第101回サイエンスEネット例会報告 in 山口 湯田温泉 かめ福

日時:2013年2月9日(金) 18:30〜21:00
場所:山口湯田温泉 ホテルかめ福
参加者<敬称略>  川村康文○,松村浩一,森泰一、原田啓道、森千鶴夫,幸田優花 他1名の以上7名のご参加を頂きました。ありがとうございます。正会員は○印,名誉会員は◎印
 なお図中の写真よりも,写真としたところをクリックすると,より鮮明な写真が入っています。
発 表
1.松村科学工作ネタ紹介 バルーン型目玉模型など
@子供用プールを利用した巨大空気砲 本体に子供用プールを利用し、直径30cmくらいの穴を開けたダンボールでフタをしたものです 。
 フォグマシンの煙を入れて、簡単に巨大空気砲が撃てます。学校の文化祭向け。
A児童館での科学教室でつくった音ジャンルの工作3種   
ア 紙筒に爪楊枝を挿してつくったレインスティック   
イ 紙筒にプラスチック容器のフタを取り付け、バネ(100円ショップのアームバンド)をつけたサンダーチューブ。雷のような音 がします。   
ウ 板に、髪留めのピンを伸ばして補強金具で押さえ込んだカリンバ  カリンバ  カリンバ1
Bゴム手袋に100円ショップの虫眼鏡からとったレンズをつけた眼球モデル  よく映ります。  ゴム手袋眼gomute-me  ゴム手袋眼gomute-me1
C割り箸で作った橋 割りばしの橋hasinohasi  組み合わせだけで自立する橋で、「レオナルドの橋」と言われています。ホームセンターにある2×4のホワイ トウッド材で作ると、人が載っても大丈夫です。3年ぐらい前から文化祭などで発表してましたが、この間TVでやってたとか。これからは「ぱくり」とい われるかなぁ。
D昔のメカ 脱進機。一定のリズムで時を刻むものです。身近なもので工作。「棒に重りが巻き付き、ほどけ、くるっと回ってまた巻き 付き、ほどけ」を繰 り返します。ゴム動力です。
E変身ウインドウ 右から見た絵と左から見た絵がかわるからくり。真ん中に両面ミラーが入っています。

2.森(山口大附中)教材教具ネタ 斜張橋モデル 説明1 説明2 :鉄製スタンドと釣り糸・バネを用いてつくった斜張橋モデルです。塔の高さを変 えるとケーブル(釣り糸)にはたらく力の大きさが変化することをバネの伸びから視覚的に確認する。
<準備物>鉄製スタンド・釣り糸(PEライン)・中心に穴を開けた木の板・フック・より戻し
<作成方法> バネと釣り糸とを取り付けやすくするために、釣り糸により戻しを取り付け る。また、バネを木に取り付けたフックに取り付け、釣り糸を支柱に引っかける。このときに、釣り糸が支柱からすべり落ちないために、支柱の先端に消しゴムを取 り付ける。調節ねじを下に動かしていくと、塔の高さが低くなり、ケーブルにはたらく力 が大きくなり、バネの伸びも大きくなる。自由に調節ねじを動かすことができるので何度でも,生徒の手で比較をすることもできる。
    → 写真1  写真2 
  100均イオンモデル 説明1 説明2 :今回使用したイオンモデルは、100円ショップで販売しているマグネット磁石 を使用しました。
  塩化物イオン、銅イオンはそれぞれ色の違うネオジウム磁石が付いているものを 使い、電子については、フェライト磁石を使いました。また、銅イオンについては、2カ所電子が付くように、1カ所4.8oの穴開け加 工をして、ネオジウム磁石を埋め込みました。このとき埋め込むネオジウム磁石は同じく100円ショップで販売している画鋲型の マグネットから取り出しました。
  このモデルは、ホワイトボードにも黒板にも取り付けることができます。また、 動かすことができ、黒板にホワイトボードを貼り付けたときにも落ちない利点があり ます。

3.川村しゃかしゃか振るフルライト 電力の供給がストップしたときにでも,自分自身で,シャカシャカ振って明かりを得,その明かりで,文章を読んだり,暗がりを照らしたりすることができる。
   → 写真1  写真2
  かわむらのコマ 省エネ製品の1つに電磁調理器があります。また,高齢者家族が,火事などから身を守るための安全・安心のための技術としても有用な製品です。 この原理の「うず電流」については,難解な学習内容とされ,なかなか楽しく学べる教材がなかったので,楽しく渦電流が学べるように「かわむらのコマ」を開発した。 これによって,渦電流の原理を学び,電力計のついて知ったり,また,ベンハムなどのコマを回したり,RGBの減色混合より黒くなることなどが学べる。 是非,広く,活用下さい。なお,自由に使って結構ですが,かわむらのコマいう名称をお使い下さい。
  →写真1  写真2  写真3

例会の前に行われましたサイエンスEネットセミナーでの森先生(名大名誉教授)の講義「自然放射線イメージング法、等の新しい放射線実験」
講義録:
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霧箱実験と「はかるくん」実験へのコメント:霧箱で観測されるアルファ線の白い飛跡は、線源から遠方へ伸びて行く。しかし6MeVのアルファ線はその飛程を飛び終えるのに約5ナノ秒しかかからず、飛程の全ての場所にほとんど同時にイオン対を作っている。この矛盾とも思える現象を指摘し、その理由について述べた。「はかるくん」実験では測定対象の状況が変化してから1分以上経過を待って指示値を読み取る必要があることの理由を述べた。
イメージングプレート(IP)による自然放射線放出像のいろいろ:IPによる自然の放射線放出像を撮った元祖として、今となってはもう少し研究手法として使えたのに、と言う思いを込めて多くの撮影例を紹介した。なぜ玉ねぎやなつめ、みょうがなどにはカリウムが多いのに、ニンジンやタケノコなどには少ないのか、年代の異なる鉛板を扱うことによって、人間の鉛精製と言う行為とその後の自然の癒しとも言える営みについて考えることなど、IPによる自然の放射線像は多くの情報・示唆を与えてくれる。
CR-39による物品のアルファ線放出像の取得:IPによる放射線像の取得には読取り機(高価)が必要である。より安価に実験可能な、固体飛跡検出器であるCR-39280mm×280mm×0.9mm19千円、これを15枚にカットして使用できる。11300円)を使って、身の回りの物品のアルファ線放出像を取得する方法を提案した。試料をCR-39に板に上に乗せて2〜3ヶ月間放置したのち、苛性ソーダ液で化学腐食(エッチイング)をした後、光を通して見れば鮮明なアルファ線放出像が得られる。岩石、ブローチ、陶磁器、などの像を取得することによって、自然放射線系列のこと、ラドンというガスの挙動、キュリー夫人のこと、悠久の自然の営み、地熱のことなどに思いを馳せ、考えるきっかけになる。また岩石などの研究手段としても有効であるかと思われる。
手作りGM計数管のデモンストレーション:中部原子力懇談会で開発している標記の計数管の動作を実演した。若干の改良が必要であるがおおむね安定・良好な動作が得られ、吸収や距離の逆2乗の実験ができることを示した。
手作り磁針のデモンストレーション:放射線によるオーロラの発生に関連して、針の先端に乗せた針金(磁石で磁化している)が南北を向くこと、紙などを白板に留めるラバーマグネットバーは見かけ上東西を向くことを示した。また、静電気の発生、誘導、反撥などの実験に有効であることを示した。
手作り箔検電器について:箔検電器は静電気実験のほかいろんな実験に使用できる。絶縁抵抗に近い高抵抗値の測定、微小な静電容量の測定、放射能の測定、炎中の電荷の存在、ガイスラー管からのX線の検出など用途が広いことを示した。


感想のコーナー
森(名古屋大学名誉教授):勤王の志士風の山口県の先生方の真摯で思いやりのある司会進行のもと、真剣にかつ和やかに例会が進行した。皆さんの理科教育・実験への思いがこんなにも強いのかと思い知らされました。新しいアイディアとそれを具体化する力は恐らく、ご本人の本来の能力の高さ、興味の強烈さによるものではあろうが、そうした能力がサイエンスEネット会員の交流の中で一層磨かれて大きな力になっているものと思われ、理科教育の未来に大きな明かりを見出した思いがした。最後に、理事長の川村先生が「かわむらのこま」と「振り子電燈?」(川村補足;しゃかしゃか振るフルライト)を、調子をとりながら実演して回られた姿が今も目に浮かぶ。有難うございました。

松村:実はあちこちですでに発表したものが多いのですが、しばらくEネットでは発表の機会がなかったもので。すみません。
・森先生の斜張橋、いいですね。アーチの橋、レオナルドの橋、せり出しの橋、今橋に関することをまとめてますので、使わせてもらうか も。ありがとうございました。
・川村先生、さすがです。かわむらのコマ、離れているのに力が伝わる不思議な現象としてショーや工作のアイデアが湧いてきました。あ りがとうございました。 例会での写真が不足しているようなので、例会時のものではありませんが新たに撮った教材の写真を送ります。

森(山口大付属中):前半のサイエンスEネットの放射線セミナー基礎編の研修、川村先生と森先生との掛け合い(?)はとてもおも しろく、放射線についての理解が深まりました。 そして霧箱の実習、幸田さんの粋な計らい。感謝しています。
後半の発展編の森先生 の講演では、放射線が見えるなんて!?それもプラスチックで!?自然放射線につい てすごく勉強になりました。そして手作りGM計数管。万歩計を使ったカウンター。す ごいなぁ〜ライターのガスを入れて、スイッチオン!!放射線をカウント始めた時の 感動は 今でもよく覚えています。放射線について考え方が変わった研修でした。
そして,例会では!さすが!松村先生!と感じるテンポのいい発表に、「すごい…」の一言。 さらに緊張してしまいました。ドキドキしながら、私も発表をしたのですが…その 時、原田先生がすごく反応してくれ、緊張が和らぎました。ありがとうございます。 川村先生のネタにはびっくり!!さすがだなぁ〜発想がすごい!!早速使わしてもらいます!!人数が少なかったので、すご〜くみなさんと、理科のこと、人生のこと、仕事のこ となどなど…いろいろなお話ができ、とても充実した例会でした。この出会いを大切 にして いきたいと思います。ありがとうございました。

原田:初めて参加しましたが、とても楽しかったです。川村先生・森先生、お忙しいところ私たちに貴重なお話をしていただき、ありがとうござい ました。松村先生の、引き出しの多さ。本当に驚かされました。特に、割り箸ブリッジなど、身近なもので手軽に制作・実験が行えるもの は生徒にも受け入れやすく、とても良いと思いました。山大附属中の森先生の「磁石を使ったイオン模型」、最高でした。まるで、自分が 生徒になったかのように食いついてしまいました(笑)。100円ショップのものといえども、たくさん作っておられて、先生の情熱が伝わっ てきました。川村先生の「かわむらのコマ」、学校に帰って早速作ってしまいました!すぐに作れて、わかりやすい。本当にワクワクさせ られました。川村先生と森先生が例会でお話をしていた内容は、大学教育での苦労も伺え、我々高校教員が、少しでも理科に興味を持つ生徒を育てなければという使 命感にも駆られました。

幸田:理科の先生方のドキドキ☆ワクワクした熱い気持ちに 触れさせていただき、貴重な経験をさせていただきました。 発表している皆様の表情、発表を受けての驚きの歓声、 キラキラした目は忘れません。 私自身も皆様とは違うところにおりますが、理科教育という大きな目線で、何かお役に立てること、支援が 作れるよう、、精進していきたいと思います。
 
川村:NPO法人サイエンスEネットとして,はえある第101回目の例会を,長州藩の香りがただよう山口は湯田温泉で開催させて頂きました。ありがとうございました。
 松村先生とは,東京理科大学での授業の達人以来,久しぶりにお会いでき,また,素晴らしいパーフォーマンスの例会発表をみせて頂き,大感動です。
 また,山口大附属中の森先生のご発表も,さすがに附属!という発表で楽しかったです。
 今回は,名古屋から森先生もご参加いただき,先生が78歳とお聞きし,びっくりしました。どうみても70歳より前なのかな?とお見受けしたのですが,そのお年になられても,元気,いっぱいおられて,後輩陣としては,これからも頑張ろう!という思いを,引き継がさせて頂けました。ありがとうございます。

 エネルギー・フォーラム出版の本では,森先生(名古屋大学名誉教授)の手作りGM管とその回路CR-39固体飛跡検出器(Colunbia Resin-39),箔検電器と放射線計測の実験を,是非に掲載していきたいですので,是非,ご執筆の方,どうぞよろしくお願いします。

 さて,
 みなさん,これを機会に,サイエンスEネットのメーリングリストおよび,NPO法人サイエンスEネットのほうもあわせて,是非どうぞよろしくお願いします。