2010年5月22日の例会の記録の第3ページです


 レコード、CD、DVD、そしてBDの回折 (川田さん  
 CD,DVD、BD(ブルーレイディスク)へと進化した理由は回折にあります。波の波長が短ければ、光をより小さなスポットに集めることが可能で、同じ面積により多くの情報を入れることが可能です。
 これらにレーザー光線を当てて1次の回折が生じる角度を求めてみます。
 

使用波長

トラック間隔

容量

レコード

90μm

CD

780nm

1.60μm

DVD

650nm

0.74μm

5

BD

405nm

0.32μm

35

トラック間隔をdとすると
 d sinθ=λ

    


 0次のスポットと1次のスポットの距離 x を測定することで1次の回折角θを求めます。
 レーザー光の波長λは630nm。
 レコード盤だと θ=0.43°
 CD        θ=28°
 DVD       θ=54°
 BD        θ=?
  レーザー光をCDにあてます。黒板に回折光が出ています。
  中央が0次の回折光。左右が1次の回折光。


 BDにレーザー光を当てても、1次の回折光は見られません。
 文献によるとBDのトラック幅は320nm。 
   320・sinθ=630 
 この式を満たすθはありません。つまり、このレーザー光では回折光は生じません。

 実際BDをみると色づいて見えません。
 入射光の角度が大きいときには、可視光での回折光が見られます。

  0次の回折光しか見られません。鏡と同じですね。

  斜めに見ると回折光が見られます。

 高校入試問題に疑問点あり (川田さん  
 平成22年度の高校入試B日程の理科の問題4番に問題点が見つかりました。
 問題内容はいろいろな高さのところから小球を落下し木片に衝突させ、木片の移動距離から小球の位置エネルギーを求めるというものです。
 中学校では、2物体の衝突による運動は扱いませんから、生徒たちは問題作成者が求めた解答をすると思われますが、物理的には不正確な内容を含んだ問題であり、問題作成者が十分な注意を払う必要があるように思います。 

 <参考>  入試問題とその問題点についてまとめてあります。



 スマトラ沖地震 (山本さん  
 
 2004年のスマトラ沖地震による津波についての授業プリントを説明してくれました。波動分野の発展学習です。

 最近ではチリの大地震がありましたが、地球規模の大地震がいつ起こっても不思議ではありません。
 大地震に伴う津波についても、その原因、性質を学んでおく必要がありますね。

 錯視 (山本さん  

 印刷された図形による錯視現象は、大きさや色が同じかどうか疑問に思えるときがありますが、写真のようにすれば一目瞭然。錯視現象をより深く実感できます。

  周りの明暗色合いによって同じ色が違って見えます。

  1枚の色紙なので同じ色であることは明らか。

  白と黒の背景。 
 

  同じ大きさの輪を置くと背景の明るさで大きさが違って見えます。

  同じ大きさの円。  黒い輪を置くと中心部の色の円の大きさが違って見えます。

 蛍光顕微鏡 (伊藤 政夫さん  

 学校で使っている蛍光顕微鏡の中心部分を持ってきてくれました。(全部を持ってくるには大きすぎて大変)
 蛍光:物質の中には、吸収した光エネルギーを再び光として発する性質をもつものがあり、これを蛍光物質とよぶ。蛍光物質にX練や紫外線、可視光線などの光を照射すると、エネルギーを吸収した電子が基底状態から励起状態へと遷移する。励起状態は不安定なため、電子は基底状態に戻ろうとし、この過程で放出される光が蛍光である。また、このときはじめに照射した光を励起光とよぶ。

 エオシンという染料の溶液は黄色ですが、下から白色光をあてると緑色が見えます。
 これが蛍光です。
  マジックペンで書いた文字は紫外線を当てたときだけインクの蛍光により読むことができます。これも蛍光です。
 これで秘密(?)の手紙を出すことができます。
 
 蛍光顕微鏡の中心部分はダイクロイックミラーで、水銀ランプの光のうち、励起光になる波長を通過させ標本に当てます。標本からの蛍光を吸収フィルターを通し、特定の波長の光のみが蛍光として可視化されます。



  水銀ランプの光が左から入ります。
   中央部分にダイクロイックミラーが入っています。

  これがダイクロイックミラー部分です。

  励起フィルター側から入れた光は標本に当たります。

 吸収フィルターから入った光は標本にあたりません。
     
 オオカナダモの光学顕微鏡像と同じものの蛍光顕微鏡像です。
 葉緑体がピンクの色となって写っています。
 蛍光顕微鏡の特徴は次のようなものです。
 @細胞内のタンパク質が可視化でき、非常に微細な構造も理解できる
 A目的とする物質(たとえば細胞内のアクチン繊維の所在)を選択的にかつ高感度に検出できる
 B複数の蛍光色素を用いて、複数の対象を同時に検出できる(たとえばミトコンドリアとDNA)

 蛍光観察は、試料に標識した蛍光色素や蛍光タンパク質そのものの蛍光を観察する方法で、分子生物学分野の研究に特に効果的なものとなっています。

 本の紹介 (鈴木さん  
 滝川さんの本です。 
 理科読(りかどく)とは「科学の本を読もう」ということで,科学の本を読むことをすすめる活動を理科読運動といいます.
 科学の本をどのようにして読んだらよいか,どのようにしてすすめたらよいか,さまざまなヒントを得ることができます。
 岩波書店からの出版で価格は¥1785。

 保冷庫の仕組 (臼井さん  
 自動車用の保冷庫が手に入ったので分解してみました。
 中心部品は右のペルチエ素子でした。

 そこで、これを利用して自作の冷却装置を作成しました。装置の右側は電源装置です。消費電力は約40W。
 

  自作の冷却装置です。

  放熱板と金属容器の間にペルチエ素子がはさんであります。
 10分間作動させてから放射温度計で温度を測ると約 3度の低下が確認できました。
 残念ながら、長時間かけても大きな温度低下は期待できないようです。

 愛工に、似たような冷温庫(?)がありました。
 あまりに性能が低いので部品をはずしたとのこと。

 うまく冷やすというのは難しいのですね。

 見た目は冷蔵庫ですがペットボトル1本うまく冷やせなかったようです。

    奥の穴にペルチエ素子の冷却部が入っていました。



 バランス運動 (臼井さん  
 丸棒と厚手の板でバランス運動ができます。
 傾いたとき、体重移動で元に戻す動作をするわけですが、これを力のモーメントで考えてごらんというわけです。

 実際には頭で計算して動作するわけではないですが、体は無意識で物理法則に忠実に行動します。

 この装置を物理室に置いておくと、生徒たちは楽しんでやってみるようです。
(頭のほうも動かしてね・・・・・)
 1方向がうまくできるようになったら、2方向のバランスに挑戦です。
 臼井さんも2方向はまだ修行中だそうです。 

 不定形電極の作り方2 (市川さん  
 前回の例会で、パラフィンと黒鉛を使った自作電極作成方を紹介してくれましたが、使用していると温度上昇によりパラフィンが融けだし電極が崩れていく可能性があることがわかりました。

 そこで、別の方法に挑戦しました。マグネタイト電極です。

 まず、酸化鉄の粉を押し固めて、電子レンジで15分加熱。
 (耐火煉瓦にあけた穴に入れて加熱しました) 
この状態では抵抗値が数MΩあり、電極としてはとても使えません。
 そこで、この塊を再度粉々にして再び固めて電子レンジで再度加熱しました。
 今度は部分的ですが抵抗値が低い部分ができました。
 全体が低抵抗になれば電極として使えそうです。

 ただ、電子レンジで加熱して、一様な性質の大きな結晶を作るにはかなりの困難がありそうです。何か新しい工夫が必要な気がします。
 うまい方法があれば、電極作成だけでなく結晶の学習についての新しい実験が考えられるかもしれません。

 <参考> 不定形電極の作り方 (市川さん) 
 

 左が1度電子レンジで加熱したもの。(抵抗値は数MΩ)
 右は2度電子レンジで加熱したもの。(抵抗値は部分的に数kΩ)

 新学習指導要領の何が問題か? (井階さん   
 岩波の「科学」5月号に掲載された特集記事について説明してくれました。
 2008年に小学校・中学校の次期学習指導要領が告示されました。2009年には高等学校の学習指導要領が告示されました。
 いわゆる「ゆとり教育」で少なくなった学習時間を増やす方向になっています。理科に関しても大きく時間増加になっています。増えた分でどんな分野をどのように教えていくのかの詳細な検討が求められているわけです。

 新学習指導要領の何が問題か? (兵頭 俊夫))
 効率中高一貫校の挑戦 (上條 隆志)
 だれがつくる? 科学教育政策 (滝川 洋二)
 職員室文化の復活 (川勝 博)

 いずれも考えさせられる内容の記事です。
 詳細は、科学を購入してくださいね。


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