サイエンスEネット 第11回例会

【参加者】
藤山周治,桜井昭三,松森弘治,川村康文,間々田和彦,中村理科(島桂子,あと1名),角川佳久子,西山佳奈,菱田展子,村田直之,萬處展正 (以上12名)

【日程】
2002年5月11日 午後2:00〜9:20


(右写真は黒板に当日のプログラムを書く川村代表。背中に情熱を感じる?)



プログラム

1 超強力マグネット(桜井昭三)

 えーと、実験がトップだったので、いささか上がり気味でしたが、超強力磁石の前に、ちょっと小ネタとして、電球の実験と言うより展示をしました。 エジソンタイプ(といってもいいのでしょうか)の炭素フィラメント電球と、普通のタングステン電球を点灯比較しました。電流を測定するため2Aレンジのクランプメーターを使用、炭素で電球100V 0.12Aつまり12Wです。この電球は昔配電盤の表示用に使われていたので、長寿命型と思いますが、そのせいか非常に暗く、そのあとの5W乳白ナツメ球、10Wクリアタイプ・ナツメ球と比較すると大差がありました。一般向きのものはもっと明るかったのではないかと思います。
 
 次に超強力磁石ですが、皆さんの前で、ハードディスクの分解方法を披露しました。前にサイエンスEnetのWebに乗せて頂いた時は、家に鉄のかたまりが7kgしかなかったのですが、今回が2kgのおもりを1個ずつ増やしていき、5コまで確認しました。幅1cm、長さ5cm、厚さ1.5mmほどの磁石でなんと10kg吊り上げることが出来ます。またこの磁石は裏側にはほとんど磁界が発生しないという、特殊な着磁がされていることが分かりました。

報告者より・・・調べれば調べるほど不思議な磁石です。10kgを持ち上げたときは参加者全員びっくりでした。(桜井さん,うれしそう?) また,エジソンタイプの電球を発表されているときに,おもしろい電流計も紹介してもらいました。電球の写っている写真の左手で持っておられるのがそれです。導線にはさんで調べられるとのこと。

2 体感で音を調べる(松森弘治)
「体感で音を調べる」というテーマでその日の午前中の京都教育大学公開講座(中高生向き)の内容紹介を簡単にしました。公開講座の詳しい内容は近日中にHPにアップする予定です。
公開講座ではいろいろな波の紹介(縦波、横波、音波、地震波、電磁波、水面波)、音叉と共鳴、音叉の干渉なども紹介したが例会では省略
1.気柱共鳴の実験(どこの高校でもされているかとは思いますが、中学生には新鮮なようでした。)…水面を上下させて、音叉の音の共鳴する点を求める。
(左写真は例会ではなく,公開講座のときのもの)
2.音波の干渉の実験(写真あり)…実験室内のテレビのスピーカーより同一周波数、同位相の音波を出して観測者が室内を移動しながら音の干渉による強弱を体感した。

報告者より・・・上の写真は,離れた2つのスピーカーから出る音の干渉を聞くため,参加者がウロウロしているところ。強めあう点や弱めあう点が確認できました。(この写真だけ見ると不気味な集団としか思えない)


3 What's a box(村田直之)
工作教室で子供たちに作らせたい風変わりな箱を紹介しました。
口と底が瞬時に入れ替わる構造で、黒画用紙とゼムクリップだけで作れます。マジックショップで商品として販売している為、HP上に「展開図」を載せることはできませんが、例会では内部の構造を皆さんに見ていただきました。

報告者より・・・始まったとたんぐぐぐっと引き込まれ,思わず記録の写真を取り忘れるところでした。写真は一つですが,ネタは4〜5個はあったような。楽しいひとときでした。また見たい!


4 イージー・センス(中村理科)
イージーセンスは英国DATA HARVEST社で開発されたデータロガーです。
その特徴はとにかく操作がカンタンなことで、私のような機械オンチでもいろいろ遊べます。

現在18種類のセンサがありますが、どれでも好きなセンサを本体にさして、ボタンを押すだけでOKです。また、本体にメモリが入っていますので、パソコンがない場所での測定も大丈夫です。

イージーセンスの最も得意な事のひとつは、「目に見えない現象を見えるようにする」ことです。例えば、光センサで蛍光灯の光の強さを測定すると、その変化から交流の周波数がわかってしまったりします。

例会では、音センサで先生方の声の音声波形やおんさの音を取ったり、距離センサで台車の運動を測定したりしました。
また、当日はあまりお話できなかったのですが、ソフトのほうも教育用にデザインされていて、ちょっとおもしろい機能がついています。
 
報告者より・・・温度センサーや距離センサー,光度センサー,発売前の気圧センサーなどを披露してもらいました。私も活で一度手にとって使ってみる機会がありましたが,とても簡単にデーターが取れます。右写真で左手に持っておられるのがイージー・センスです。パソコンにデータを取り込んでいるところ。左写真は距離センサーを使った実験の紹介。パソコン上で微分や2階微分ができるので,「距離−時間グラフ」から「速度−時間グラフ」や「加速度−時間グラフ」が簡単に得られました。(妙に親しみやすい島さんでした)
こちらのページも参考にどうぞ。


5 盲学校教具紹介(間々田和彦)
いろんな機会に盲学校の理科実験観察の知っていただきたく思います。五感を使った実験観察と言いながら、その多くは視覚によるものです。「見えない」ことの視点を提供できれば、きっと発展をしていただけると思います。
 
報告者より・・・盲学校の生徒に一人でマッチをすらせたいという願いから生まれたもの。写真で青や白いものがポイントとなるものです。風呂場なんかで石けんを固定するためのグッズだそうです。これでマッチをすられる方を固定しておくと,マッチをすりやすくなる。
ビーカーなんかも倒れにくく,盲学校でなくても使えそう。

 
報告者より・・・光感器というもの。光の明るさを感知して音に変換する。「ウイ〜〜ン」と音がする。これでビーカーの液面の高さも分かる。


6 愛媛版計測システム実験(藤山周治)
平成3年に、当時愛媛県立松山中央高校の中塚・稲荷と愛媛県総合教育センターの宮崎の3名が中心になって開発した、A/Dコンバータとそれをオシロスコープのように使うためのソフトウェア「メモリー・スコープ」からなるシステムです。対応機種は、NEC PC9801、9821シリーズです。
その後、松山市のキャビンシステム株式会社に製造・販売を委託して、愛媛県下の高校を中心に350セット程出回っています。
当時の価格は、本体(電圧入力2本・「メモリ・スコープ」付き)9,800円、温度、光、音の各センサーが各2,500円で、すべて注文制作です。
その後数年間、愛媛県高等学校教育研究会理科部会パソコン研究委員会で、実践事例研究や一般理科教員への講習会等を行い、平成8年にはこれを中心にした、文部省主催の情報教育指導者講座(高校理科)の西部地区を愛媛で担当しました。
ハードウェアは、本体をマウス端子につなぎ比較的簡単な回路で実現しており、A/Dコンバータの機能はソフトウェア上で実現しているようです。安価で取り扱いもわかりやすく、生徒実験に十分使えます。
私はこれを使いたいばっかりに、今春新築された内子高校物理教室を設計し、廃棄処分になりかけていたPC9801BX2を10数台を常設してしまいました。
キャビンシステムのホームページにも紹介があります。

報告者より・・・はるばる愛媛県からの参加。古い98ノートのマウス端子に接続してある。センサーからの信号を受けるADコンバーターです。2チャンネルあります。音の振動のグラフなんかもすぐに表示しました(オシロスコープのように)。私は古い98ノートにマジックで書かれた「体感の物理教育」という文字が気になって仕方ありませんでした(^_^;;)


7 愛媛版「理科学習資料CD−ROM」(藤山周治)
平成9年度より、計測システム後の我々の活動として、ブラウザ上で見ることができる生徒向けの教材を作り、CD−ROMの形で提供しました。販売されたもので150枚程度が県内で出回っています。
物化生地および、前述の計測システム関連のいくつかのコンテンツが入っています。
徐々にコンテンツを見直していき、昨年秋からは全愛媛県立高校がネット(ESnet)につながったことから、インターネット上にも掲載しています。ただし、ESnetは内部的に閉じた構造になっているため(外部には出て行けますが、外部からは入れない)、残念ながら県外の皆さんには、ネット経由ではご覧いただけません。
大きい画像や動画が入っているため、今の環境ではまだまだ重いこともあり、今年度、コンテンツを一部見直して再発売する計画です。
一昨日の会では、「送料込みで300円〜500円でどうだろう?」となりました。
今までは1枚1枚自分たちで焼きましたが、大量注文でも入れば業者に委託することも考えています、が、捕らぬ狸の・・・でした、今まですべて。

報告者より・・・物理・化学・生物・地学のいろいろなネタが入ったCD−ROMです。授業などで使うそうです。インターネットでもその一部が公開されているそうで,愛媛県では高校内部から閲覧できます。しかし,外部からのアクセスができないとのこと。


8 電磁タイマーで自由落下実験(川村康文)
電磁タイマーは,京都理化学協会の先輩先生方が,1970年代に,協力して開発されたもので,京都府立,京都市立,私立の各学校にかなりの台数が現存していると考えられます。当時の会誌に,動作原理,製作方法など,詳しく報告されています。
川村が,京都教育大学附属高校に勤務したときに,最初に,泣かされた実験でしたが,ひょっとすると,歴代の教育実習生を泣かせて来たかも知れません(ごめんなさい)。なんと,松森先生が附属高校の生徒だった頃から,使われている,タイマーです。

電磁タイマーは,カセットテープのヘッドの仕組みと同じで,録音用テープに記録させます。あらかじめ無極性の速乾性の溶剤(例えば,四塩化炭素)に,四三酸化鉄の粉末をコロイド状に分散させておきます。この溶剤に磁化したテープを浸すと,(川村氏は「現像」と呼んでいた)と,右写真のように筋が見えるようになります。この筋を,打点タイマーで行うのと同じデータ処理をすることにより,重力加速度の値を求めることができます。
また,加速度運動をする力学台車の加速度計測を行うこともできます。
これを用いた,実験方法は,サイエンスEネットの授業プリントのページに「自由落下」用,「運動の法則」用,が圧縮ファイルでアップされています。
是非,授業にご利用下さい。

報告者より・・・京都教育大学附属高校では何十年も前から使われている器具だそうです。カセットテープのヘッドの仕組みと同じで,録音用テープに記録させます。それに四三酸化鉄の粉末をつける(川村氏は「現像」と呼んでいた)と,右写真のように筋が見えるようになります。これで重力加速度を測定するのだそうです。


9 ペットボトル偏光顕微鏡(西山佳奈)
「ペットボトル顕微鏡」というペットボトルのねじふた部分とガラスビーズを使った顕微鏡の工作自体は,かなりいろいろなところでなされています。(村田さん談)
 そこで,地学を専攻している者としては,是非これを「偏光顕微鏡にしたい!」と思い立って,偏光顕微鏡に改良しました。しかし,いろいろと条件を考えました。
 1.オープンニコル(いわゆる顕微鏡の状態)とクロスニコル(偏光板を使って鉱物を偏光させて観察する状態。二枚の偏光板を重ねて真っ暗になる状態です。)を手軽に比較できること。
 2.岩石薄片試料を回転させられること。(回転させるとクロスニコル下で鉱物の消光等の様子が見られるから)
 ・・・このような条件をすべて満たした,ペットボトル偏光(岩石)顕微鏡は写真のようになりました。

・外側装置に入れなければ,岩石薄片を顕微鏡で拡大して観察できます。 
・外側装置にはめると,偏光顕微鏡の状態で,きれいな偏光が観察できます。
・外側装置にはめた状態で,ペットボトルの部分を回転させますと,鉱物によってキラキラと光ったり,消えたりします。
留意点など:かなり視野が小さいので,花崗岩などの深成岩は避け,玄武岩を使って薄片を作りました。
 
<感想>
 この工作は,3月の春の実験教室で子ども達に作ってもらいました。(薄片は用意しましたが。)なかなか好評だったようです。岩石を透けるほど薄くしたものを見たのも初めてだったようですし,それがキラキラときれいに光るのを見て感動してくれたようです。実験教室ではテーブル毎にその岩石が取れるところの様子の写真などをおいて,その見た目の大きさの違いを感じてもらったりしました。 まだ,他の散乱光が入ることがあるので,外側装置部分にもう少し改良を加えて発表したいところです。


報告者より・・・今年3月24日に行われた「おもしろサイエンス実験教室」にて披露。例会でも岩石薄片の偏光顕微鏡像を見ることができ,あの美しさがこんなに手軽に観察できて,本当に素晴らしい。ペットボトルのふたには小さな穴があり,2mmのビーズが埋めてある。それを2枚の偏光シートではさんで観察する。右の写真は花崗岩の岩石標本。西山さんはこれを1時間で作り上げるとのこと。もうプロの領域。
こちらのページ(このペットボトル偏光顕微鏡で撮った写真ではありません)も参考にして下さい。

10 等速直線運動と力 <慣性の法則> (萬處展正)

写真では見にくいですが,左下にバネばかりが接続されています。
等速直線運動をしている物体に加わる力はつり合っているということを示す実験。滑車を通じて100gのおもりがつり下げられています。慣性の法則を示す実験は数多いが,等速直線運動中に示す実験はあまり見あたらないので開発しました。
開発中にたまたま来室した生徒に,「一定の速さでおもりを引き上げるとき,バネばかりの目盛りは何gをさしていると思うか?」と尋ねて考えてから実際にさせてみると,予想と違う結果にややびっくりしていました。


11 小ネタ集(遠山秀史)
蚊除け器
最近、ホームセンターに置かれている音波式の蚊除け器です。500円以下で、何種類か売られているようです。
私は超音波が出ているものと勝手に考えて紹介しましたが、周波数は最高11000Hzで、超音波とは言えません。製品の説明を読んでも「音波式」と書かれているだけで、「超音波」の文字は一切書かれていませんでした。


回折格子説明器
10年以上前に香川の矢野淳滋先生が物理教育学会で紹介されていたのを参考に自作し、授業で使っているものです。
光の波面が描かれた4枚のプラ板が、回折格子にあたる1枚のプラ板にボタンで留められており、4枚のプラ板が揃って向きが変わるようにできています。4枚のプラ板がある方向に向いたときだけ、それぞれに描かれた光の波面が一致し、光が強め合っていることが、視覚的によく分かります。

これは何??
桂高校の物理準備室にあった器具で40年余り前のものです。何だか分からず、例会で紹介したところ、中村理科の島さんからすぐに答えが出ました。さすが教材屋さん!!
地学や化学でも使えそうな教材です。さて、何でしょう? 答えはこのページの一番下に。

報告者より・・・左の写真は蚊が寄りつかないという虫除け。超音波を出すとのこと。イージーセンスで計ってみると,やはり出ていました。(なぜかニッコリする遠山氏) 回折格子による光の干渉の仕組みを教えるための教具は手作りで,なかなかのすぐれものです。
準備室にある器具で,何だろうというもの。皆さん分かりますか? 当日は中村理科の島さんが即答されました。一同その速さにびっくり。カタログを見ると確かに使い方もありました。


12 サイエンスEネットの今まで,そしてこれから(全員)




答えは、露点湿度計です。
内部にエーテルを入れて、空気を送り込みエーテルを気化させることによって温度を下げていきます。容器表面のステンレス板に水蒸気が付いて曇ったときの温度を調べて露点を求めるそうです。