理科室 No.4
「ひまわり」はどうして地球全体の写真を撮るの?
(つづき)
2つめは、日本の天気は遠くはインド洋やチベットの影響を受けているためです。
もう少し詳しく見てみましょう。 天気の変化に大きく影響しているのは風です。温
度差があると、空気の密度、空気の濃さと考えてみましょうか、これが違ってきま
す。この差を縮め ようと空気が移動、つまり、風が吹きます。海と山の間に起きる
風もあれば、地球規模で吹く風もあります。地球規模の風は、普段見ている天気
図の範囲 にはとうてい入らないほどの規模で吹いています。その中のひとつに、
日本 の上空を西から東へ向かって流れる風があります。西から東へ吹く風なので
「偏西風」といいます。上空10〜14km付近では特に強く吹く帯状の気 流があり
ます。偏西風は南北に蛇行しています。この蛇行のために高気圧や低気圧が発生
します。この偏西風がチベットの山のどの辺りを通るかによって日本付近の雲の様
子が変わってきます。 6月頃の天気図には「梅雨前線」が現れます。九州の南西
部に現れる前線を西にたどってみると、赤道付近の雲の塊とベンガル湾(インド)あ
たりでつながっていることがわかります。梅雨はインドのモンスーン(季節風)とも大
きく関係しています。さらに、インドのモンスーンは南半球のオーストラリア西部から
の風の影響を受けます。
日本の天気はまさに地球規模の風に左右されています。少しでも広い範囲 の写
真を撮ることは日本の天気予報のための重要な情報になります。
◆1959年伊勢湾台風により大きな被害を受けた。台風などの災害に備えるためよ
り広い範囲の気象情報を集めようと作られた富士山レーダーは気象衛星の登場に
より、その役割を終えた。新田次郎「富士山頂」(文春文庫)が参考になる。
◆ 日本の気候は地球規模の大気の循環に左右される。たとえば「中緯度高 圧帯」
もそのひとつである。夏に太平洋に発達する高気圧は、中緯度高圧帯の一部であ
る。これは砂漠を作る原因のひとつとされるが、日本は周囲を海に囲まれているた
め、吹き降りてくる乾燥した風は、海から蒸発する水蒸気を多量に含み、湿った風
になる。日本付近で夏に蒸し暑い晴天が続くのはこのためである。
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これは,小学校高学年向けにお話しするために書いた原稿です。
少し難しいですね。わかるところだけつまみ食い,という感じでか
まいません。
ここでは,教科書から消えてしまった「風」に注目しています。理
科の授業でも,風については触れていくようにします。天気の勉強
をして「なるほど!!」と思うには,どうしても,風に関心を持つ必要
があると思います。