浦島太郎にならないために
〜 経験と理論の新しい関係づくり 〜
平成14年度「文部省教員養成大学・学部・教官研究集会」
第三分科会『現職教育に教員養成大学が果たす役割』
愛知県蒲郡市立形原北小学校
小 田 泰 史
浦島太郎にならないために
〜 経験と理論の新しい関係づくり 〜
1.教室から見た経験と理論
教室にいれば,とりあえず,「経験」を重ねることができます。
問題意識をもって授業にあたれば,向上する可能性もるでしょう。
しかし,「理論」は,教室にいるだけでもたらされることはありま
せん。向上することもありません。「方法は理論を研究することで
必然的にもたらされるもの」という話を聞きましたが,そうすると
「方法」の向上もないということになってしまいます。
2.玉手箱の中身
玉手箱を,何にたとえましょうか。箱は,大学・学会,煙は,理論,
かな,と思います。この1年半,大学院で学びながら,教室で子ども
たちと接してきました。職場での「現職研修」にも参加しています。
その中で感じることは,大学院で学ぶ「理論」をとおして授業を見直
すことの大切さです。今,自分が何をしようとしているのか,子ども
たちは何をどうとらえていくのか。もう一人の自分ができたような感
じです。
幸い,玉手箱の煙をあびても一気に<年>をとることはありません
でしたが,危ないところでした。
3.現職研修と大学院
大学院での授業と現職研修には,議論の有無という点に大きな違い
を感じています。現職研修に大学の先生に来ていただいたとして,そ
こに「議論」はなかなか成立しません。もちろん,議論の場をもつこ
とをしないのですから成立以前の問題ですが。
この点については,それぞれの問題意識がずいぶん違うように感じ
ます。とはいえ,現職教育にとって取り入れたい方向が大学院にはあ
ると思います。
4.教員養成大学・学部への期待
修士課程終了を目標としないけれど,同等の内容を持つ研修制度。
単位認定がされればなおよい。サテライトキャンパスの充実。
これらのことはよく耳にします。制度として,少しずつ実現してい
ます。ありがたいことと思っています。
「期待」ということばから,もう一歩踏み込んでみます。
以前,生理学研究所(岡崎市)の先生の話を伺う機会がありました。
冒頭に「私は,研究成果を広く伝えるすべをもっていません。皆さん
がこれからの話をぜひ(小中学生に)伝えてください。」と話されま
した。教育学の研究者の方にとっても,同様の問題があるのではない
でしょうか。理論実証の場として,教室にもっと出かけていただくこ
とはできないでしょうか。本来附属学校がこの役割を担うかと思いま
すが,そこは,法的制約を越えた部分とし,普通校はその範囲で対応
できるところでと役割分担も可能でしょうか。その中で,大学側とし
ては検証の場を,私たち小中学校の立場では適時的な研修の場を設け
ることができるのではと思います。
経験と理論とは,同じ場所にあってはじめて向上していくものだと
思います。ベースになる場所は違っても,それぞれが意識的に共同し,
研究・実践を深めていくことを,先の両者に対して期待しています。