京都教育大学理学科内「フォーラム理科教育」研究会No.1,1999より

 

 「プラコップをリサイクルして三日月型アクセサリーやオリジナル・ボタンを作ろう」

         

川 村  康 文

    京都教育大学附属高校  kawamuura@kyokyo-u.ac.jp

 

  キーワード:生活科,総合学習,青少年のための科学の祭典

 

                 1.はじめに

 日本各地で行われるようになった青少年のための科学の祭典や,子ども達のための科学実験教室では,プラコップを利用して円盤の形をしたアクセサリーを作る実験がよくされている。

 さて今回は,生活科や総合学習で利用できる教材として,プラコップを利用して,三日月型のアクセサリーやオリジナル・ボタンを作る実験教材を開発した。三日月型のアクセサリーは高校生にも好評であった。また,オリジナル・ボタンは,子ども達のための科学実験教室に付き添いで参加されたお母さん方に好評であった。今後,学校教育の場では,生活科や総合学習の授業でや,文化祭での発表などに,また社会教育の場では,青少年のための科学の祭典,子ども達のための科学実験教室などの教材として広く利用して頂ければと考えている。

 また,このとき利用するプラコップは,新品を買うのではなく使用済みのものをリサイクルするのが望ましいと考えている。というのは,著者が講師をしている科学実験教室で利用するために,高校生達に自動販売機のそばのゴミ箱からプラコップを集めてもらい,きれいに洗浄してもらった。実験教室で使い切らなかったプラコップは,もう1度使用することもできるので,高校生が行えるゴミ対策にもなった。巷でも,プラコップの再利用がローカル・アクションとして広がればと願っている。

 

             2.これまでの実験方法

 プラコップの底面や側面にマジックインキで絵を描いてから,飲み口を下に底を上に向けて,トースターのなかに入れ,約1分半ほど熱を加える。このとき,トースターの網の上にはアルミ箔を4枚かさねにして敷いておく。熱が加わると,プラコップはみるみる縮んで円盤形になる。これをトースターの外に取り出して,熱いうちにアルミ箔などにはさんで平らにする。このとき,トースターに入らないほど背の高いプラコップの場合は,はじめに底の方をトースターの中で少し熱で縮ませてから,トースターの網の上に置くとうまくいくこともよく知られている。

 

 

            3.あっ,ドーナツ型になった

 背の高いプラコップの場合,従来からされている方法でなく,トースターの中に入るようにプラコップを上部分と下部分に切り分けた。飲み口を上にしたときの下部分からは少し小さめの円盤形のものができ,上部分からはドーナツ型のものができる(図1)。

 

 

            4.三日月型アクセサリーの誕生

 図1のドーナツ型のものを4分の1に切ってみる。さてこの1/4のものは,熱を加える前にはどのような形をしていたのだろうか。熱を加える前は,プラコップの側面の部分として台形のような形をしていたわけである。ということは,プラコップの側面を台形のように切り取れば,ドーナツ型の1/4と同じような形のものができるわけである。それでは,台形型に切り取ったものの四隅のかどを丸く切りとって(図2),それに熱を加えたらどうなるだろうか。ええっ!なんと,三日月型アクセサリーができたではないですか(図3)。

 

  

 

          5.オリジナル・ボタンをつくろう

 プラコップの底面だけを利用すれば,もっと小さい円盤形のものができる。それでは,この底を利用して,オリジナル・ボタンを作ってみよう。ボタンの大きさについては,自分が希望する大きさのものができるまで,何度か練習してみる必要がある。 さて,ボタン穴はどうやってあけるとうまくいくだろうか。熱処理を終えたボタンに,電気ドリルで穴をあけるのは,子ども達のための科学実験教室では怪我の心配があるのと,技術面の問題として穴をあけるときにせっかく作ったボタンが割れないともかぎらない。トースターから取り出して熱いうちに釘で穴をあけることを試みたが,釘で穴をあけるときにボタンがそってしまって,かえっていびつになった(もちろん,それを芸術的に素晴らしいと思う子どもたちもいるので,あながち否定はできないが)。それでは,どうすればいいのだろうか。 種明かしをします。熱を加える前に,ボタンの穴の位置を決めてそこに釘をさしておく(図4)。  釘をさしたまま,トースターで熱を加える。ボタンが冷えてから,釘を抜く。これで,オリジナル・ボタンの完成である(図5)。

 

 

 

 

           6.プラコップの製造上の特徴

 プラコップは,スチロールがあたたかく液体状に溶けているあいだに成形され製造されているが,ドーナツ型アクセサリーや三日月型アクセサリーの製作から,次のようなことがわかる。プラコップの底板は,製造時にも熱によってあまり変形していないが,側板はかなり引き延ばされている。そのため,トースターで熱を加えたとき,プラコップの底面はあまり変形しないが,側面はかなり凝縮し変形する。  側板に描いた図形がどのように変形するかを学びながら,三日月型アクセサリーなどを製作して楽しむことができる。

 

 

              7.おわりに

 最近では,青少年のための科学の祭典の刺激もあり,各地で子ども達のための科学実験教室が多く開催されるようになった。今回紹介した実験は,このような催し物や,文化祭などで利用して頂ける実験としては,比較的準備にも時間がかからないうえに,参加者からは好評を頂いている。また,「生活科」の授業や「総合学習」の授業では,リサイクルの観点を強調すればいい教材として利用して頂けるのではなかろうか。是非,多くの方に試して遊んで頂き,広く利用して頂ければと考えている。

 なおこの内容は,すでに毎日中学生新聞(1998年8月12日水曜日)に,ガリレオ工房のチャレンジ科学実験教室の欄で,「プラスチックコップからオリジナル作品」という題で紹介された。そのときのイラストレータは,青少年の科学の祭典のポスターや冊子のイラストを全面的に行っている毛利綾さんであった。