京都教育大学附属高校物理・地学共同研究例会と共催
日時 平成16年3月13日(土)16:00〜19:00
場所 京都教育大附属高校 物理教室
内容 1.風力発電機の報告(桜井昭三さん)
2.水電解燃料電池両用キット”水空電気(みずからでんき)”
  (西野田電工(株):藤本さん、末政さん)
3.風車のサイエンスバトルビデオ(川村康文さん)
4.天体スペクトルを見る(小野則子さん)
5.新製品の発表(中村友香さん)
6.科ボ研の北野先生ご紹介のトランプ手品
  (サイ・ステビンス・システム)の練習(角川佳久子さん)
7.事務局より連絡
  『春レクの内容説明』『さわやか実験教室表彰式』
  『2003年度サイエンスEネットで一番活躍された桜井さんへ感謝状』(松井真由美)
参加者:
川村康文、松森弘治、桜井昭三、小野則子、中村友香、藤本和子
末政(西野田電工(株)飯田(西野田電工(株)西恭兵、
大見祐佳、角川佳久子、高木淳子、長濱聖、松井真由美
(14名,敬称略)

1.風力発電機

京都府からの助成金を,有意義に使わせて頂くことができて,とてもよかったです。桜井「鉄人」の頭の中では,次々に風車が進化し続けているようです。いよいよ,桜井名人を,「風車の鉄人」と呼ばして頂こうかと思いました。
川村

2.水電解燃料電池両用キット”水空電気(みずからでんき)”

平成15年度,経済産業省のキットのお披露目を頂きました。3月28日の東京でのイベント「エネルギー教育フェアー2004」で,会場にお見えの方先着50名に,同等品のプレゼントがあるとのことです。楽しみです。
川村
 3月13日(土)京都教育大学附属高等学校(京都市伏見区深草関屋敷町)で行われた「サイエンスEネット」の例会(勉強会)にて、弊社の「水空電気」の製作実演を行いました。
 「水空電気って何?」と思われる方も多いと思います。弊社が平成15年度資源エネルギー庁のエネルギー教育用教材作成・配布事業(高校に配布)に採択された固体高分子型水電解・燃料電池両用キットの製品名です。水を電気分解して水素をつくり、その水素を使って燃料電池を作動させ電気を発生させるキットです。水から電気を起こす、水と空気(酸素)から電気を起こす、自らの手ですべてつくる、これらの意味から水空(みずから)電気と名付けました。
 さて、実演ですが、最初からこのキットを製作すると約2時間かかります。今回は30分くらいでということでしたので、事前に一部組み立てて臨みました。それでも皆さんが熱心なので、ついこちらも力が入り結局1時間近くかかってしましました。
 特に電極接合膜を家庭用のアイロンで接合する場面や、最後に燃料電池を電子オルゴールと接続して音が出た瞬間などは、皆さんが興味深く見守ってくださり拍手も頂戴しました。また、たまたま部屋にあった小さな風車につなげて回った時や、燃料電池に一瞬電気を流すと(電池を接続)一時的に電圧が上がって燃料電池がパワーアップした時も会場内が大変盛り上がり、楽しくご説明する事が出来ました。
 会社の外で実演するのは実は今回が初めてでしたが、熱心な皆さんの適切かつ鋭い質問や暖かいサポートにも助けられ有意義な時間を過ごせました。これを機に、実演方法や内容のレベルアップを図っていきたいと思っています。また、そのヒントもいくつか頂くことができました。大変有難うございました。これからも宜しくお願い申し上げます。
藤本

3.風車のサイエンスバトルビデオ

こちらは,第27回例会・長野理科Eネット第3回例会で,長野市立櫻ヶ岡中学校の岡村先生が発表になったサイエンス・バトル「風車を作って風力発電」のビデオを公開しました。明日,3月14日に,CSサイエンスチャンエルで放送とのことです。
川村

4.天体スペクトルを見る(小野則子さん)

小野さんの見事な研究に脱帽です。素人が,とおっしゃいますが,人というのは,やる気をもつと本当に素晴らしい研究が進むのだなと,感動しました。小野さん,10年かけて,博士号という,話になりましたが,10年後には,是非,期待申し上げます。
川村
1.はじめに
 天体スペクトルに関心を持ち、岡山天体物理観測所の観測データに接するようになったのは、1998年 8月のことだった。ごく一般人である私が天体スペクトルデータに向き合う、そのきっかけを与えて下さったのは、堺市教育センターの片平順一先生です。その頃、私は科学館サークルで相対性理論と量子力学を勉強していた。宇宙に興味を持ち、科学館に出入りしては、探究心で満ち溢れていたのである。そんな時、片平先生から天体スペクトルデータを見ることができる、素人にでも出来る簡単な作業があると聞いたのである。それは、科学館の加藤賢一先生がはじめていたプロジェクトだった。科学館の展示場でも、何枚かの天体スペクトルを見ることは出来たが、私はもっと沢山見て、スペクトルを見比べてみたかったのである。
 
2.天体スペクトル(恒星スペクトル)
 岡山天体物理観測所で得られてたクーデ分光乾板データ 408枚を見ることができた。これは大阪教育大学の定金晃三先生が撮影されたものです。研究分野の関係でA型特異星が多い。データは写真乾板である。今ではCCDを使用するようになっている。聞くところによると、写真乾板は青色に敏感というもので貴重なものだ。写真乾板での天体スペクトルは見やすい。2X10 cm の長方形のガラス板[参照1]に、黒く帯びのようなスペクトルが映し出されてる。容易くスペクトルの違いが分る。黒い帯のところが、天体により違うのである。
 写真乾板をマイクロフォトメータでトレースしデジタル化した [参照2]。デジタル化されたデータ (スペクトル図)[参照3]をもとに、特徴的な吸収線をもとに波長づけ同定をした。同定するのに忍耐強さがいった。スペクトル A 型 の特徴である水素のバルマー線やカルシュウムの K 線(3933.660Å) の同定は簡単にできた。また、吸収線の強くでている 鉄・クロム・ケイ素 もわりあい容易に同定できた。吸収線がハッキリでていないものの同定が難しいのである。
 
3.天体スペクトル(恒星スペクトル)同定
 スペクトルの同定には、元素の波長をわかる必要がある。すでに、実験によって調べられている波長(Å)がある。分厚い資料集 [Moore の Multiplet table とその finding list] に元素の波長ばかりが集められている。カルシュウム・鉄・クロムなどの元素ひとつとっても、沢山の元素の波長(Å)があるのだ。
 電子が原子(又は、元素)に束縛されている場合、量子力学的な理由のため、とびとびのエネルギーを持つ状態しか許されない。エネルギー準位というとびとびのエネルギー状態にある、電子は準位を高くしたり、低くしたり遷移することがある。この時、エネルギーの差に相当する波長の光を吸収したり放出する。[参照 4]この光が線スペクトルとなって観測される。これらの線スペクトルは沢山あり、波長(Å)と表示された資料があるのだ。
 
(1) この資料を使っているうちに、元素がどのようにしてできたのか知りたくなった。その前に、元素と原子はどう違うのだろうか。
 
 元素とは、(a )万物の根源をなす究極的要素。例えばギリシャ哲学における土・空気・火・水。(b )化学元素のこと。化学元素とは化学的手段(化学的反応)によっては、それ以上に分解し得ない物質。厳密には、同一原子番号の原子だけからなる物質。金・銀・銅・鉄・水素・酸素・炭素・窒素など。
 原子とは、(c )アトムの翻訳。(d )物質を構成する一単位。各元素のそれぞれの特性を失わない範囲到達し得る最小の微粒子。大きさは 1億分の1cm 。原子核と電子からなる。と、これでなんとなく元素と原子の違いがわかったような気がするが、もうひとつしっくりこない。
 原子を個人、元素を民族にたとえる。民族という言葉が集合代名詞であるのと同様に、元素という言葉も同種の原子の集合代名詞としてとらえるのが正しい。別ないい方をすれば、元素の種類と原子の種類は対応している。
 宇宙間にあるものは「すべて何かの原子からできている」ということを、「すべて元素からできている」といってもよいし、「元素はすべてものをつくるもとである」といってもさしつかえない。と、[元素111の新知識] 桜井弘(編)で知る。些細なことで理解が中断されてしまうのだ。
 
(2) 2002年 理化学研究所よりビデオ [元素誕生の謎にせまる]を頂く。ビデオは、元素の起源を宇宙にあるはずとはじめる。観測・理論・実験の連携によって、最近では、元素を原子核レベルで理解するみちが開けてきた。加速器のなかで元素を合成し、また分解させることも可能になっている。「私たちは、今、元素の誕生と進化の謎を明らかにするときを迎えている。」と、ビデオから元素の起源を知る。太陽系における元素の相対組成など、視覚的に分りやすく説明されていた。
 
4.「かがくとくい星」
 化学特異性とは、化学的な性質がちょっと変わっている星。星を作っている元素が平均よりずれている星のことをいう。太陽や隕石に基づいたデータ標準宇宙組成といわれる、「太陽系」組成に対してずれている組成比の奇妙な星のことである。希少なはずの希土類が非常に多い。
 αDra(ドラコ・りゅう座α星)のスペクトルは [A0III] で普通の A 型星です。この星と波長域4120Å〜4230Å。[参照5]で見比みると、星 78Vir (ビルゴ・おとめ座)A 型化学特異星 [A1pSrCrEu]は、ストロンチュウム(SrII 4215Å)の吸収線が強くあらわれている。また、この星では軽希土類であるユーロピューム(Eu)の吸収線も見られるはず。 元素セリウム・プラセオディミウム・ユーロピュームが特に多い化学特異性(HR7575)と同じ種類だがやや温度が高いらしい。
 21Per(ペルセウス・ペルセウス座)は B 型特異星 [B9pSi]です。78Vir星と 同じく ストロンチュウム(SrII 4215Å) の吸収線が強くあらわれている。ケイ素星といわれており、ケイ素の1階電離イオンの吸収線が2本並んでいるのが特徴。
 特異星は最初から元素分布に偏りがあったわけではない。その星に何か原因があってその星にだけ起こっている現象で、特定の元素が星の表面に浮かんでいるというアイデアがもっともらしい、と、されているようです。特異星は一般に自転速度が遅く、連星系も沢山あるようだ。その光度やスペクトルも変動し、と、いろいろ現象がからみあっているらしい。[参照6]
 
5.おわりに
 天体スペクトルを見て、宇宙の進化を理解したいと思った。そのためには、元素の起源を知りたい。そんな時、サイエンス Eネットで得た情報で、理化学研究所からビデオ[元素誕生の謎にせまる]を頂いた。ビデオは、「核図表を」、「ベータの谷」を3次元面で見せてくれる。分り易いとおもった。天体スペクトルを見るのは興味深い。どの天体も違うスペクトルを見せてくれるのだ。今は天体スペクトルを見るだけで満足している。しかし、天体スペクトル解析ができるようになると、もっといろんなことが解ると思う。宇宙を想像するのは楽しい。科学館サークルで勉強もしよう。その手掛かりを与えてくださるサイエンスEネットに感謝いたします。
 
MLでは貴重な情報を頂有難うございます。

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参考資料
 理化学研究所[元素誕生の謎にせまる]、桜井弘(編)[元素111の新知識]
 第5回天体スペクトル研究会資料集
   [参照1]
 粟野諭美他 1998、宇宙スペクトル博物館(CD-ROM)
   [参照2]・[参照3(CD-ROMでスペクトル図がどのようなものかわかります)]
   [参照・4]
 Moore の Multiplet table とその finding list
 大阪市立科学館 HP http://www.sci-museum.jp/~kato/pub10k1.html
   [参照5]
 大阪市立科学館友の会 月刊「うちゅう」2003.5号
   [参照6]
小野則子

5.新製品の発表(中村友香さん)

シンガーポール製の教育キットをご紹介頂きました。
なかなかの優れものというより,すっかり脱帽になってしまいました。シンガーポールの先生方と企業がタイアップして完成したものとのことです。フロアーの意見としてありましたが,やはり,産学協同研究が必要ですね。日本の場合は,教師は教師集団で固まりますが,それでは,シンガーポールには勝てないなって改めてショックを受けました。
 日本の先生方は優秀ですから,優秀な先生方のお持ちになっている宝物を,企業と連携して,多くの先生方に提供し,授業力のない先生方にも,少しは自信をもって授業をしてもらえるようになれば嬉しいなと思いました。また,授業力のある先生方なら,このようなツールをどのように発展的に利用されていくのかな?と,想像力を刺激されました。
 是非,中村理科さん,今後とも,いろいろ素晴らしい新製品を,お見せ下さるようにお願いします。
川村

6.科ボ研の北野先生ご紹介のトランプ手品

角川さん,素敵なマジシャンになっておられました。僕も,ちょっとマジックをかじってみたくなりました。
川村

7.事務局より連絡

松井さん,いつも素敵な企画をありがとうございます。
 今日は,参加させて頂くことに,すごく感動がありました。松井さんがお書きになった感謝状や花束は,本日は,西君,長濱さん,桜井さん,角川さんがお受け取りになりました。
 みんな活躍されたみなさんでした。心が温まる思いでした。
川村

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