこぼれるビン、下がこぼれないビンである。口の形状の違いが分かるだろうか。
 

転上体 水野さんの発表
 以前、右近さんが例会で紹介されていた転上体を作ってみた。斜面の傾斜角度と、斜面をつくる2枚の板のなす角度、それと転上体本体の円錐の角度(立体角)との関係で、どちら側へ転がるかが決まる。円錐状のもの2つを組み合わせれば、どんな材質でも転上体になる。
 

 この応用バージョンとして、転上体を球にしてみた。この場合、球が転がっていくとき、斜面となす角度は、置く場所によって0度から90度まで変化するから、どこに置くかによって転がる方向が違ってくるところが面白い。

多層球 加藤俊さんの発表
 軽井沢の帰りに横川駅に近い国道沿いにあった石の館「チエ」で見つけたという多層球。石の塊からくりぬいた5層構造になっている。台湾の故宮博物館には象牙から親子三代に渡って作り上げた重要文化財の象牙多層球がある。18層以上あるらしい。

台湾のストロー細工 加藤俊さんの発表
 台湾製のストロー細工。コップに刺して飾るようなものらしい(写真左)。金魚orイカ?、エビ、タツノオトシゴ、ドラゴンなど。大阪の当銀美奈子さんはこれをヒントに、エビ、火の鳥?、ゴキブリなどのオリジナル作品をいろいろ発表している(写真右)。

高速W回転浮沈子 加藤俊さんの紹介
 かつて、鎌倉学園の市江さんが2000年にドイツの回転浮沈子を紹介し、YPCで大ブレイクして、たれビンバージョンやら、魚釣りバージョンが開発されてからというもの、「浮沈子は回るもの」が定番になりつつある。大阪の当銀美奈子さんは、たれビンの中にプラスチックパール(小球)を仕込んで更に楽しい浮沈子を作った。名付けて「高速W回転浮沈子」。浮沈子自身が回転するだけでなく、内部に水が出入りするときに浮沈子の中のプラスチックパールが水流で回転する。

不思議なミラーパズル 加藤俊さんの発表
 表面が波上になったコマがいくつあり、手前面と鏡でみる裏面をつないで一つの絵を完成させるもの。表裏2つの絵をつくることができる。写真はエッシャーデザインのもの。ビバリーより新発売。お値段は税込1995円。
http://www.be-en.co.jp/goods_view/goods_view.php?category_cd=PZ08

磁赤鉄鋼と磁鉄鉱 加藤俊さんの発表
 岡山の柵原鉱山から取れた磁赤鉄鋼(左)は天然磁石の性質を持つ。仮説社フェアで入手。一方、一般の磁鉄鉱(右)はほとんど磁力をもたない。磁赤鉄鋼はFe3O4に対して磁鉄鉱はFe2O3。

ハイテクゴマ 加藤俊さんの発表
 ボタン電池2個を搭載し、4時間回り続けるというすぐれもののコマが王様のアイデアなどで売られている。仕組みはどうなっているのだろう。小型モーターのリアクションホイールだ、いや振動子だ、と例会では議論百出。真相はいかに。
 

漬もの名人 加藤俊さんの問題提起
 なす、きゅうりの色出し用として純銅板製の”漬もの名人”という商品があり、説明書に「銅に発生する緑青は安全性に問題はありません。」と書かれている。「あれ、緑青って毒じゃなかったっけ。」と不審に思って調べたところ、1984年8月7日に厚生省が「緑青(炭酸水酸化銅)には猛毒性はない」という見解を発表している。緑青猛毒説は誤った科学伝説だったのだ。
 ただし、緑青は水溶しないからいいとして、銅イオンそのものの摂取については別の評価が必要だ。銅は人にとって必須微量元素で、欠乏すると貧血や成長障害などが起こるが、逆に過剰に摂取することによる障害も報告されている。そっちの方は大丈夫なのかという新たな疑問がわいてきた。
 いずれにしてもこういう議論にはきちんとした実験に基づく量的評価が必要だ。

人工筋肉 山本の紹介
 学研の教材キットシリーズからの紹介。「夢の新素材・人工筋肉プテラノドン」税込¥800。熱すると長さが縮む新合金「バイオメタルファイバー(BMF)」が人工筋肉として使われている。電流を通じるとジュール熱で緊張し、翼を羽ばたかせる。右の写真はアクチュエータ部の拡大。白い針金のようなものがBMFだ。
 

 パーツを付け替えればユーモラスな腹筋運動も演じることができる。以前、2003年11月の例会で渡辺さんが同じ素材を使った「パピヨン」を紹介してくれたが、このキットは¥800とお買い得である。

磁界観察シートをつかっての渦電流の観察 渡辺さんの発表
 「The PHYSICS TEACHER」のVol.43に磁界観察シートを使っての実験が紹介されていた。その中に銅のパイプにネオジム磁石を落とすとゆっくり落ちるという渦電流の実験の観察も載っていた。銅のパイプの周りに磁界観察シートを巻きつけると内部の磁石の落下の様子を外から見ることができるという。例会でさっそく追試してみた。浮かびながらゆっくり降下していく磁石の位置がはっきりわかる。

 なお、磁界観察シートには鉄粉が入っているからシート自体も磁石に反応するので、それを考慮に入れて観察する必要がある。

米国の研究会参加体験 小河原さんの発表
 2001年4月から05年8月まで、系列のニューヨーク校へ赴任していた小河原さんが4年半ぶりに帰国し、体験報告があった。
 地域の勉強会から、郡の研究会、州の研究大会、そして物理教員による世界最大の集会と思われるAAPTの夏季大会まで、大小さまざまな規模の研究会の様子を紹介してくれた。どの国や地域にも、熱心な教員が活動していることは、励みになる。詳細は、次号のYPCニュースに掲載の予定。

Aimulet LA 車田さんの発表
 愛・地球博の産総研展示コーナーで配布されていた、無電源携帯端末「アイミュレットLA」。微小球太陽電池アレー「スフェラ」が受光部兼電源で、受信した赤外線信号を圧電スピーカにより音声に変える。このカードを直接耳に当てて聞く。屋外での赤外光通信も可能。竹を外装に用いた筐体と、ニューヨーク在住の芸術家ローリー・アンダーソンのデザインしたイラストが印象的。

 

八景島で屈折の観察 大谷さんの発表
 水族館は光の屈折の不思議を体験できる恰好の実験室だ。左は屈折のイタズラで「胴切り」になって見えるシロイルカ。右は屈折と反射で1匹が5匹に見えるカブトエビ(奥の壁ぎわ)の分身の術。生徒の興味をひきつける導入教材として有効だ。
 

二次会 調布駅前「気らく亭」にて
 例会は40名を超える過去最大規模の参加者を数えた。二次会もご覧の通り26名が参加してカンパーイ!電通大の河野先生には二次会の手配までお世話になった。感謝!またいつか電通大でやりたいなあ。他の施設も拝見したいし・・・。

三次会 調布駅前「満月堂」にて
 二次会でまだ飲み足りない有志13名が、さらに調布駅前のおでん屋さんでカンパーイ!語らいは11時まで続いた。


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