第76回例会
<日時>
平成20年10月11日(土)
<場所>
東京理科大学 川村研究室
<参加者>(敬称略、順不同)
川村康文、松林昭、加藤俊博、小林昭智、小笹哲夫
<発表>
1.空気・水・光に関する教材に着目して(松林 昭)
2.紫イモ色変化 (加藤俊博)
3.サボニウス型風車風力発電 (小林 昭智)
4.手作りサボニウス型風車風車発電<お持ち帰り実験>(川村 康文)
<感想>
(川村康文)
第76回例会,少人数でしたが,内容よく,充実した例会ができました。
発表内容は、サボニウス型風車の基本セットを準備し,それに,身の回
りのいろいろなものを探して,それをもちいてサボニウス型風車を,風
力発電ができるように,して頂くというものでした。
途中から,加藤先生の,色変わりたこ焼き(紫イモ入り)の方に,みな
さん,夢中になり,サボニウス型風車での風力実験器は宿題となりまし
た。
サボニウス型風車のほうでは,小林君が,すごく頑張ってくれました。
(加藤俊博)
ムラサキイモのフレーク状粉末を入手できたので、酸アルカリ反応の
指示薬と使ってみた。方法は牛乳パックをリサイクルしたものの上に
ムラサキイモの粉末を少し(1cmφ程度)をわけておき、その上からス
トローをピペット代わりにして調べたい液体を少量たらすようにした。
レモン水や重曹水などで色変化を調べた。私の予想と違っていたのは、
ビール、レモンの皮など。
その後色代わりタコ焼きとしてムラサキイモのフレーク状粉末を使って
4色のタコ焼き(イモなし、イモ入り、イモ/レモン入り、イモ/重曹入
り)を作ってみなさんに試食していただいた。タコは小林さんが近くの
マーケットまで買出し調達。多謝。
サボニウス型風車のほうでは,がんばって発電して携帯ラジオが聞けま
したね。改良してTVも見られるようになることを期待しています。
例会に参加して、京都から参加の松林先生とお会いできてよかったです。
いろいろとお話させていただきどうもありがとうございました。
風力発電セットをいただきどうもありがとうございました。
私はサボニウスにこだわらずに、発電効率の良いプロペラ式で発電実験
機を作ってみたいと思いました。
発電モーターを調べさせていただきましたが、マブチの高級モータが使
われていたのですね。
(松林昭)空気・水・光に関する教材に着目して
エネルギー問題は、政府や研究者に委ねればよいという問題ではなく、私
たち国民一人一人の問題である。この問題を一人一人が考えられるように
なるために、義務教育におけるエネルギー教育はどうあるべきかを検討し
ていくことが大切だと考えている。
ここでは、1) まず「小中学校理科教科書や、教材集にどんなエネルギー
教材があるか」を調査し、
2) どんな新教材が必要かを検討し、
3) 実際に教材の開発に取り組む、
という方針で研究に臨んでいる。今回、この研究したことを報告する。
1.小中学校の理科教科書や教材集の調査
第2期と第6期(現行)の小中学校理科教科書(啓林館)と、「エネルギー教
育のすすめ」2006(エネルギー環境教育センター)に挙げられているエネル
ギーに関する観察・実験等の活動教材を、1項目ごとカードに書き出し再
び並べなおすKJ法により調査・分析した。
<結果と考察>
取り上げられていたエネルギーに関する活動教材のうち、光エネルギーに
関するものは第2期教科書4教材、第6期教科書14教材、エネルギー教育のす
すめ5教材であった。そのうち「太陽光と生物の関わり」に着目した教材
が取り上げられているのは、第6期(現行)の教科書だけで3教材、
いずれも「太陽光と生物の器官(葉)の機能
(光合成)の関わり」に着目したもので、「太陽光と個体の関わり」や
「太陽光と生態系の関わり」に着目した活動教材は無かった。
ただ「太陽光と生態系の関わり」は、活動でなく、図入りの説明があった
(タイトル「生物を通した物質循環」、中2下)。
この結果を踏まえて、筆者は「太陽光と生態系の関わりに着目した活動教
材」の開発に取り組むことにした。
2.ミニボトル生態系モデル教材の開発
「太陽光と生態系の関わりに着目した活動教材」開発の手がかりを探して
いるとき、スウェーデンの中学校のブルンネル教諭が提唱している「ボト
ル生態系モデル教材」(Brunner1996)に出会った。
これは「湿らせた土を入れて密封した20リットル規模のガラス瓶を光の当
たる場所に置き、その中で植物を生育させる」という教材である。
この教材をヒントに、小学校の子どもが取り組める「太陽光と生態系の関
わり」に着目した活動教材」がつくれないかを検討し、ペットボトルを用
いて閉鎖・開放条件と光条件を組み合わせた4条件を比較観察する活動教
材を考えた。
3.開発教材による授業実践
開発したミニボトル教材を適用した授業を実践した。
実験は児童のグループごとに行うようにした(植物はパンジー等、土は市
販の腐葉土を使用)。
対象児童:光華小学校6年生 設定単元:ミニボトル生態系の不思議
(8時間)
期間:2006年10月から12月:2007年10月から12月:2008年10月から12月
単元の目標:
@ 空気と水と土と光がある閉鎖空間(条件A)で、植物はしばらくの間
生育できるが、他の条件(B、C、D)ではいずれも、植物は生育できな
くなることに気付く。
A 比較実験により要素間の関係を探る力を育てる。
B 実験結果について、根拠を示して考察できる。
C A、B、C、Dの各条件と地球との共通点・異質点について考察できる。
D 空気・水・土・光などの微妙な環境条件の中で生きている生き物の命
を大切にしようと思えるようになる。
<経過・結果・考察>
@ 「植物が生きられる」と実験前に予想した人数が最も多かったのはB、
次いでA、C、Dの順であった。実験結
果は、B、C、Dは枯れ、Aは単元終了後も、まだ生き続けている。
A このモデルを生態系の概念にさらに近づけるため、動物としてダンゴム
シをA条件のボトルを作った中に入れた実験も行っている。
B 児童の事後アンケート等から、「光があれば、空気・水・土が閉じ込め
られた密閉空間において、生物がしばらく生きられることへの気づき」
の促しに、効果があったと考えている。
<今後の課題>
次の発展として、地球を宇宙船(地球をコルク栓のビンの中に入れたと考
える)に例えて、地球委員会の命により、私たちは人類史上最大の冒険に
出かけると想定した授業を試み、生態的基本要素、社会の構造、人生の意
義、持続可能な生活などを、小学校児童にも考えさせたい。
(小林昭智) サボニウス風車を用いたエネルギー環境教材の開発について
エネルギー環境教育の授業を行う場合に、授業に即した手軽な実験教材が
少ないという指摘があり、このことがエネルギー環境教育の実践が広がり
にくい要因の1つと考えられる。
そこで、このことへの対応として、適切な実験教材としての風力発電実験
機を開発した。本研究では、身近なものでできるサボニウス型風車風力発
電実験機を開発し、これを用いてラジオを鳴らしたり、蛍光灯をつけたり
する実践を行ったので報告する。
10月11日にみなさんにみていただいた風車は、羽をとりつける位置を120度
ずつずらして三段にしたものでした。材料は10リットルのごみバケツ6個
と自転車のハブダイナモ、木の板です。
一段のときは2wしか出なかったのに三段にすると4.13wも出ました。
これはやはり風を効率よく利用できた結果だと思います。これから土台を
もっと安定させて軸がぶれないようにしたいです。
サボニウス風車というものは数多くある風車の中の一つにすぎません。
現在、実用化されている風力発電における風車の主力タイプは、水平軸の
プロペラ型で羽が2枚か3枚のものである。
風車のエネルギー変換効率は理論的には60%といわれているが、現実には 40
%程度である。
しかし最近では、プロペラタイプの風力発電機に対して問題が指摘されて
いる。プロペラ型風車は、風況のよい場所に設置されるが、この場所がわ
たり鳥の飛行コースになっていることが多く、鳥に大きな被害が出ている。
また、プロペラから発生する風切り音が、地域住民にとって騒音問題と
なっている。このようなことを背景に、最近になって着目されるように
なったのが、サボニウス型風車風力発電実験機である。
これは、垂直軸型風車の1つである。
さて、学校での理科学習や環境学習において、風力発電は学習教材として
よく扱われる。理科学習では、モーターを発電機として利用するタイプの
実験も多く行われる。このとき授業では、そのモーターを風力で回転させ
れば風力発電が可能であると指導し、その実例として実際に稼働している
大型風力発電機が紹介される。
ところが、児童・生徒が、授業中に、風力発電の実験を体験することは多
くはない。自然に吹く風を利用しての風力発電実験を実際に行うことが難
しいため、息で吹いたり、扇風機で風を送って実験を行っている。そのた
めリアリティをもって風力発電実験を児童・生徒に体験させることができ
ないので、学習効果が高い授業にはならないという教師からの指摘もある。
そこで本研究では、手軽に自作することができる風車を利用して自然に吹
く風を利用して、発電実験を行うことができる風力発電実験機の開発を目
指した。