ひょうたん島のセールスマンの巻


統計を勉強していて出てくる仮説検定というのは概念をつかみにくいものです。帰無仮説がどうとか,対立仮説はどうとか,やれ仮説が棄却されるのされないのとか。仮説検定が行われる場面というのを,シナリオ形式で表現してみることにしましょう。


ドンガバチョ(セールスマン): オッホン!わが社の最新式の製品ホゲーXは従来の製品に比べて1時間当たりのエネルギー消費がぐぐぐぐっと小さいのであーる。

ハカセ:ガバチョさん,だったら持ってきた試供品10個を出してみて(ガバチョしぶしぶ出す)。さあ,みんな,試供品のホゲーXをとりあえず1時間回してみて,エネルギー消費を測ってみてくれないかな。

ハカセ:(1時間後)さて,みんなのレポートをまとめてみようか。ええとダンディさんのデータだと,エネルギー消費は1250ガバスだったんだね。サンデー先生のは1304ガバスと,・・・・ふむふむ,他のもまとめて平均すると 1275 ガバス,標準偏差は 35 ガバスってことだな。・・・・これくらい暗算でもこのとおりスイスイさ,ボクにとってはネ。

ドンガバチョ:そーらごらんなさい。ワタクシの言っていることは間違いないざんしょ?

ハカセ:まだ何にもきまってないじゃないか,ガバチョさん。えっと,ボクの頭の中のデータベースによると,この島にあったホゲーオリジナルだと時間当たりエネルギー消費は 1284 ガバスで,その標準偏差は 40 だったはずだ。

サンデー先生:ほーらハカセさん,ガバチョさんだって正直なときは正直なのよ。人を疑うのはよくないわ。1284ガバス が 1275ガバスに減ったってことは,やっぱりホゲーXって少しはいいんじゃないの?

ハカセ:いやいや,ものごとは疑ってかかることだって必要だと思うな。えっと,つまり,ガバチョさんが持ってきた10個の試供品はトラヒゲデパートにあったホゲーオリジナルの包装だけ変えたんじゃないかってことは十分考えられる。だけどたまたままぐれで成績がよかったのかも知れないって可能性がありうるかどうかを考えてみないとね。


さて,みなさん。ガバチョの主張,つまり「ホゲーXはホゲーオリジナルよりも優れたエネルギー消費性能をもつ」を,ハカセは棄却できる仮説なのではないかと考えています。どうやってやるのでしょう?・・・・こういうのが仮説検定の典型的な問題なんですね。

いやはや, 統計ですか。苦手というよりはあんまり勉強したことがないんですよね。でもね,こういう風に書いてもらうと気になります。面白そうですね。試料の分布の具合から真相を想定するんでしょうか。ばらつきから浮かび上がる図形の重なり具合なんて思うと幾何ですなあ。でも一次元じゃ仕方ないかあ...?!

こういう場合ってコンピュータって便利ですよね。ちょこっとソースを書いて,ホゲーオリジナルな時間当たりエネルギー消費平均1284ガバスかつ標準偏差40の集団のサンプルを作ってみてそこから無作為に10個を選んでみる。なんていう実験ができますよね。

さすがですね。実はそのとおりのことをやってます。昔は標本抽出なんてことを実験することは不可能だったので,理論式を導いてその応用問題を解くというやり方しか統計理論をものにする方法はありませんでした。定性的,経験的な理解が難しかったのです。しかし今は抽出のシミュレーションが簡単に,しかもウェブ上のCGIプログラムでも実験できる時代です。



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