3Dプリンターで作製した車体での出前授業(2015年3月4日 千葉県立柏陵高校) → 太陽光のもとでの車輪の回転 → 走行実験
新しいガラスでの走行実験(2014年10月9日16時40分ごろ,岡茉由理さん) → 6枚型
太陽光のもと、色素増感太陽電池搭載型模型自動車の走行に成功(2010年5月21日13時15分ごろ)
→ 3セル直列3並列9セル型モデル (sun33-model)
ようやく,自走式色素増感太陽電池模型自動車の走行に成功しました(2009年5月13日23時20分ごろ)
→ 8枚型 もう1つの映像 2009年5月14日12時20分ごろ・晴れ → 8枚型 6枚型
→ 6枚型
1セルの10セル平均における
変換効率 0.036%
開放電圧 0.36V
短絡電流 0.53mA
4セル直列(8セル型の片側)
開放電圧 1.12V
短絡電流 0.52mA
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色素増感太陽電池で,モータを回してみょう!(約1Mb)
色素増感太陽電池で,模型自動車を動かしてみよう(約1.2Mb)
この模型自動車の車体 駆動部拡大
大気中へ大量の二酸化炭素を放出してきたため,地球が温暖化し問題となっている。このため二酸化炭素を排出量の削減が求められている。火力発電所では,化石燃料を利用して発電を行ってきたため,膨大な二酸化炭素が放出され続けている。そこで,化石燃料を利用しない発電が求められている。その方法の1つに,太陽電池がある。太陽電池が稼動している最中には,確かに二酸化炭素の放出はないが,シリコンを利用した太陽電池を製作する段階では,多量の電力が必要である。
シリコン型陽電池は,初期のころは高価であったので人工衛星や特殊な用途に限定されていたが,今や電卓や時計など,日常生活の中のいたるところで利用されている。この太陽電池は,どのような構造をしているのであろうか。
この太陽電池の主な材料は,シリコンである。シリコンは4価の元素なので,シリコンだけではほとんど電流が流れない。そこで電流が流れるようにするため,シリコンのなかに3価のホウ素やインジウム,あるいは5価のリンやヒ素を微量に加える。
シリコンに3価の元素を微量加えると,電子が足りなくなる所ができる。これをホール(正孔)と呼ぶ。ホールは,まさに電子が足りない空間で穴のようなものである。この穴に電子がはまると,電気的にちょうど+−ゼロになると考えると,この穴は正の電気をもった穴と考えることができる。つまりホールは,まるでプラスの電気のようにふるまう。そのため,このタイプの半導体をP型半導体と呼ぶ。P型半導体に電圧をかけるとホールはプラス極側からマイナス極側の方向に向かって流れる。
一方,シリコンに5価の元素を微量加えると,電子(自由電子)が余る所ができる。このタイプをN型半導体と呼ぶ。N型半導体に電圧をかけると電子はマイナス極側からプラス極側の方向に向かって流れる。
シリコン型太陽電池は,図5.1に示したように,N型半導体とP型半導体を張り合わせて作る。シリコンの結晶に光があたると,自由電子とホールが生じる。このとき生じたホールはP型半導体へ,自由電子はN型半導体へ引き寄せられる。そのため,P側とN側を導線で結ぶと,P側からN側に電流が流れることになる。
図1 シリコン型太陽電池の構造
このタイプの太陽電池には,単結晶型太陽電池,アモルファス型太陽電池,化合物太陽電池などがある。単結晶型太陽電池はかなり高い発電効率を実現しているが,商品としては高価である。理論的最大効率は約22%とされているが,現段階では10数%の発電効率である。発電効率はかなり落ちるが,より安価なアモルファス型太陽電池が開発されてから,太陽電池利用が著しく広まったといえよう。化合物太陽電池では,発電効率40%をめざしての研究開発がなされている。
太陽光発電は,日光が照射するところであればどこでも発電ができ,太陽からの直達光以外にも,雲や空気中の塵などの散乱光でも発電が可能である。
住宅への設置では,太陽電池から得られる電流が直流であるために,インバータを太陽電池に接続し交流に変換して用いる。インバータを電力会社の配電線に接続しておくと,雨の日など太陽電池での発電量が足りない場合には電力会社から電気を買い,逆に十分の日射があって電気が余る場合には電力会社に電気を売ることも可能である。このようにして,太陽光発電を取り入れた住宅が徐々にではあるが増えてきている。
しかしシリコン型太陽電池は,耐用年数を向かえた後,シリコンにドープした元素による汚染など廃棄物としての問題点を抱えている。
(1) 色素増感太陽電池とは
色素増感太陽電池は,スイスのグレッツェルらによって開発された。このタイプの太陽電池の発電原理は,太陽の光からエネルギーを取り出す植物の光合成に似ているので,光合成型太陽電池とも呼ばれている。主な材料は,電気伝導性透明電極,二酸化チタン,有機色素,ヨウ素溶液である。これらの材料の多くは,日常生活で利用されているものが多い。例えば二酸化チタンは化粧品や白色顔料としても使われ,ヨウ素溶液はうがい薬に利用されている。太陽の光を吸収する色素には,ハイビスカス,アメリカンチェリー,紫キャベツなどの天然色素が用いられる。このタイプの太陽電池は,これらの材料を用いて安価で,しかも特別な装置を使うことなく簡単に作ることができ,環境への悪影響が少ないという特徴を持っている。
色素増感太陽電池の発電原理は,以下に示すとおりである。
マイナス極には,電気伝導性ガラスに酸化物半導体である二酸化チタンを多孔質状態にしてコーティングする。プラス極には,電気伝導性ガラスに黒鉛や白金をコーティングする。電解質溶液には,ヨウ素/ヨウ化物の混合溶液を使う。二酸化チタンは太陽光をわずかしか吸収できないため,太陽の光をうまく吸収できる色素を二酸化チタンの表面にぬる必要がある。この色素の部分で光エネルギーから電気エネルギーへの変換が行われ,二酸化チタンを通って電流がながれ電池として働く。
図2 色素増感太陽電池の模式図
色素増感太陽電池では,マイナス極にコーティングする二酸化チタンの状態を多孔質な状態とすることが重要である。二酸化チタンを多孔質化させると,二酸化チタンの表面積を大きくすることができる。これにより,より多くの色素を入れることが可能になり,発電量をあげることができる。
色素増感太陽電池は,あまり電力を必要としない電卓や腕時計など,従来の屋内用の太陽電池の代替品としての可能性が探求されている。現在は,シリコン型小型太陽電池が使われているが,コストの面や環境への配慮を考えると,安価で環境負荷の低い色素増感太陽電池の利用が考えられる。また,電気伝導性ガラスの代わりに,透明な電気伝導性プラスティック板を用いて製造することができると,軽くて持ち運びやすい製品の製造が可能になるといわれている。さらに,このタイプの太陽電池は,高価な精密装置による生産設備がなくても作ることができるので,僻地での製造も可能である。その意味でも,僻地用での電源に適しているといえる。
このように注目を集めている色素増感太陽電池であるが,現段階では,長期間の安定性に欠け発電効率が低いため,実用化に向けて問題は山積みである。しかし,エネルギー・環境問題が深刻な状況において,また人と自然との共生という観点からも,このタイプの太陽光発電は重要な技術である。
またシリコン型太陽電池の場合は,教育教材に用いる場合にも,最初から完成した太陽電池として与えられ,太陽電池を用いて何か工作をしてみるような授業に限られる。しかし,色素増感太陽電池の場合は,児童・生徒にも太陽電池そのものの製作が可能である。そのため,先端科学の分野で研究されているものを,自分たちで実際に作るという経験を通して,科学技術への興味・関心を高めることができる。
これまで,小学生の科学実験教室,高校生の授業で,色素増感太陽電池の工作及び発電実験を行ってきた。これらの経験をふまえて,本研究では,授業計画案も提案する。
(2) 色素増感太陽電池の製作手順
1)材料や準備物
電気伝導性ガラス2枚,二酸化チタンの粉末,酢酸,植物色素(ハイビスカス,アメリカンチェリー,紫キャベツなど),黒鉛(鉛筆の芯など),クリップ2個,ヨウ素液,カセットコンロ(ガスバーナ),ガラス板はさみ,ペトリ皿,小ボトル,はけ,電子メロディー,太陽電池モータ,テスター
なお火気を用いるため,小学生の場合は親子同伴で行うなどの配慮が必要である。
2)工作
@二酸化チタン粉末を酢酸水溶液あるいは希塩酸で練って,ペースト状にする。
Aペースト状になった二酸化チタンを電気伝導性ガラスにぬる。
B二酸化チタンをぬった電気伝導性ガラスをカセットコンロやガスバーナなどであぶり,ガラス板の上で焼きかためて,ガラスにコーティングする。
Cこのガラス板を,植物色素を抽出した液に浸し,染色する。
図3 二酸化チタンの膜を色素で染色する
D二酸化チタンの膜にこい赤紫色がついたら液から取りだして,水洗いしたあと乾燥させる。
Eもう1枚の電気伝導性ガラスには鉛筆の芯などをこすりつけて,黒鉛をコーティングする。
図4 黒鉛を塗布した電気伝導性ガラス(上)と
二酸化チタンをコーティングした電気伝導性ガラス(下)
F赤紫色に染まった二酸化チタンの膜に,電解液としてのヨウ素溶液を数滴たらす。
Gその上に,もう1枚のガラス板を,黒鉛をコーティングした面が二酸化チタンの膜と重なるように下向きにして置き,クリップではさんで固定する。
Hこの電池に導線をつなぐ。
図5 色素増感太陽電池が完成した状態
I二酸化チタンをコーティングしたガラスの方から光を当てると電気が発生する。電子メロディーなど発電を確認する。
(3) 色素増感太陽電池を教材として用いた授業展開の例
色素増感太陽電池は,学校教育のみならず,社会教育の現場での利用が考えられる。社会教育の場では,サイエンスEネットなどのボランティア団体が,実験教室を行うさいの実験メニューとして用いることが可能である。色素増感太陽電池の実験は,これまでにも,サイエンスEネットの科学実験教室では何度も行われている。 http://www2.hamajima.co.jp/~elegance/se-net/jikken2000819.html
一方高等学校の物理では,エネルギー学習の教材として明確に位置づけられ,高等学校理科用文部科学省検定済教科書物理Tにも採択された。
時 |
学 習 活 動 |
ポ イ ン ト |
1 時間目 |
「色素増感太陽電池の製作1」 ・教師による色素増感太陽電池製作と発電演示 ・二酸化チタンやヨウ素液など,この実験で使う材料は,日常生活ではどのような場面で使われているかを調べる。 ・透明ガラス電極に二酸化チタンの薄膜を焼きつける。 ・もう1枚の透明電極に鉛筆で炭素をぬる。 |
・教師の演示により,色素増感太陽電池の作り方及び発電方法のイメージをつかむ。 ・1班を4人で構成する。 ・透明電極の裏表に注意。 |
2時間目 |
「色素増感太陽電池の製作2と発電実験」 ・二酸化チタンの薄膜がついたものを植物色素(ハイビスカスや紫キャベツ)の色素で染色する。 ・発電実験を行う。 |
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3時間目 |
「色素増感太陽電池の応用」 |
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