9 本時案
 (1) 主眼

 (2) 展開
 物質が化合するときの質量の比のきまりについて調べる場面で、化合物を構成している原子に着目し、いろいろな物質が化合するときの質量の比を調べ、その結果を化合する原子の数の比や原子量と関連付けて考察することを通して、化合の質量の比は化合物の組成と原子の質量により決まることを見いだす。
 

段階
     
◇ 教 師 の 指 導 ・ 援 助  評価

時間

備 考
学 習 活 動          予  想  さ  れ  る  生  徒  の  反  応



課題を把握し







































まとめ


 

1 学習課題を確認する。
 










2 物質が化合するとき
 の質量の変化から、化 合の質量の比を調べる。













3 実験結果を発表し合 う。


4 決まった質量の比で
 化合する理由について 考えて発表する。











5 本時の学習を振り返 る。




 
 
 
 
◇前時にすえた学習問題を確認し、自分の予想と学習課題を発表するように促す。


◇あらかじめ生徒の予想を把握しておき、予想が 明確でない生徒から、根拠をもって予想できて いる生徒へと指名をし、原子に着目した考えの よさに気づくことができるようにする。




◇銅と酸素の化合では、銅の質量を0.8g、1.2g 、 1.6gと増やして実験を行うように促す。
◇銅と硫黄の化合では、1.2g、1.6g、2.0gの銅 板をあらかじめ用意しておく。
◇鉄と酸素の化合では、0.5g、1.0g、1.5gの丸め たスチールウールをあらかじめ用意しておく。
◇次の観点で机間指導を行う。
 ・安全に配慮して実験を行っているか。
 ・実験器具の使い方が適切であるか。
 ・実験の誤差を把握し、誤差の大きなグループ  には、火力や酸素の量などに注意してもう一  度実験をするように促すとともに、必要に応  じて教師が共に実験を行う。

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ワークシート










銅粉末、スチールウール、銅板、硫黄、酸素、ガスバーナー、ガストーチ、燃焼皿、集気びん、試験管、電子てんびん、薬包紙、薬品さじ、燃焼さじ、三脚、三角架、るつぼばさみ、マッチ、燃えさし入れ、ピンセット、ワークシート

周期表 






電卓




ワークシート




 



 
  【学習問題】    


 
銅と酸素、銅と硫黄、鉄と酸素が化合するときの質量の比は、それぞれ何:何になるのだろうか。 また、どうしてその質量の比で化合するのだろうか。
     
ア どの化合も何:何の質量の比で結びつくのか予想ができない。でも、それぞれが違う比で化合すると思 う。学習課題を、鉄と酸素が化合する質量の比を調べ、そうなる理由を明らかにしよう、にした。
イ マグネシウムは激しく燃えるけれども、銅はおだやかに燃えるから、マグネシウムより銅の方が結びつ く酸素の質量が小さいと思う。だから、3:2ではなく、3:1などの比の値になると思う。学習課題を、 銅は、マグネシウムよりも結びつく酸素の質量が小さい質量の比で化合するのか調べよう、にした。
ウ マグネシウムと酸素が3:2の質量の比で化合したのは、原子量の比が3:2だからだ。銅と硫黄の原子 量を周期表で調べたら、64と32であった。これは2:1になるから、化合の質量の比も2:1になるはず だ。学習課題を、銅と硫黄は2:1の質量の比で化合するのか調べよう、にした。(O生)
エ 最初に銅粉0.8gから調べてみ よう。
オ ガストーチで加熱したら、燃焼 皿が真っ赤になって銅が黒い酸化 銅になった。
カ 質量を測ったら1.0gになった。 酸化銅を細かく砕いてもう一度加 熱をして、すべての銅が黒く変色 したが、1.0gで変わらなかった。
キ 1.2gでは、1回目の加熱で1.5g になった。2回目で完全に黒く変 色させたが、やはり1.5gだった。
ク 1.6gの銅粉を加熱すると2.0gに なった。このことから、銅と酸素 は4:1の質量の比で化合した。
 
ケ 硫黄を加熱して蒸気を出し、そ の中に銅を入れると硫黄と銅が化 合するのだ。
コ 硫黄4.0gを太い試験管の中へ 入れてガスバーナーで加熱したら、 硫黄の蒸気が上がってきた。燃焼 さじに付けた1.2gの銅板をその 中に入れると、光を出して激しく 反応した。
サ 化合してできた硫化銅の質量を 測ったら1.5gだった。硫黄が0.3g 結びついた。
シ 1.6gの銅板では2.0gになり、 2.0gでは2.5gになった。このこ とから、銅と硫黄は予想とは異な り4:1の質量の比で化合した。
ス 最初に、一番小さな0.5gのス チールウールから調べよう。
セ 燃焼さじにつけたスチールウ ールをガスバーナーで燃やし、酸 素を満たした集気びんの中に入 れたら、スチールウールが真っ 赤に燃えた。
ソ 質量を測ったら0.7gであった。 0.7gの酸化鉄になったのだから、 酸素が0.2g結びついた。
タ 1.0g、1.5gのスチールウール を燃焼させると、それぞれ1.4g、 2.1gになった。このことから、 鉄と酸素は5:2の質量の比で化 合するのだと思う。
 

 
化合の実験による反応前と反応後の質量の変化を正確に測定する。        (ウ−D)
 

◇黒板に掲示したグラフに実験結果を記入して発表 するように促し、化合する質量の比を確認でき るようにする。

◇銅と酸素の結果から順に、考察をまとめるよう に促す。
◇原子1個の質量を比較することはできないか問 い、周期表の原子量に着目できるようにする。
◇化合により生成した化合物は、どのような原子 がどんな数の比で結びついているのかを問う。
チ 銅と酸素の化合では、0.8gの銅に対して酸素が0.2g、1.2gでは0.3g、1.6gでは0.4gとなった。このこと から4:1の質量の比で化合することがわかった。
ツ 鉄と酸素の化合では、鉄0.5g、1.0g、1.5gで調べた結果、すべて5:2の質量の比で化合した。 
テ 銅と硫黄の化合では、1.2g、1.6g、2.0gの銅板で調べた結果、すべて4:1の質量の比で化合した。
ト Oさんの予想を聞いて、原子量に着目すればよさそうだと思った。銅と酸素が4:1になるのは、原子 量の比が4:1だからだ。でも、そのように考えると、銅と硫黄が2:1にならない理由が説明できない。
ナ それぞれの化合の、原子、分子のモデルや化学反応式を見返すと、銅と酸素は銅原子1個と酸素原子 1個、銅と硫黄は銅原子2個と硫黄原子1個、鉄と酸素は鉄原子3個と酸素原子4個で結びついている ことがわかる。原子量だけでなく、結びつく原子の数の比も考えれば、説明できそうだ。
ニ 銅と酸素は、原子の数が1個:1個の比で結びつくから、原子量の比64:16を簡単な整数の比にし た4:1が質量の比になるのだ。銅と硫黄では原子の数が2個:1個の比で結びつくから、銅の原子量を2 倍して128:32となり、簡単な整数の比にすると4:1になる。これが質量の比となっているのだ。(S生)
ヌ 鉄と酸素は、鉄原子3個:酸素原子4個が結びつくので、原子量から168:64の比になると思う。簡 単な整数の比にすると、21:8となり、5:2にならない。どうしてだろうか。
ネ 実験した鉄0.5g、1.0g、1.5gに8/21をかけると、それぞれ約0.19g、0.38g、0.57gとなった。この数値 を電子てんびんで測ると、0.2g、0.4g、0.6gと表示されるので、実験結果は5:2となったのだ。(K生)
ノ 物質が化合するときの原子の数の比が決まっていて、それぞれの原子の原子量も決まっているのだか ら、化合の質量の比も決まってくるのだということがわかった。(T生)
ハ 最初は、決まった質量の比で化合する理由がわからなかったけれど、Sさんの発表を聞いて、結びつく 原子の数の比が決まっていて、その原子1個の質量も決まっているのだから、化合する質量の比も決ま ってくるのは当然だと考えることができた。(N生)
ヒ 原子量に着目すれば化合する質量の比がわかると予想できていたが、結びつく原子の比までは考えてい なかった。前に勉強した化合物の化学式からそれぞれの化合で結びつく原子の数の比がわかり、周期表 の原子量と重ねて考えることで、化合の質量の比が決まっていることを説明することができた。(O生)


 
決まった質量の比で化合する理由を、化合物をつくる原子の数の比と原子量を根拠に説明する。           (イ−C、エ−C)

 
◇鉄と酸素の原子量に基づいた比21:8と、化 合の質量の比5:2とを結びつけて考察しよう として悩んでいる生徒には、調べた鉄の質量に 8/21をかけた値を求めるように促し、電子て んびんの誤差について説明する。
◇自分の見方や考え方の変容と、変容に役立った ことについてまとめている生徒の振り返りを紹 介する。



 
     
 (3) 指導上の留意点



 (4) 実証の観点
 
 
・同じ実験をするグループはできるだけまとめて配置し、机間指導をしやすくする。また、銅と硫黄の化合実験のグループは、換気のために窓側の席に配置する。
・硫黄を加熱し蒸気を発生させる実験を行うグループには、二酸化硫黄の発生をできるだけ抑えるために、教師が硫黄の量を限定するとともに火力の調節や換気に気を配る。
・物質が決まった質量の比で化合する理由を見いだせない生徒には、それぞれの化合の原子、分子のモデルを確認するように促し、周期表の原子量を提示する。
・酸化鉄の質量の比について説明できている生徒には、自分の考えを友に説明するように促したり、化合の質量の比から結びついている原子の数の比を問う発展問題を出題したりする。
・物質が化合するときの質量の比のきまりについて、化合物をつくる原子の数の比と原子量を根拠に説明していく学習を展開したことは、微視的に事象をとらえることで化学変化の規 則性を明らかにできた追究のよさを振り返ることに有効であったか。
 
・直列回路や並列回路の規則性と発熱の量とを関連付ける見方や考え方を養うために、1本や直列、並列につないだ
 電熱線の発熱の量について、電熱線の全抵抗の値による電流の強弱によって説明していく学習を展開したことは有効であったか。
・自分の見方や考え方の高まりを自覚できるようにするために、追究を見返し、見方や考え方が変容した過程について
 振り返る場を位置付けたことは有効であったか。
 
                 周期表にあるそれぞれの物質の原子量を見たら、銅が64、鉄が56、硫黄が32、酸素が16であった。 原子1個の質量が決まっていることから、化合の質量の比を説明できるかもしれない。
 
  ◇同じ実験をするグループはできるだけまとめて配置し、机間指導をしやすくする。また、銅と硫黄の化合実験のグループは、換気のために窓側の席に配置する。