第89回サイエンスEネット例会
日時:2010年8月21日(土)17:00〜23:40
場所:文京の蕎麦処
参加者:蕎麦処店主、女将、川村、坂東、北原、福武、竹内、泉田、松井、松井ジュニア、角川、長尾、中山、藤原、工藤、網倉(敬称略)
発表題目
1.工藤博幸  広島における健康診断特例区域外におけるセシウム
        137の検出について
2.福武剛   レモン電池LEDが点灯する「なでて君」
3.竹内幸一  韓国の科学の祭典では、子供たちが先生役
4.泉田賢一  素粒子反応図のパズル
5.網倉聖子  こだわりの舞きり
6.松井真由美 浮く玉
7.川村康文  毎日ゼミ
8.角川佳久子 角川風飛ぶタネ
特別発表 北原和夫 日本の科学リテラシーについて 
討論   日本の将来の理科教育・科学教育・サイエンス・
              ボランティアのあり方について

例会担当者網倉さんからの感謝
  :文京蕎麦処店主、女将様。美味しいお料理と、温かい触れ合い    の時空間を賜りまして、ありがとうございました。    例会参加一同心から感謝申し上げます。    また蕎麦処店主基金を今回は使用せず、別の機会のときに    役立たせていただきます。
感発表内容:
1.工藤博幸
  今年は被爆65年になります。これまで被爆者援護法
  に伴う健康診断特例区域について、広島県の意見が
  国に聞き入れられずにきました。黒い雨の降雨地域
  として国が認定した地域が広島の意見よりも大幅に
  小さいからです。黒い雨の降雨地域の特定について
  は、これまで聞き取りによる調査を中心として、
  宇陀雨域(1953年、国の認定地域の元となるもので
  現在、平和資料館展示やいろいろな施設での展示資料
  のもととなっている雨域です)、さらに広い増田雨域
  (1989年)と推定されてきました。今年早々、広島大
  の星先生(毎年、生徒達と広島調査に行った時にレク
  チャーをしていただく先生で、被曝線量評価システム
  にも関わられている先生です)のグループが、原爆由
  来のセシウム137を健康診断特定区域の外で検出され
  ました。グローバルフォールアウトとして現在の地表
  面には原爆投下以降の東西諸国の核開発での核実験由
  来によるセシウムが存在するために、被爆当時は存在
  せずに核実験開始までの範囲で建設された古民家の床
  下の土壌から検出されました。この調査と同時期に行
  われた聞き取り調査により割り出された大瀧雨域(増田
  雨域よりさらに広大)という社会的調査と星先生グルー
  プの自然科学的調査の両側面から、現在認定されている
  地域よりも黒い雨降雨地域がかなり拡大されることを
  立証しようとされています。例会では、星先生からいた
  だいた文献資料と奈良学園中高生の広島市内600地点
  以上を?線計測して宇田雨域と比較検討したデータ等を
  お示ししました。

2.福武剛:レモン電池でLEDが点灯する「なでて君」
   RikaTan2010年4月号に三重大の加藤先生、伊藤仁さん、舘伸幸さんが
  紹介されている標記なでて君を紹介しました。
  初めに、胴と亜鉛の小片の間にウェットティッシュ(レモンの代わり)
  をはさんで、青色のLEDが点灯するのを見ていただきました。
  風力発電機の工作に使えるのではないかと、モーターに羽をつけたもの
  を持参して皆さんに試していただきました。モーターは二つ用意してい
  たのですが、つい難しい方(工作でポピュラーなマブチのFA130)で試
  していただきましたのでLEDがともらなかった方もいました。
  工作に使う風力発電用のモーターは24Vで動作するものがいいのだが、
  なかなか手に入れるのが難しいという話をしました。小型モーターは使
  用電圧で5000から1000RPMで回るようになっているのですが、外力で
  モーターを回すと同じ回転数でほぼ使用電圧と同じ電圧を発生します。
  LEDは消費電力が小さいので小型モーターで発電を確認するのに適切な
  のですが、電圧が高くならないと点灯しません。だから、比較的高い電
  圧で使用する直流モーターが適しているわけです。
  簡単な実験と資料を使ってなでて君の動作原理を説明しました。電磁石
  をLEDを介して単三電池1本に接続します。このままではLEDに電流が流 
  れず、LEDも点灯しませんが、LEDをバイパスするようにして電磁石に電
  流を流しバイパス回路を開閉すると回路が開いた瞬間にLEDが点灯しま
  す。これはコイルに流れる電流を急に切断したために発生した逆起電力
  によるものでLEDには一瞬電池の電圧+逆起電力の電圧がかかります。
  なでて君の回路には、コモンモードチョークコイルあるいはラインフィ
  ルターなどの名前で販売されている、コイル(フェライトコアにコイル
  を2つ巻いている)とトランジスタが使われています。二つのコイルの  
  内一つが上記電磁石と同じように逆起電力を発生することにより電圧変
  換を行っており、もう一つのコイルは逆起電力を発生するコイルに流れ
  る電流の変化を検知してトランジスタをオンオフする働きをしています。
  コイルに流れる電流が飽和する前に電流を切るので、効率よく高電圧を
  得ることができます。
  なお、LEDが点灯する電圧はおおよそ0.5V、点灯が観察できる最低電力
  は0.数mWです。また、LEDは常時点灯しているわけではなく点滅を繰り
  返しています(数10kHz)。

3.竹内幸一

4.泉田賢一
  今回はKEKで行っている、高校生向けのサイエンスキャンプ
  の理論研究体験パートの紹介。特にそこで高校生に体験してもらった
  素粒子反応の模式的なパズルをご紹介させて頂きました。
  パズルは、各素粒子と反応をするパートに分かれており、
  ジグソーパズルの様に、パーツの先にでこぼこが仕掛けられていて、
  それで素粒子の反応のありなしを学べる物です。
  また、各パズルの凸凹は素粒子の持っている物理量に対応していて
  その凸凹の法則性を学ぶ事で、素粒子の反応に重要な保存量の
  概念を学ぶ事ができるものです。
  キャンプ中ではパズルで簡単な反応を高校生に学習してもらい
  その後各自学んだ反応ルールから、ちょっと発展的な
  反応図が自力で書ける所までいけるという事をご紹介させて頂きました。
  近年は子ども対象よりも、大人向けの活動に力を入れていましたので
  今回の会合に出席して、子ども向けのボランティアで活躍されている
  方々のパワーはやっぱり凄いなと思った次第です。
  またもうひとつ感じたの皆さんと会話したり、ご紹介頂いた事は一つ
  一つはバラバラでも統合的に1本の線につながるのではないという事
  です。今回お聞きした話の中にも、色々と一方の問題を解決するヒン
  トが他の方のお話の中にあったりしたと感じています。
  各パーツは皆様のご活躍で非常にクリリティが高い物に
  なっていると感じただけに、今度はそこをまとめて
  より総合的にレベルの高い物を目指すステージに
  この分野も来たのではないかと思った次第です。

5.網倉聖子
  戸田一郎先生製作の『火起こし 舞きり』を紹介いたしました。
  いろんなところに戸田先生のこだわりがあり、そのため子どもでも
  ものの5分程度(大人なら1分)で火種ができます。
   軸となる重さ:800g 軽いと木が削れない、重いと摩擦が大きい
   軸の直径:30cm 直径を大きくすることで安定感が得られる。
   軸の素材:セイタカアワダチ草 空木で、維管束がしっかりしている
        1年間乾燥させた太い茎のもの
  形状、重さ、材質、いろんなものを試行錯誤して、子どもでも100発
  火起こしが可能な舞きりです。

6.松井さーん。待っています!!


7.川村康文
  いま、理科大の川村研で行っている理科大好き実験教室について、
  報告しました。
  理科教育学会では、実機で発表しましたが、今回は、パワポでの発表
  でした。そのため、理科教育学会では指摘されなかったことを、ご指
  摘頂きました。
  その1の五十嵐君の力の合成・分解での写真ですが、五十嵐君が、三
  角定規だけでなく、糸までを手でもっているようにみえるとのことで、
  このようなするどい指摘は、やはり、サイエンスEネットのみなさん
  だからと思いました。
  川村研としましては、すでに出版予定に入っていますので、写真の撮
  り直しなどをして、全国の悩める先生方に、お届けできる良い出版物
  にしたいと思います。
  これで、本当に理科好きが育っていますか?という質問も受けました。
  確かに、我々の実験のパフォーマンスしだいによっては、受講生のみ
  なさんに、面白くないとか、わからないという感想をもたれて、理科
  大好き実験教室に通わなくなってしまう受講生もおられるかと思います。
  我々川村研としては、わかりやすい、楽しい実験を開発し続けていく
  必要があると、よく川村自身も認識しました。
  これまでは、学生に対して、とてもよくやってくれていると、ほほえ
  ましく思っていましたが、いま、毎日ゼミ・理科大好き実験教室でや
  っている実験が、楽しくよくわかる実験で、ないなら、これを、来年、
  川村研の卒業生が、中学生や高校生に、この実験をやっても、「先生、
  その実験、わからないよ。面白くないよ。」といわれてしまうことに
  なります。
  是非、本当の目標は、理科大好き実験教室をすることではなく、
  川村研の学生が、4月以降、中学生や高校生にとって、良い先生として
  頑張って行ってくれることです。これが、毎日やる趣旨です。
  もちろん、4回、同じ内容を授業しますので、4回のなかで、進化し続
  けているのですが、たしかに、1回目の受ける受講生の分がいいかげん
  でいいのか?といわれると、その通りだと思います。
  川村自身も、川村研の学生にも、気持ちを入れ替えて頂き、来年以降、
  卒研生自身が教える中学生や高校生のためにと思って、自分の限界を
  高めていってほしいと願います。

8.角川さん、待っています!!

感想
長尾正
 今回は、生徒同士の学び合いがキーワードかなと思いました。
 川村さんは、エネルギー余っている感じでした。
 授業に参加するのが楽しみです。涼しくなったら参加する予定です。
 今回の収穫は、蕎麦処店長さんが twitter なさっていること発見です。

中山由紀子   
 皆さんの発表を聞かせて頂いて学校の授業と研究を改めて頑張らなければ…と思っております。
 ほんとうに、ありがとうございました。

坂東昌子   
 蕎麦処とは実は私は、お店だと思っておりました。というのは、私は定年になったら、サロンを兼ねたレストランを経営してみたいな、という夢を持っていました。そこで、いろいろが方と議論して、何でも議論できる場所にしたいと思ってたのです。いろいろ勉強させていただき、とても勉強になりました。特に、女性陣の元気なお姿に接することができて、これからの日本は女性のパワーがカギだなという思いを新たにします。NPOでも女性懇談会を立ち上げたいと思っています。話し合いではたくさんの方にお目にかかれ、日ごろメール上でのご意見でお名前だけは知っている方々に、直接お会いできてよかったです。
 しいて言えば、皆様の発表にもう少し辛口の意見が出るかと思っていましたが、なにしろ時間的制約もおあり、聞くだけが多かったような気がします。
 お互いに、何を改善すべきかをもっと忌憚なく話しあえればもっと素敵だったなというのが会合に対する感想です。

藤原清
 いつもお世話になっております,事務局長の藤原です。  
 坂東様のとなりに座って美味しい料理を沢山いただきました。  
 その上素晴らしいおみやげもいただき感謝いたしております。