多面体の硬さ

多面体に関する有名なオイラーの定理は,頂点,面,辺の数をそれぞれ v, f, e としたときに,次の簡単な関係が成り立つというものです。

   v  + f = e + 2

また,多面体が構造的に丈夫であるためには,各面が3角形で構成されているのがよいということも直観的によく知られています。フラードームはその考えに基づいてサッカーボールの形の多面体の面をなすすべての正5角形および正6角形の中心に頂点を追加して三角形を作ることで安定させた建築物(ただし半球形)です。

さて,多面体が「がたつく」ことがないためには,すべての面が三角形でなければならないというのは正しいのでしょうか?あるいはその逆は真でしょうか?むかしそんなことを考えたことがあります。まあこういうのはきっと誰かがすでに考えて結論を出しているのでしょうけど。とりあえず私が考えたことを書いてみましょう。なお,ここで多面体は,辺となる伸び縮みのない棒を柔軟性のあるジョイントでつなぎ合わせて作るものとします。

面白いですね。さしずめKaleidoCycle(カレイドサイクル)は全ての面が三角形だけど「がたつく」例になるわけですね。とはいえ、あの形は、四面体が辺で連結しているのだから、きっとこの話には含まれない?のかなあ。というか含めない方が面白いかも。

てことは、この話を4次元で考えるときには、立体で連結しているような4次元多胞体は話しに含めないって事かア。うーむ。うーむ。多胞体といえば、去年「最短加算連鎖」の為にクヌースの本を借りた友達に、多胞体のことを質問されたなあ。近頃トレンディ(白い白馬かも)なのかな?

まず多面体が「硬い」というのは何を意味するのかを定義しておきましょう。ある多面体が硬いというのは,その多面体のもつ自由度が剛体の自由度である6に等しいということです。剛体は,その重心の座標の併進について自由度3をもち,剛体の回転について自由度3をもつので,自由度が6です。これは剛体の運動力学の最初で学ぶことです。つまり多面体の自由度が6であるならば,その多面体は併進と回転以外のたわみやねじれの自由度をもたず,変形しないというわけです。

さて、この自由度というやつですが、この中には「相対的な動き」だけではなく「座標というか空間内での絶対位置の動き」というものも含めるのでしょうか?それは「硬い」とは関係ないように思うのですが。きっと面倒なのでそれも含めといて後で差っぴく(剰余類のように?)のかなあ。「硬さ」だけを考えるなら、2点は固定されててもよいはずですよね。

さて,空間に,同一平面上にない4点をおき,それらを棒でつなぎます。1つの点のもつ自由度は3ですから, 棒による拘束がなければ自由度は12になります。2つの点を棒でつなぐということは, 長さを固定することであり,方程式が1つできて変数がひとつ減りますから,全体の自由度は1だけ減少します。そこで,12個の自由度を6まで減らすには,6本の棒で点の間をつなげばよいということになります。これは四面体を作ることに他なりません。

同様にして,頂点の数が v ならば, 3 v - e = 6 のときに,硬い多面体を作れることになります。これを上のオイラーの式と組み合わせれば,

  2 v = f + 4

を満たす多面体が硬いということになります。正多面体でこの条件を満たすのは, f = 4, 8, 20 の時ですから,各面が正三角形の多面体になっています。サッカーボールの形のフラーレンでは v = 60, f = 32 (ついでに e = 90)ですから,この形はたわんだりゆがんだりできることになります。球形のフラードームでは,v = 92, f = 180, e = 270 でこれはしっかりした構造です。数年前に姿を消した富士山レーダーのドームが風速100mでもびくともしない設計になっていたのは,この構造だからです。

と,ここらで一休み。続きはまた。


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