サイエンスEネット 第15回例会

【参加者】森,松森,長濱,川村,鈴木,薬師川,松本,工藤,奈良学園中学校生徒13名,一木,桜井,萬處, 
【日時】2002年12月14日 午後3:00〜


プログラム

1.弊社動画教材「中学校理科『おもりの秘密』」 (森@旺文社デジタルインスティテュート)
2.スペースシャトルの宇宙メダカ (薬師川@高校生)
3.自然放射線計測実験の発表 (奈良学園中学生)
4.ハーブティーの七色変化 (一木)
5.吹雪のペットボトル&反射波の位相 (萬處)
6.界面の不思議 (長濱)

  参加者の感想


始まる前のひととき・・・

マルチメディア教材 「おもりの秘密」 (森@旺文社デジタルインスティテュート)

発表タイトル:
  弊社動画教材「中学校理科『おもりの秘密』」のご紹介。 ※川村先生作による教材です。

発表時間:約45分 ※長めで失礼しました。

発表内容:
 ・『おもりの秘密』に収録されている教材をプロジェクター(一部PC)を通して、ご覧いただきました。
 
 ・動画教材には、「ふり子の等時性」「サイクロイドの不思議」など、全6テーマがあり、そこに収録されている動画のほとんど全てを、中学生のみなさんに見ていただくことができました。

  ・例えば、ふり子を吊るす糸の長さを固定し、振り始めの角度を変える実験の様子を撮影した複数の動画を見ていただきましたが、「5°の時はどうなる?」 「これが45°ならどうなる?」 などと、次に提示されるふり子の周期を予想しながら当てる(もちろん、その理由を考えることも含め)ことで、盛り上がりました。
   
  ・子どもたちの意見に説明を加えてくださった川村先生、ありがとうございました。
  
発表を終えて:
  中学生のみなさんに、直接教材を見ていただく機会というのは、なかなかないのですが、今回、初めて見ていただいて、こんなに、盛り上がってもらえるんだと、正直びっくりしました。
   #川村先生を信じていなかったわけではないのですが・・・・。

良い経験をさせていただきました。中学生のみなさん、先生方、ありがとうございました。

【web報告者より】
整ったプレゼンテーション,はきはきとした口調はさすがのもので,それだけでも得るところ十分なのですが,なによりパソコンを使って探求的な学習(コースワークかな)に取り組め,中学生の反応も良かったように思いました。


.スペースシャトルの宇宙メダカ (薬師川@高校生)

私は「青少年による日米共同宇宙実験」に連携研究者として参加しています。そのことについて14日例会で発表させていただきました。
以下、その内容です。

1.実験内容
 (1)微小重力環境下(打ち上げたスペースシャトル内)でのメダカの発生の観察
 (2)微小重力環境下で孵化したメダカの稚魚の遊泳行動の観察
 (3)地上に帰還後、稚魚の1G環境への適応の観察
 
 この実験の様子はカメラで記録される。それを地上対照実験と比較、解析。
 スペースシャトルの打ち上げ期間はは1月16日から約2週間の予定。
 私は地上対照実験用のメダカを飼っているのですが、なかなか産卵してくれないので困っています。どなたかアドバイスください。
 
2.実験装置
 打ち上げる方は、水を満たした密閉容器に水草、バクテリア・ゾウリムシなど、タニシ、緑藻類などをメダカの卵と共に入れた閉鎖系の中で実験する。地上対照実験用は密閉をしない簡易エコシステムで実験する。
 実験に関するサイトの写真や図を見てくだされば雰囲気わかると思います。

3.メダカを使う理由
 1994年に向井宇宙飛行士らが行ったミッションで産卵・孵化・行動が観察されているため、微小重力環境下での実験に適しているのが確認済なこと、採卵のコントロールが人為的に出来ることなどが利点。1994年のミッションは実験装置が完全な閉鎖系でなく、また、稚魚の観察は詳しくされていなかった。

ほかに何か話した気がしますが、よく覚えていません。すみません。
↓これがこの実験に関するサイトです。
http://www.justsap-me.org/stars/research/experiment.html

あと、私はこのサイト↓も参考にさせていただいてます。
http://cosmo.ric.u-tokyo.ac.jp/SPACEMEDAKA/J.html
1994年の実験に関するものですが、成魚は0Gから1Gに帰ったときすぐにはうまく泳げなかったのに、稚魚はどちらにも適応していたのが興味深いと思います。あと、私はルーピングが面白いと思いました。

次の例会で、メダカの実験の結果を発表できたらいいなと思っています。

【web報告者より】
とってもしっかりした発表でした。実験はまだ始まっていないので,次回の例会でその進展状況を報告して欲しいなぁ・・・


.自然放射線計測実験の発表 (奈良学園中学生)
  
学校内のいろいろは地点で,β線やγ線の24時間計測を実施。
データを分析して半減期を求め,放射線源の核種を特定しようとする試み。
プレゼンテーションもしっかりしており,グラフによるデータ分析も中学生とは思えない内容で,参加者は皆びっくりしました。

このホームページ中にある,ここには奈良学園中学生の発表内容がすでに報告されています。例会での内容とほぼ同等でした。
またここも参考になります。

.ハーブティーの七色変化 (一木)
  
 ハーブティーの一つである、「ブルーマロー」を用いて、pHの変化による色の変化を見る実験。ただ、色の変化を見るだけでは面白くないので、虹の七色に近づけるように薬品の種類・濃度や抽出する温度を変えてみる。できあがりが非常にきれいなので、高校生の実験でも非常に興味を示す実験の一つです。
 小学生・中学生でも難しい色素名などを出さなければ楽しめる実験。
 今回の例会ではできませんでしたが、最後にガラスコップにハーブティーを入れ(青色)、レモン果汁を落として色を変化させてからいっきに飲んで実験終了。


【web報告者より】
ブルーマロー(和名:ウスベニアチアオイ)というハーブを使い,その抽出液を試験管にとって薬品などを入れることにより,美しい色を作り出す実験。本当に美しいです。見ていた中学生たちも,思わず歓声をあげるほどでした。
こんなページがありました → その1 その2 その3 その4 その5(good) 


.吹雪のペットボトル&反射波の位相 (萬處)
 (1)吹雪のペットボトル

ペットボトルに小さな発泡スチロール球を少量入れ,帯電させた塩ビパイプを近づけるとおもしろい動きが見られます。以前に「嵐のペットボトル」と書きましたが,「吹雪の・・・」にしました。中学生には盛況だったと思います。

 (2)反射波の位相を説明する道具

固定端と自由端で反射波の位相が異なりますが,通常の授業では波動説明器を使って実演と共に説明しますね。しかし波動説明器は途中で止められません。
この道具を使うと,ゆっくりしたり途中で止めたり,少し戻ったりといったことが簡単にできます。


.界面の不思議 (長濱)
  
・粒子径の大きさと身の回りのもの。
・ビールの泡の不思議。泡の大きさを実際に透過型電子顕微鏡で測定したものの紹介。
 なかなか泡って身近にあるわりには、取り上げられていないが、実は、ビールの泡には炭酸の抜けを抑えたり、のどごしを良くしたりします。では、なぜビールの泡が消えにくいものなのか。。。例会ではあまり言いませんでしたが、麦芽の成分、ホップの苦味成分がコロイド状に分散し、炭酸ガスの気泡が出来、これらの物質が気泡の表面に集まって密度の高いものとなり、粘りのある膜をつくっているためです。
泡は、同時にビールの酸化も防いでいるのです。

・うすいせっけん水とエタノールとを混ぜてふるとできる消えにくい泡の実演。
ふつうの水はふって、泡ができてもすぐに消えるが、この液は、ふったあとも、かなり小さい泡が分散している。
    <写真はのちほど掲載予定>

・シュルツ・ハーディの法則の説明。
泥水しかないところで、どうやって水を飲むかという小話。「凝析」を使う。
粒子の周りには負の電気を帯びているので、この電気を打ち消しあえば、粒子は電気的な反発作用による分散ができなくなり、分子間力により凝集して沈殿する。このときに電解質を泥水に入れると水が透明になり、粒子が沈殿するが、できるだけ、入れる電解質は少ないほうがよい。あとで飲むのだから。。。
+4>+3>+2>+1> の順に陽イオンが多価になるほど、また、その電解質の溶液の濃度が大きくなるほど、すぐに凝集・沈殿する。
調べてみると面白いかもしれませんよ。

・牛乳からたんぱく質を分離する。
使った牛乳がかなりの低脂肪のため、食塩を入れてみたが、塩析しなかった。そこで、OHPにて、分離したときの図を紹介した。また、薄い牛乳溶液で、レーザーポインタを使って、ブラウン運動と、粒径の大きさによる移動距離、この現象がいろんなところで、注目されていることも説明。

・天然水(純水)でもできるチンダル現象
きれいな水ではできないチンダル現象も、一生懸命泡を立てたあとに通してみると、くっきり見えることの紹介。これは、気体−液体 の界面の発生により、見た目に大きな泡はすぐに消えるが、小さいものは残って、分散しているため、光を散乱する性質を少し保つので、光の通り道が見えることを紹介。

【web報告者より】
「ビールの泡」の関連・・・その1 その2 その3 その4(その4の親ページ→コロイド関連の美しく珍しい写真が多い


参加者の感想 MLより転載

●奈良学園の生徒さんたちの発表のすごさに圧倒されていました。調査ももちろんすごいな!って思いましたが、何より、考察がすごかったです。難しいことをやってるなって思いました。logが出てきた時点で私には理解できませんでした・・・。
最後のどの元素かを考えていたのがすごいって思いました。初めて、ビスマスというのを聞きました。。。ビスマスって何? なんであんなグラフになるの? という疑問ばかりでした。。。
理解はいまいちというよりほとんど出来てませんでしたが、すごく楽しかったです。

● 例会について、感想。
一度にいろいろなジャンルの実験が見られて楽しかったです。
・ハーブティーの七色変化は鮮やかな色でとても気に入りました。
・自然放射線計測実験は私にはちょっと難しかったですが、しっかりした発表に感心しました。
・おもりの秘密は、曲線と振り子と玉を転がす実験のつながりが理解できなかった部分あるので少し勉強してみたいと思いました。
・反射波の位相を説明する道具、いいなーと思いました。わかりやすかったです。
・水をふった後の泡でチンダル現象ができるっていうのはびっくりでした。

●中学生の発表内容には、かなりのレベルの内容で関心致しました。もっと、まとめると学会にも出せる内容でしたので、これからのまとめが楽しみです。生徒からも、ものすごい、楽しさややる気が伝わってきました。
同様に、中学生の反応がものすごくよく、先生方の実験に関しても楽しく観察したり、話したりできましたね。若い力はものすごい偉大です。
一木先生の色ネタも、楽しかったです。車で持ちあるいているとの話を聞いて、見習って僕もしようと思いました。他にも、電気泳動もしたりすると、もっと色が変わるかもしれませんね。酸化・還元反応で。。。(たぶん)
萬處先生の実験のプラス、マイナスの違いを少しつっこんで調べてみたいとほんと思いました。
すずっちの何気ない質問でしたが、ものすごい大事なことです。なぜ、どうしての、科学の不思議の第一歩ですね。
他に、sin、cosの波の戻りも大変、わかりやすかったです。物理も楽しいですね。

●第14回例会参加者の皆様お疲れさまでした。
感想ですが,自然放射線の測定に関する研究について(奈良学園中学校)
本校の授業でも以前,物理,地学ともに取り扱ったことがありました。
この手の題材においては自然放射線の測定値の多少と地域性等の考察をすることがベースにある。それをもとに半減期から核種の推定へと研究を深めておられるあたりが科学の方法を実践しているよい例と感じた。中学生の研究としてはすばらしい物と思います。各先生方のアドバイスをもとにさらに改善されますことを期待します。

●本日は,ヤングスターズ・パワーを全面に感じました。奈良学園中学校の生徒のみなさん,京都教育大学附属高校の生徒のみなさんの発表があって,本当に素晴らしい例会となりました。
これからも,ヤングスターズ・パワーに負けないように,アダルト・パワーも,加速しなくちゃと感じています。