例会速報 2008/11/23 電気通信大学


前の月の例会例会アルバム目次次の月の例会


YPCホームページ(本館)へすたのページ(別館)へ天神のページ(別館)へ次回例会のご案内


祝・電通大90周年 調布祭 
 今回の会場は調布の電気通信大学である。創立90周年を迎えた同学では、11月21日からの3日間、学園祭「調布祭」と合わせてフォーラム2008やオープンキャンパス、地域貢献シンポシオンなどのイベントを集中している。今回の例会は地域貢献シンポシオンと同じ会場でイベントに先立って午前10時から行われ、例会後は滝川洋二先生の基調講演、フォーラム「電気通信大学による小中高への教育支援」へと合流した。

授業研究:波動分野の授業展開 黒瀬さんの発表
 波動分野についてどのように授業を進めるかが報告された。
 特に、発表者の黒瀬さん自身から提起された「y-tグラフをいつの時点で教えるか」、「授業展開上、ホイヘンスの原理は大切?」、「波の式を生徒が理解するための負担度」などの問題について、活発な意見交換が行われた。

 黒瀬さんは例会後のシンポシオンでも、「中高一貫女子校における理科の取り組み」と題して電通大との連携授業のレポートを行った。

コリオリの力 田代さんの発表
 地球に見立てた回転円盤上でコリオリの力の演示をする。中心から外に運動する場合は生徒にもすぐ予想がつくが、外から中心付近に向かって運動している物体も右にそれて見えるのは大部分の生徒が予想を外す。物体が置いてきぼりされると思うのだろう。
 慣性系で等速直線運動している物体を回転系から見るとどうなるか。直線定規の等間隔の目盛りに沿って物体が動くとする。円形画用紙(回転する観測者)を反時計回りに少し回しては、直線定規の一目盛りだけ動いた位置に印をつける(下左)。また少し回転させては直線定規上を一目盛り動いた位置に印をつける。これを繰り返してつなぐと回転系から見た物体の運動の軌跡が描ける(下右)。これなら生徒自身に作業させることもできる。
 

 一般の緯度φではフーコーの振り子の振動面の回転は、自転の回転角度×sinφ で、低緯度ほど小さい。田代さんはこのことを感覚的に示す工夫もした。カップは地球上の低緯度だとする。沿えている画用紙の円弧は振り子の軌道を示す(下左)。
 画用紙を平行移動して観測点を東にずらす。このとき振り子は慣性系に対して振動面を維持しようとするが、地面に垂直な重力がはたらいて振動軸を地面に立てるので、よっこらせっと振動面を鉛直に直す(下右)。これで振動面が少し回転することを表現しようというのだ。なかなか明快に説明しにくい課題だが、新しい工夫だ。  

錯視マグカップ 水野さんの発表
  ニュートンスタイルで売っていた錯視マグカップ(商品名はBrain Styling Mug)。北岡明佳氏の「脳が活性化する不思議な錯視デザイン」をもとにしたマグカップ。「脳に効く!?マグカップ」という宣伝文句だが・・・。売られているのは例会で紹介した4種類で1個税込み1,260円。

マジキャップ 水野さんの発表
  「新理科教育メーリングリスト」で紹介されていたマジキャップ。例会で紹介したのは「マンボウセット(三角20枚、四角10枚、五角4枚)」(税込み8,820円)。販売しているのは「工房ながおか」。
 タイルの辺と辺が磁石でくっつき、さまざまな立体が簡単に組み立てられる知育おもちゃだ。タイルを裏返しても反発しないような優れた仕組みがある。長辺に磁極を持つ棒磁石がストロー状のチューブに仕込まれていて、常に引き合う向きに磁石が回転するのだ。

 ロングランを続ける同種のおもちゃ、ピープル(株)のピタゴラスプレートは回転しない2個の棒磁石を辺上に一対にして配置していたが、マジキャップの構造だと磁石の部品点数を半分に減らせることになる。

 

ガリガリトンボ 石井さんの発表
 肥後とんぼという郷土玩具がある。竹の板に鋸歯状の凹凸をつけて、これを竹の棒で擦って振動させると、先につけた羽が回るというというものだ。YPC例会でも何度か紹介されているおなじみのおもちゃだ。
 この装置は割り箸で簡単につくることができる。凹凸は金やすりで削って作ることもできるが、針金や凧糸を巻いても同じはたらきをする。羽はフラワービーズ(百円ショップ)をまち針に刺して、セロテープで箸の先につけるだけ。もう半分の割り箸でガリガリと擦ってみよう。フラワービーズがかわいらしく回る。
 

 写真下左はカッターナイフのストッパーのギザギザをそのまま利用したもの。下右は風船の空気でなるブーブー笛の振動で回転させている。とにかく振動すればよいのだ。

 振動はバイブレーターを触れることでもOK。百円ショップのマッサージャーや電動歯ブラシが使える。ちなみに、凧糸でバイブレーターを吊ると、定常波が見られる。  

 点灯した状態のレーザーポインターを棒の先に取りつけて、バイブレーターで振動させると、線分や円や楕円の模様が壁に写る。「どうして羽が回るの?」という質問にはこれを見せれば十分だろう。(下右の写真は石井さん提供)  

壁を走るラジコンカー 児玉さんの発表
 一見、赤外線リモコンで動くタダの模型自動車に見えるが、この車は垂直な壁や天井にもはりついてクモのように自在に走り回るのである。名付けて「エアロスパイダー」(タカラトミー、定価4725円、アマゾンで3000円弱)。驚愕の動画はここ
 

 磁石で貼りつくわけではないので走行する場所を選ばない。なめらかな面なら黒板でもガラス窓でもOK。垂直でも逆さまでも走れる。車体中央に強力なモーターで回転するシロッコファンが内蔵されており、車体下部から空気を吸い込んで気圧の低い状態を作っている。いわば大気圧で支えられて落ちないのである。 

怪奇現象vs科学 TVドラマ「ガリレオ」の実験の楽しみ方 滝川さんの講演
 YPCの例会はここまでで終わりだが、昼休みをはさんで同会場で電通大の地域貢献シンポシオンが開かれた。その基調講演の中で滝川洋二先生(東大特認教授、ガリレオ工房理事長)が実演してくれた実験のいくつかをおまけとして紹介しよう。
 たくさんの実験道具を並べての講演。最初はドラマ「ガリレオ」でも使われたネタ、液体窒素による蜃気楼の実験。レーザーポインターの光を液体窒素の液面すれすれに通すとその光路がわずかに下向きに屈折する。
 

 レーザーポインターは光が目にはいると危ないので、子供達自身に実験させるときは高輝度発光ダイオードにストローのさやをかぶせて光源とするとよい(下左)。この実験セットは参加者全員に配られた。
 右はガラスを熱して通電する実験。固体のガラスは不導体だが、溶融したガラス内ではイオンが運動できるので電流が流れる。イオンそのものの運動はきわめてゆっくりでも大きな電流になりうることは計算してみればわかる。 

 強力ブロワで巨大風船を宙に浮かせる実験。斜めからの風でも落ちないし飛んでいかない。いわゆるベルヌーイフローの実験だ(下左)。右は映画でも使われたおなじみ「ガウス加速器」の実験。鉄球を2〜3個並べてネオジム磁石球を端に置き、他方から別の鉄球をネオジム球に軽くぶつけると、反対側の鉄球がものすごい速さで飛び出す。巨大なネオジム磁石球による大型実験の動画はここ

二次会 電通大の生協食堂にて
 シンポシオンの懇親会とジョイントで開かれた二次会。何人参加したかよくわからないがとにかくカンパーイ。滝川先生や電通大の先生方をはじめ、日頃あまりお会いすることのないたのサークルメンバーとも交流できて有意義な集まりだった。

FrozenBeer
 懇親会中に、誰がはじめるともなく、滝川さんの実験の残りの液体窒素を使ってイタズラが始まった。泡立ったビールに注ぐとシャーベット状の「泡の氷」ができる。波の華のような感じだがシャリシャリした苦み走った食感は大人の味だ。泡の水分が凍り付くと共に中の二酸化炭素もドライアイス化しているのだろうか。動画はここ

 


前の月の例会例会アルバム目次次の月の例会


YPCホームページ(本館)へすたのページ(別館)へ天神のページ(別館)へ次回例会のご案内