2009年9月26日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

  9月11日、国産大型ロケット「H2B」で種子島宇宙センターから「HTV」が打ち上げられました。HTVは国際宇宙ステーションに衣類、食料、観測機器など4・5トンの物資を運ぶ無人補給機です。
 さらに18日には国際宇宙ステーションとのドッキングに成功しました。ロボットアームでHTVをつかんでのドッキングという新しい手法の成功でした。
 日本の宇宙技術がこれまで以上の段階に達したことを意味しているように思います。

 宇宙に常駐することで、地上ではできない実験や観測が恒常的に可能になります。新しい実験のアイデアや工夫が求められます。大きな資金を必要とするプロジェクトですが、きっと、大きな成果も生んでくれることでしょう。
 
 教育の内容も、こうした時代の変化に対応していく必要があると思います。未来に必要な科学技術を私たち自身も学びながら、次代の生徒たちに伝えていくことが求められています。

 あくまで平和利用に徹した宇宙技術を、今後もさらに進展させていってもらいたいですね。


 共鳴スピーカー (石川さん  
 ずらりと並んでいるのは、小型スピーカーの上に塩ビのパイプをおいたものです。パイプの長さは、音階に共鳴するようあわせてあります。全部で2オクターブ分です。
 8オームのスピーカーを4つ直列につないで組みにして、4組を並列にしてアンプにつないであります。
 スピーカーに音信号を入れると、音の高さにあわせて異なるパイプから音が聞こえます。面白い感覚です。
 
 一人の人が歌う音を聞くと、音の高さに合わせて右から左から聞こえるので妙な感じを受けますが、パイプオルガンの演奏を聴くと、まるでパイプオルガンが近くにあるような感じです。
 原理的にはパイプオルガンと同じですから、そう聞こえるのももっともなことです。
 キーボードをつないで演奏すれば、いい音色の立体的な音を楽しめる(安価な!)パイプオルガンができます。
スピーカーを倒してみたらどんな風に聞こえるでしょうか。

 特定の音が強く聞こえ、全体に音が硬い感じを受けました(あくまで感じです・・・・・)。
 パイプを立てた状態で聞いたほうがよさそうです。

 人間電圧計 (杉本さん  

 自分の手で電位差を感じて理解しようという人間電圧計。「いきいき物理わくわく実験2」に掲載されています。

 まずは基本のコンデンサ型。
 四角いバット二水をはり、両端に電極をつけ、50〜60Vの交流電圧をかけます。
 指を広げて水につけます。2本の指の間の電位差が小さければ、何も感じません。写真のように電極に平行に指を入れれば何も感じません。

 でも、指を回していくと、ぴりぴりしてきます。 両極に対して垂直に指を入れると、指の間隔の大きさに比例してぴりぴり感が強まります。


 両極にかける電圧は大きくしないでください。
 上の装置で50〜60V程度が適当です。実験者によっては過敏に反応する可能性があるので、必ずはじめは低い電圧で試してください。

 子供用のプールを利用して作った円形容器でもできます。周囲にアルミテープを貼り、中央にアルミコップを置き、電圧をかけます。
 こちらも50V程度です。

 電位差が半径方向に出ることが確認できます。
 もちろん1つの電極だけにふれても何も感じません。(足がアースにならないようにスリッパなどを履いてください)
 

 感電!?はいやだという場合は、LEDなどで探知装置を作ることができます。
 LEDの両極を水につけるだけです。

 電極の位置を変えたり、数を増やしたりすることで電位差の様子、電場の様子を体で理解することができます。
 
 
 電極のショートなどの万が一のことを考えて、電源側に白熱電球を直列に入れておくとよいというアドバイスがありました。確かにそうすればショートしても電球がつくだけで大電流が流れることはありませんね。

 鏡で自分を見る (鈴木さん  
 鏡で自分の全身を見るには、どのくらいの大きさの鏡が必要ですか?。
 よく問われる問題ですが、作図で理解はできますが、実際に確かめることはあまり行われていません。
  そこで、これを確認する実験を開発しました。
 小さな鏡と、紙に書いた自分を用意します。身長は鏡の長さの2倍。目の位置に穴を開け、後ろから覗き鏡を見ます。
 
 確かに全身が見えます。
 鏡の長さの2倍より背の高い人は、鏡をどの位置においても全身は見られないことも確かめられます。
 簡単な道具でできますから、生徒一人ひとりが自分で確認できるようにするとよいですね。

     足を伸ばすと、身長が伸びるようになっています。
 

 水中で変身 (鈴木さん  
 水がないとき見えているお札が、コップに水が入ると見えなくなります。
 全反射による現象ですが、詳しい説明がわからなくても、自分で消える絵を作ることで現象に対する興味が増します。
 ビニール袋に紙を入れます。紙の絵と袋の表面の絵で1つの絵を完成させます。袋を水に入れると袋の表面の絵だけが見え、紙の絵は消えます!。
 生徒に作らせると実に楽しい作品を作ります。簡単な材料でできますから、家に帰ってからも創作を続けられます。
 生徒が楽しんで作りながら自然現象に対する理解が深まっていけば、理想的ですね。

 下は生徒の作品例です。

<参考> http://www2.hamajima.co.jp/ikiikiwakuwaku/record/r_2001_12_08/newpage2.htm 全反射(奥谷さん)

 本の紹介 (川田さん  
本の紹介です。
 1冊目は応用物理学会東海支部編著の「工作教室」(日本評論社)。
 川田さんの旋光の実験は、この本の記事を元に行いました。
 簡単で、本質的な実験がたくさん紹介されています。

 2冊目は、「戯曲ガリレオ」(績文堂)です。
 ガリレオが科学の原理を見つけ出すに当たって、船大工から多くを学んだことが記されているとのこと。偉い人は誰からも学ぶんだということに感銘を受けたそうです。
 学ぶべき人からもしっかり学べなかった自身を振り返ると・・・・読めなくなってしまうかも・・・・・・。
 

 旋光を利用した糖度計 (川田さん  
 光が物質を通過することで直線偏光の向きが回転することを旋光といいます。
 この測定で砂糖溶液の濃度を測ることができます。
 写真は塩ビパイプとアクリルパイプでつくった旋光計です。両端に偏光板をつけて、片方は回転して角度が測れるようにしてあります。



 旋光角θ=αρL 
   α:旋光率 (ショ糖は66.5°)
   ρ:濃度(g/mol)
   L:溶液の長さ(10cmあたり)(この装置は19.7cmなのでL=1.97))

 旋光角θは42°でした。よってρ=0.32g/mol
 
 ショ糖溶液は0.30g/molでしたから、まあまあの値ですね。

 通常使われる糖度計は屈折を利用しているものがほとんどです。

  待ち針を回すと偏光板が回ります。これで旋光角を測定します。
 光の出口にビデオカメラをつけてテレビで暗くなる位置を確認します。
 左は入り口に赤色LEDをおいたときの映像です。
 出口の偏光板を回して暗くなる角度を計ります。

 ファラデー効果 (川田さん  
 ファラデー効果とは、物質に磁場をかけ、それと平行な方向に直線偏光を透過させたときに偏光面が回転する現象のことです。

 塩ビパイプに水をいれ両口をガラスでふさぎます。パイプにコイルを巻きつけます。これで軸方向の磁場を作ります。コイルに電流を流したときとそうでないときで、偏光角が変化するかどうかを測定します。


 ファラデー効果による旋光角θ=vBd
   v:ベルデ定数
   B:磁束密度
   d:物質の長さ

 この装置で物質が水の場合を計算するとθ=約4°となります。
 ビデオカメラで見ながら、偏光角の変化を見ましたが、微妙・・・
 
 
 直接肉眼で確認するとややはっきりと変化が見られました。確かにファラデー効果を捕まえているようです。







 

 ノーベル賞受賞記念碑 (川田さん  
 川田さんが勤めていた明和高校の卒業生、小林誠さん(1963年卒業)が2008年ノーベル物理学賞を受賞しました。これを記念して、今年、明和高校に記念碑が建てられました。右はこの記念碑の写真です。
 英文部分は以下のとおりです。

 " for the discovery of the origin of the broken symmetry which predicts the existence of at least three families of quarks in nature "

 CP-Violation in the Renormalizable Theory of Weak Interaction







     [次ページヘ]