2010年12月4日(土)愛知工業高校での例会の記録の第3ページです
パルスジェットとは? (伊藤 政夫さん) |
向陽高校の科学部の生徒たちの研究成果を披露してくれました。 パルスジェット現象の秘密を探ったものです。 (1)瓶、ワッシャーの種類 直径6cm、高さ8cm、容積150mlの瓶で、ワッシャーの径が8mmがジェットの成功率が高いことを確認しました。 瓶の高さが大きいと、あるいはワッシャーの径がこれより、大きくても小さくても成功率が低い。 (2)ハイスピードカメラによる爆発の観察 毎秒600コマのハイスピードカメラで撮影した結果、着火直後の1回目の爆発は瓶全体に炎が拡がります。53コマ(約0.088秒)の長さです。 2回目以降の爆発は瓶下部を中心に周期的に炎が発生します。6〜7コマごとに1回爆発します。時間にして0.011秒です。 (3)圧電素子と音による爆発の測定 (2)の結果から1秒間に90数回の爆発が起こっていることになります。本当にそうか、別の方法で確認しました。 ガラス板を2枚用意し。その間に圧電素子を挟み、オシロで波形を観測。 爆発の際の音を録音し、音声編集ソフト「Audacity」で音の波形を解析。 どちらのデータも1秒間に90数回の爆発が起こっていることを示しています。 (3)温度分布の測定 可視光を遮断する赤外線フィルター(IR 80)を装着したビデオカメラ (機種 SONY HANDYCAM DCR-HC96)を用意し、ナイトショット機能で炎から発せられる赤外線を撮影し、撮影した画像をフリーソフト「ThermoShot」を用いて温度分布画像に変換しました。 1回目の爆発では全体に身一な温度分布が見られます。 2回目の爆発では、発生した熱が下部を中心に高温になっています。また、上に行くほど範囲は狭く、温度も低いです。 (4)考察 1回目の爆発は、温度分布画像からビン全体が高温だったため、酸素とメタノールがビン全体にある状態で全体に広がる爆発であると考えられます。 また、2回目以降の爆発ではビン下部は上部と比べるとより高温になっていたことから、酸素が少ない状態のビンに図8のように酸素が吸い込まれ、その部分だけで爆発しているので、円錐形に炎が広がる局所的な爆発が起こっているのではないかと考えます。 (5)今後の展望 2回目以降の爆発が起きるためには、爆発後にビン内の気圧が下がり、酸素が取り込まれなければいけません。今後、どのようにビン内の気圧が下がるのか、ビン内に流れ込んだ空気はどのように移動するのかについて明らかにしたいです。 すばらしい研究ですね。私たちを遥かに超えている・・・。 今後の成果もぜひ知りたいですね。 <参考> ThermoShotというフリーソフトは京都大学総合人間学部地学教室が火山の研究のため開発したもので、高温のものほど赤外線を多く出す性質を利用して300℃〜700℃までの温度分布を表現することができるものである。 |
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レーザー光通信 (田中さん) |
レーザーを使った光通信です。 レーザー素子(赤色)も安価になって、気軽に実験に使えるようになっています。 ウォークマンの音声信号を、振幅変調で光の強度変化に変えています。 |
送信部 |
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受信部は太陽電池。 直接アンプにつなぐだけで立派な受信ができます。 |
受信部 |
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10mを超えてもちゃんと信号が届きます。 |
赤色レーザー素子は安価になっています。 安定回路は切って、レーザーダイオードだけを使います。 |
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金属探知機 (田中さん) |
秋月電子通商で販売している金属探知機です。水道・ガスなどの金属配管や壁に埋まっている電線を探知します。何と500円! 下に金属部分があると赤LEDが光ります。ないときは緑のみ。 時間がなかったので、何の原理を利用して探知しているかは確認していませんが、田中さんの考えでは、多分、電磁誘導を利用しているのだろうということです。 何しろ安価ですから、工夫して目的外利用を考えましょう。 |
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←下に金属があるとき赤LEDがつきます。 | |
3Dメガネ (船橋さん) |
白色LEDの前に偏光板を置き、偏光を立体にあてます。 できた影を、偏光板のメガネで見ると影が立体に見えます。もちろん2つのLEDの前の偏光板は、偏光の向きが互いに垂直になっています。メガネもそうです。 立体(フラーレンの分子模型)を回すと、メガネで見える立体像も回ります。 メガネを左右逆にすると、回転方向が逆に見えます。面白いですね。 最近流行の3Dテレビの原理ですね。こういう教材は生徒の関心を引くでしょう。 |
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フラーレンの影はきれいに見えましたが、ダイヤモンド結晶構造はいまいちでした。 立体によってきれいに見える形とそうでないものがあるようです。 光の拡がりのせいか、あるいはその他のせいか、理由はいまのところはっきりしません。 なお、影をうつす背景の壁は、アルミ板をやすりがけしてつや消ししたものです。乱反射がよく起こるようにするためです。 |
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自由落下と水平投射 (飯田さん) |
下敷きの前と後ろにコインを置いて、下敷きをまげてコインを飛ばします。 自由落下と水平投射が同時に着地をすることを示すための実験で、教科書や実験書にも載っています。 生徒に実験させたところ、同時に落ちないとの声が殺到しました。(着地の音で判断します。) どうしてだろう・・・・。 |
手で持ったままでは傾きとか震えだとか不定な要素が多いので、スタンドで固定してやってみます。同じ結果になります。同時には落ちない。 下敷きを曲げるのではなく、まっすぐな状態でたたいてやると今度は同時に落ちます。 下敷きを曲げて、下敷きの弾性で飛ばそうとすると、前側のコインは下敷きにしばらく押され続けるため同時に落ちないのですね。硬い板なら問題にならない時間でも、やわらかい下敷きでは時間が無視できなくなります。 実験は使う材料の性質にも関心を持たなければなりませんね。 ( 着地の音が本当は同時でなくても、同時に着地するものだと思い込んでいると、同じに聞こえるということがあります。 無心な生徒のほうが正しい情報を得ていたのですね。心しなければなりませんね。 ) |
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愛工にある同様の実験装置です。 中央の板が前の球を弾きくとき、後ろの球が自由落下します。 これも中央の板が十分硬くないと時間差が生じますね。 |
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<参考> 自由落下と水平投射(伊藤 昇さん) |
Big Balloon 膨張時の圧力と温度の変化について (井階さん) |
ScienceWorkshop(PASCO社)の低圧力センサと温度センサです。 コンピュータにつないで温度と圧力を連続して測定してグラフ化できます。 |
左手に温度センサ、口に圧力センサを入れて測定。 下はそのときのグラフ。 |
低圧力センサに口で息を吹き込むと約5kPaとなります。 |
プロアでBigBalloonをふくらます際の圧力と温度の変化を測定しました。(グラフ右) 数回の測定ですが、圧力は+0.4kPa=+4 hPa、温度は2〜3Kの上昇という結果となりました。 BigBalloonは大きいですが、意外に圧力の変化は小さいものだと思いました。 膨らませたBallonがしぼんでいるときより重くなるかどうかは、Balloonが膨らんでいるときの内部の空気の密度がどうなるかで決まります。 外の空気との密度比が1より小さければ軽くなり、1より大きければ重くなります。 測定結果から、 圧力の変化 △p =0.004 ( 1013→1017hPaへ ) 温度の変化 △T = 2〜3/300=0.007〜0.010 ( 20→23℃へ) 両者は2倍も違います。 1m3 = 1.2kg の空気が入ったはずのBigBalloonは周囲の同体積の空気から浮力を受けますが、温度上昇の「軽減効果」がわずかに卓越するために軽くなってしまうと考えられます。 (時間がたって、内部の空気の温度が周囲と同じになると重くなる) しぼんだBalloonと膨らんだバルーンを天秤につないで比較するとき、内部の温度が重要な役目を果たすということがわかりました。 |
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小さなゴム風船ならどうだろうということで、測ってみました。 何と、5kPaくらい高いです。小さいゴム風船のほうが圧力が大きい!。 ゴムの曲率が小さいせいで、弾性力が多きいのでしょうね。 |
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可変インダクタンスコイル (清水さん) |
何と、バケツに銅線を巻いたコイルです。タップでインダクタンスを可変できます。 左が1.0mHまで。 右は20mHまでです。 インダクタンスはLCRメータで測ります。昔は高価な器械でしたが、このメータは7000円だったそうです。このくらいなら手に入りますね。 |
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LCRを直列につないで、過渡現象をオシロで見ます。 このグラフが、解析どおりのデータになっていることを通して、数量計算の意味や必要性を学べますね。 高校生ではちょいと難しいですが・・。 |
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抵抗値を変えると、過渡現象のパターンが変わりました。 これも計算で確認できますね。 |
↑ R=0.1Ωです。 ← R=10Ωです。 |
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ジャンク利用電源 (市川さん) |
コンピュータの電源がジャンク屋さんで大量に安価に出回っています。1つ200〜300円ぐらい。 同じ型式の電源を並べて、大電流を取れる電源を作りました。 5V出力を3台直列につないで15Vで数十A取ることができます。 (直列時にはアースが共通にならないように注意!) 安価な材料を駆使して、必要な装置を組み立てるのも大事な技術ですね。 |
フライバックトランスを利用しての高圧放電 |
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太陽系シュミレーター (川田さん) |
太陽系シュミレーターの紹介です。 なかなかよくできていて楽しいとの感想でした。 生まれた年の惑星の位置だとか、惑星直列はいつ起こるだとか・・・。生徒が喜ぶそうです。 でも、聴衆は、川田さんがコンピュータを使っていることに驚きを感じていました。 <参考> 太陽系シュミレーター(成相さん) |
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