学習指導案3

指導者      :○○ ○○

指導日時     2000年 6月○日月曜日 5時限

指導場所     :コンピュータ教室

指導学級(講座) :物理2○(男子13名,女子17名,計30名)

指導教官     :川村康文先生

T 単元

     「放物運動」

    

U 単元設定の理由

・単元観

空気抵抗が無視できる条件の下、一様な重力がかかっている地平面上で物体を投射したとき、物体の運動をどのように捉えていけばよいのかを学ぶ。運動の法則を用いて数学的に記述し、理解することを目指す。

重力による物体の運動は日常的な現象であり、陸上競技で飛距離をのばす等、スポーツを始めとする普段の我々の行動にも密接に関わっている。その一方で、日常的であるだけに、運動が質量に依存する等、強固な思い込みが持たれ易く、事実が正確に把握され難い面を持つ。それゆえ、重力による物体の運動の法則性を知ることは、日常の諸所の局面で役立つであろう。

また、運動をいかに理解するかという問題は、科学において分野を問わず現れてくる問題である。一方向に一様な力がかかっている場合の物体の二次元的な運動という簡単な運動を数学的に記述することは、今後その問題に対処していく上で基礎になることであると考えられる。

 

  生徒は理科系で物理を選択した二年生で、理科に対する関心は概して高いものと思われる。授業に望む態度は真剣であるといってよいだろう。しかし、生徒というものに一般的に見られる傾向かもしれないが、解らない部分を自由に質問することはできないようである。

生徒はこの授業までに、「変位と速度」、「加速度」、「力の基本的な概念」、「運動の法則(慣性の法則, f = ma, 作用反作用の法則)」、「自由落下」、「下方投射」及び「上方投射」について習っている。また、二次までの関数と三角関数、ベクトルの基本的な概念は一応習得しているが、計算には慣れていない様子で、不安そうにしていることが多々ある。

 

・指導観

  放物運動の性質を実際に目で見て理解してもらうことを第一の目的とする。そのため、あらかじめ数式によって抽象的に議論することを避ける。Visual Basic のプログラムによるコンピュータシミュレーションを体験することにより、放物運動の特徴を生徒自ら視覚的に捉えられるであろう。実習中は生徒のサポートをする事を心がけ、あまり多くを教えてしまわないよう注意する。最終日はコンピュータ実習によって習得していると思われる内容の確認に主眼をおく。

V 単元の目標

W 単元の資料・教具

教科書、参考書(「エレガンス物理」)、コンピュータ(NEC Mate NX MA23DFujitsu FMV 6366 CL2c)、キーボード、マウス、大型モニタ(NEC)2台、ディスプレイ、プリンタ、プリンタ用紙、Visual Basic Version 6.0、プログラム放物運動Ver.2.exe”(MA23D)放物運動Ver.3.exe”及び放物運動Ver.4.exe”(FMV)

X 単元の展開計画

1時限   水平投射,斜方投射(導入)

2,3時限 斜方投射(コンピュータ実習)

4時限   斜方投射(コンピュータ実習),斜方投射(理論)―――本時

Y 本時の指導計画

 1.小単元名

       「斜方投射(コンピュータ実習),斜方投射(理論)」

2.本時の教材観,生徒観,指導観

・本時の教材観

指導者の製作による Visual Basic Version 6.0 のプログラムを用いた放物運動のコンピュータシミュレーションを行う。今回は前回のプログラムに少し手を加え、Ver.4となっている。変更点は、「印刷」をクリックすると、MsgBoxが表示されるようになったことである。また、名前が記入できるようになっている。それ以外は前回のものと同じである。

本時後半には、斜方投射の少し詳しい説明が行われる。これを学ぶことによって、空気抵抗を無視し、一様な重力加速度がかかっている場合の、二次元的な運動を数学的に記述することが可能になる。つまり、本単元の目標が達成されると考えてよい。

条件が理想的であるとはいえ、斜方投射は、物を投げるといった極めて日常的な状況でも生じる運動である。我々が地球上で生活していく以上、重力の束縛からは逃れられない。それゆえ、何をする際にも重力のことは、意識的、無意識的を問わず考慮されることになる。運動の数学的記述の利点は、ひとつにはより精確な予測が可能になることである。だから、斜方投射の数学的記述は、広範な応用が可能であろう。

・本時の生徒観

コンピュータに慣れている生徒と、慣れていない生徒の差が激しいようである。前回、こちらから指示する前にファイルのコピーを行っている生徒がいた。しかし、その一方で、操作方法がなかなか飲み込めずに右往左往している生徒もいた。また、4限後半に遊び始めた生徒がいたが、インターネットを見ていた生徒と、立ち話をしていた生徒が対照的である。

同じことが課題を理論的に解く際にも言える。一方で、積極的にノートに数式やグラフを書いている生徒がいる。その一方で、分からないとぼやいている生徒がいる。しかし、レポートを見るまでは、どちらが良いかを判断するわけにはいかない。後者の方が実験家には適している可能性もある。

いずれにしろ、考えるという行為を、未だ特別な行為として捉えている生徒が多いようである。指導者は前回に、「分からないという言葉は、一週間ぐらいは考えてから言うものだ」、と数人に言った。すると、そんなとんでもないこと、というような反応をした生徒がいた。「考える」ことは、彼らにとって、それ程抵抗感があることなのだろうか。

 ・本時の指導観

基本的には前回と同じ。今回はそれに加えて斜方投射の理論を概説する。本単元は、レポート課題を解くことができればその目標を達成できたものとする。従って、理論の説明は、課題が解けるようになることを主眼において行う。

単元全体の纏めとして、レポートを提出してもらう。重点的に見るべきポイントとして、幾つか挙げておく。タイトル、氏名、実習日、目的、理論、使用した機材、実習方法、結果、考察、感想といった、書くべきことを整理して書けているか(レポートの形式)。どのような目的意識を持って実習を行ったか。課題に対し、どのように取り組んだか(正答に辿り着けたか否かより、どう解こうとしたか)。この実習をどのように捉えているか。これらの点を、専ら、生徒が指導者の授業にどのように反応したかを捉えよう、という態度で見ていく。

その一方で、論理的な思考で課題を解いているか。正答にたどり着いたかもきちんと見るよう心がける。古典物理のものの考え方を習得できたか否かも、重要なことである。

3.本時の目標(前回と同じ)

4.本時の資料・教具

  プリント「コンピュータ実習の手引き」、筆記用具、コンピュータ(Fujitsu 6366 CL2c)、キーボード、マウス、プリンタ、プリント用紙、Visual Basic Version 6.0、プログラム放物運動Ver.4.exe”

5.本時の展開

時間、段階

学習内容

教師の活動

生徒の活動

留意点

導入

5分/50

挨拶

出欠確認

挨拶をする

出席をとる

挨拶をする

返事をする

展開1

5分/50分

実習の準備

「プログラムを作り直したので、もう一度コピーして下さい」

kyotohs-sv1のstudents(S:)」、「理科」、「川村」、「授業用開発ソフト」フォルダに入っている放物運動Ver.4.exeを、Dドライブにコピーさせる

Dドライブの放物運動 Ver.4.exeを立ち上げさせる

 

 

コピーについての注意

「印刷するのはコピー機の電源を入れてから」「コピー機は席の前後で分かれている」「『今からコピーします』と宣言して下さい」「クリックは一回だけ」「出てくるまで待つこと」

 

コンピュータを立ち上げ、放物運動Ver.4.exeを、Dドライブにコピーする

マイコンピュータかエクスプローラで、放物運動Ver.4.exeを立ち上げる

 

この作業をしておかないと、皆が一斉に同じファイルを使おうとするので大変なことになる

 

情報は一度サーバに送られてからコピー機に送られる

コピー中に電源を切ると、次に電源を入れたときにバグを起こす

何かあったらサーバに連絡する事

 

展開2

20分/50

課題に必要なデータの採取

机間巡回する

ひとつめの課題に関するアドバイス

「同じ初速で同じところに物を投げるとき、低く投げるやり方と高く投げ上げるやりかたがある」「真上に投げ上げた場合水平投射のときと同じところに」等

二つめの課題に関するアドバイス

「初速度を同じ間隔で変えていけばよい」

t1,t2は初速度に、h,x1,x2は初速度の二乗に、比例して増加していく

三つめの課題に関するアドバイス

最大飛距離を与える仰角を探すときに「同じ初速度で、仰角を間隔一定で変えて試行してみる。遠くまで飛ぶ仰角の範囲を見つけたら間隔を細かくして試行してみる」「課題1の結果から推測できる」

余裕のありそうな生徒には、

「データを多く採りグラフを描くと、より実験らしくなる」

四つめの課題に関するアドバイス

「グリッドの単位、投射点の高さ、初速度に注意」「課題3と同じ仰角にはならない」「同じ初速度で、仰角を間隔一定で変えて試行してみる。遠くまで飛ぶ仰角の範囲を見つけたら間隔を細かくして試行してみる」

五つめの課題に関するアドバイス

この課題の答えをデータから帰納的に求めるのは、少々無理がある。定性的なポイント(落下点の状態と仰角の関係、軌道のグラフの形、等)を視覚的に捉えておけば良い

はやく終わった生徒がいた場合、その結果を吟味する

十分な結果が得られていると判断した場合、自由落下、下方投射、上方投射、水平投射などのシミュレーションを勧める(スポーツと関連づけるとよい)

だいたい目途がたったと思ったら、終了させる

 

シミュレーションを行う

指導者のアドバイスを受ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終了する

指導内容はあくまでアドバイスであることに注意

プリンタには随時目を配ること

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スポーツと関連づけるとよい

展開3

15分/50

斜方投射の理論

「初速度の水平成分と鉛直成分は、

vx0 = v0 cosθ0

vy0 = v0 sinθ0

加速度は鉛直方向にのみ g かかっているので、t = t での速度の水平成分 vx と鉛直成分 vy が求められる(速度図を書くと良い)

速度が求まると、t = t での物体の位置、x, y t の式で求められる(理論には、水平投射まででやってきたように、軌道のグラフを描く)

両者から t を消去すると、軌道の式が求められる

課題3について

最高点では、速度の鉛直成分が0になっていることに注意。つまり、 vy = 0

となる t t1 である

h y の式に t = t1 を代入すればよい

落下点は、 y = 0 かつ

x > 0 となる点なので、これから、 t2 を求めることができ、 x の式に

t = t2 を代入すると、x2 を導くことができる(軌道の式に y = 0 を代入しても良い)

x2 が求められたら、v0 一定のときにx2 を最大にするθ0 と、そのときの x2 つまり xmax を求めることができる

課題5について

課題3の y の式が、t = 0のときに y = h となるように直せば y の式が求められる。即ち、

y = (課題3のyの式) + y

である

y = 0, x > 0 の条件で式を解いて、そのときの時刻 t3 を求め、それを x の式に代入すれば x3 は導くことができる(軌道の式を求めて、そこから解いてもよい)

 

話を聞く

ノートをとる

質問する

独力で課題を解こうと思っている人がいれば、それは尊重したい。ヒントが欲しい人だけ聞いてもらうようにしてもよい

ここでは、課題を解くことを主な目的として説明する

時間もないので、グラフ等、実際にかくのは生徒に任せる

まとめ

5分/50

レポートについて

 

 

 

挨拶

「レポートの締め切りは6月26日(月)

まだシミュレーションが必要な人は、昼休みや放課後にやっておいてください」

時間があれば最後に一言

挨拶をする

 

話を聞く

指示をメモする

 

 

 

話を聞く

挨拶をする

6/27(火)に受け取りにくる

 

6.本時の評価(前回と同じ)

 

7.本時の指導内容のまとめ(板書事項)

 

Z 単元の評価