2011年2月5日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

 2月3日に「ウナギの天然卵を採集」のニュースが報道されました。
 東京大学の研究チームが、太平洋のグアム島に近い西マリアナ海嶺周辺で、天然ウナギの卵31粒を発見し採取した、というものです。
 ウナギは川や湖で成長した後、外洋で産卵しているということは予想されていましたが、回遊ルートや厳密な産卵場所は不明でした。これまでの調査で稚魚や、ふ化後2日目の仔魚を採取できていたようですが、卵の採集は今回が初めてです。
 チームは、産卵は各月の新月の数日前、同海嶺の海底にそびえる海山が連なる領域で一斉に起こる、との仮説を立て、根気の要る調査を続けてきました。広い外洋で、1mmにも満たない卵を見つけ確認することの大変さを想像するに、研究チームの努力に対し頭が下がります。
 仮説を立て、実験、観察によりそれを検証するというのは科学研究において当たり前の手法ですが、実験、観察が十数年に及ぶ長期になれば、その間の苦難は大変なものだったであろうと想像できます。
 数千kmの旅をして種を維持している「うなぎ」に生命の偉大さをあらためて感じました。
 今度から、うなぎを食べるときは最敬礼をしなくてはなりませんね。

 量子力学学び直し (岡田さん  
 量子力学を学びなおしています。
 高校物理ではシュレディンガー方程式を解くことなど教えませんから、量子力学の知識は必要に迫られず忘却のかなたに・・・・。
 昔(?)は簡単ではなかった数値計算が、今ではコンピューターの助けを借りて簡単にできます。エクセルを使って、水素原子の電子の確率分布を波動関数から計算してみました。昔学んだ教科書にあったグラフが、いまでは自分の手で作成できます。
 きっと、昔より理解が増すはずです・・・・。

 書籍にも、「Excelで学ぶ量子力学 (ブルーバックス)」などがあります。市販の本に付属するソフトを使えば、入力の手間なく計算結果が得られます。しかし、丹念に式を入力していくことで理解が進むのだと思います。急がば回れですね。
          
 

       水素原子2s軌道のグラフです。→
  

 人の視覚について考えてみよう (伊藤さん  
 
 自然科学入門講座の実験キットの続きです。
 色画用紙と色紙で、写真のようなセットを作ります。 背景の色によって、中心部の同じ色が違って見えます・・・。
 (写真で見るとそれほどでもないように思えますが、肉眼ではよくわかります)

 次はアナグリフです。
 赤セロファンと青セロファンを目の前に置き、図の図形を見ると、中央部が出たり引っ込んだりしているように見えます。
 単振り子を振らしておいて、片方の目の前に赤(または青)のセロファンを置いて見ると、単振り子が円錐振り子に見えます。
 左右の目の明るさが違うと、脳は奥行きを感じるのだそうです。
 面白いですね。

 いずれも、安価な簡単な道具でできます。自分自身で体験しながら現象を学ぶということが大切だと感じますね。
   

 3Dメガネ2 (船橋さん  
 ポスターカラーに不思議な3Dメガネがついていました。
 ポスターカラーで描いた絵をこのメガネで見ると、何と色によって立体的に浮き出て見えます。
 赤色は手前に、青色は奥に、中間色は中間の位置に見えます。
 調べてみると、3Dメガネとして理科教材会社や東急ハンズなどでも販売されているようです。
 しかし、普通の回折格子のめがねで見ても、色絵は立体には見えません。どうなっているのでしょう。

<参考> 3Dメガネ (船橋さん)

 このメガネにレーザー光をあててみました。
 回折による干渉模様が出ました。しかし、よく見ると左右で見えている明点の数が違います。
 これは、普通の回折格子ではなく、溝の断面形状が鋸歯状であるブレーズド回折格子のようです。
 この回折格子は、特定の次数と波長に対して高い回折効率を示すという特長をもっています。いわば、ある特定の方向だけに光の透過エネルギーが集中するようにしたものです。

 このメガネをレーザー光の前において回転させると、干渉による明点も回転します。驚くことに0次の明点だと思っていた一番明るい点が回るではありませんか。一番明るい点は1次の明点だったのです。 
 一番明るい点が0次の明点と思えましたが違っていました。   メガネを回転させると、1番明るい明点も回転しました。
 3Dメガネはブレーズド回折格子が使われており、左右のメガネで、異なる方向の1次の回折光が強められるようになっていると思われます。回折格子なので、赤色から青色まで回折角が異なり、色によって結像位置(奥行き)が異なるように見えるというわけです。

 
 ある人が、青より緑のほうが奥に見えるがどうしてか?との声を上げました。
 みんなで見直してみると、確かに青が緑より手前に見えます。

 クレヨンで描いた色と、ポスカで描いた色を並べて見てみると、クレヨンで描いた色は、先の予想通りの奥行きの順になりますが、ポスカで描いた色では青が緑や黄色の手前に見えます。
 
 これは、青色はこの回折格子では2次の回折光が最大エネルギーを持っているためだと思われます。
 クレヨンの青、ポスカの青、同じ青系統の色ですが、光の波長はやや違うのですね。
 
 クレヨンで描いた色は赤が手前で青が一番奥に見えます。  ポスカの青色は1次よりも2次の光の透過率が高いのでしょう。
  

 Magic (船橋さん  
 最新の「消えるマジック」です。 値段は1400円程度です。

 背景の縞模様以外何も見えないのですが、ケースを取ると中には自由の女神がいた、というものです。出現マジックとしても消失マジックとしても使えます。
 背景の縞は見えるのに、なぜ女神の像は見えないのでしょう。

 
   背景の縞模様以外は見えないが・・・・・・    ケースを取ると中には自由の女神が!
  
 ケースにレーザー光をあててみると、横一線と干渉による点列が見えました。
 ここから推測すると、ケースの片面はかまぼこレンズになっていると思われます。
 手触りもそんな感じです。レンズの焦点距離程度に女神がいれば、はっきり見えないだろう・・・・
 
 
 これだけで、縞模様がはっきり見えて女神の像だけが消えて見える説明になっているかどうか・・・・
  

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