2012年5月12日(土)の例会の記録の第2ページです


 卓上型光速度測定装置 (藤田さん、林さん  
 机の上で光速度 c を測定できる装置を作成しました。
 右は装置の全景です。

 測定方法
 レーザー光を10MHzの正弦波でAM変調します。
 変調したレーザー光線を半透明鏡で2波に分けます。
  半透明鏡で反射した光はフォトダイオード1に入ります。 
 直進した光は反射鏡で反射させます。反射光は半透明鏡にあたり再び2波に分かれます。反射した光はフォトダイオード2に入ります。(直進した光は使いません。)
 
   フォトダイオード1、2の受光状態をオシロスコープで測定します。
 反射鏡(リフレクター)をLだけ動かすと、フォトダイオード2に入る光の同位相は、フォトダイオード1に入る光に対して 2L/c だけ変化します。
 このずれを測定して c を求めようというものです。
   中心部分の全体です。   光軸の調整中。
  
 変調したレーザー光を出しています。 上はフォトダイオード1。  反射鏡(リフレクター)。
  
 フォトダイオード2です。
 オペアンプとトランジスタで光信号電流を増幅してオシロに送っています。フォトダイオード1も同様です。

 反射鏡が近い場合のオシロスコープの波形と、反射鏡を L だけ遠ざけた場合の波形を比べると、フォトダイオード2の波形の位相がずれています。
 L=1.2mのときのこのずれは、約7.6ns。
 よって 2.4/c=7.6×10-9   ∴ c = 3.2×108m/s となります。
 

 光路途中に水管を入れます。 水管が入ったときとないときの位相の変化を測ることで、水中での光速度が測れます。 
 水管の長さは0.50m。  水管を通ったレーザー光が反射鏡に当たっています。

 水の屈折率を1.33とし、水管が入ったことによる光路長の変化儉は往復で 儉=1.0×(1.33-1.0)m
 この変化による位相のずれ凾狽ヘ  冲=儉/c= 0.33/ 3.0×108 =1.1ns

 実測値は2.8nsでしたので、この値から得られる水の屈折率は1.8の値になります。これはちと大きい!
 管での反射などで予想外のことがおきていると思われます。
 
  右の写真は、2枚目の半透明鏡の反射光を吸収するダンパーです。
 これも手作り。筒状で、筒の中には、針先をこちら側に向けた虫ピンを多数入れてあります。これで反射光を吸収できるのですね。

 <参考> レーザーモジュール・・・・・Global Laser社 V9323型 (変調周波数50MHZ -3dB 670nm )
        反射鏡(リフレクター)・・・・コーナーキューブプリズム板
        フォトダイオード・・・・・FID08T13TX
        電流増幅回路・・・・LM6365、2SC4739
 

 1/4λ位相板 (林さん  
 直線偏光板にシートが貼り付けてあります。これをもう一枚の直線偏光板に重ねると、シートの部分は明るさが異なることがわかります。
 
 このシートは、入射光の直線偏光を円偏光に変換する位相板です。

   
   
     位相板のはたらき
    薄いシートでも大きなはたらき。
 このセット(直線偏光板+シート)で鏡を見るとどう見えると思いますか。 
 面白いことに、全体を表裏ひっくり返すと中央部の見え方が異なってきます。周囲は同じなのに不思議に思えます。

 最近の3Dテレビの眼鏡は、偏光板であることを感じさせません。実は、この位相板を使って、右目と左目に右円偏光、左円偏光を入れるようになっているのです。
 薄いシートでも大きな働きをしているのですね。
        
  直線偏光⇒円偏光のフィルターが市販されています。   円偏光について疑問が噴出。

 <参考> 1/4λ位相板のはたらき
 

 ゴムひも楽器 (杉本さん  

 おなじみの一弦琴です。
 弦を引く力(張力)をかえることで、いろいろな高さの音を出せます。
 慣れると、名演奏が可能・・・・。
 (弦はギター用の弦を使っています。)
 共鳴箱の部分に、スピーカーを使います。これでエレキギターが完成。
 スピーカーとアンプをつないで、上と同様に弦を引っ張りながら弾くと、立派なエレキサウンドになります。
 今度は、弦にゴムひもを使います。
 ゴムを引くと容易に伸びます。これを弾くと、音程はどうなるでしょう。
  ゴムひもにフックの法則が成り立つとして考えると
  
 ゴムひもの質量をm、バネ定数をk、ゴムひもの自然長をx0、伸びをxとして、弾いたときの振動数を計算してみると
       
  伸びが大きいと、つまり x≒x0+x のとき、音の高さは変わらなくなります。
 
 実際には、ゴムではフックの法則が正確には成り立ちません。が、耳で聞く限り、ゴムひもの長さが変化しても音の高さの変化はほとんどわかりません。
 張力の変化と線密度変化が振動数を一定に保つような変化になっているのかもしれません。調べてみると面白いことがわかるかもしれませんね。
 印をつけると、そこを押さえることでいつも同じ音を出せます。   ゴムひもの振動をひろうために大型のスピーカーを使います。 
 
 ゴムひもに印をつけておくと、ゴムの長さが変化しても、印の位置ではいつも同じ高さの音が出ます。
 面白いですね。
  

 入試問題_本当に起こるの? (佐野さん  

 知り合いの教諭が、大学入試問題を解いていて疑問を感じたそうです。
 問題に感じたのは、頂点から摩擦のある斜面にはいって水平方向に運動するという点です。
 皆さんどう思いますか。
                図1のように,水平な床と角αをなナなめらか塗斜薗があり,斜面と床の境界線をx軸、x軸と直角に斜面に沿って上向きにy軸をとる。
 座標原点Oから,質量m[kg]の小物体を斜面に沿って垂軸と角θをなす方向に初速v0[m/s]で投げ出す。重力加速度をg[m/s2]とし,空気抵抗は無視できるものとする。

 (中略)

 C: 図2のように,斜面の一部を動摩擦係数μ’のあらい面に置きかえた。点Oからこの小物体を初速v0、ある角θで投げ出したところ,小物体は頂点Pからあらい面に入り,x軸と平行に距離s[m]だけすべり静止した。
問6 小物体に働く斜面からの垂直抗力の大きさはいくらか。
問7  あらい面上を進んだ距離sを求めよ。

 大学の入試課入学試験係と連絡を取り、問題点を質問しましたが、大学側は問題なしとの見解です。
 斜面上方向にも動摩擦力がはたらいており、それが重力の斜面成分とつりあうことありうる、という考えです。
 
 参加メンバーの意見はおおむね次のとおりでした。
 上記の考えだと横方向の動摩擦力と斜面上向きの動摩擦力との合力が摩擦力となり、摩擦力の向きが運動の向きと異なってきます。質点の運動を考えているのだから、摩擦力は運動の向きと逆向きのはずだから、この考えはおかしいのではないか、というものです。
 つまり、頂点から横向きに運動して静止するというのは起こりえない、ということです。
 質問の答えを要求したいのなら、粗い面に水平に溝を彫って、その溝を進んで静止した、とでもすればよかったのではという意見も出ました。
 
 入試問題は、理想的な状況での現象を問うことがほとんどですが、あまりに現実と離れてしまうのはいかがなものかと思います。
 

 葉緑素の光吸収 (井階さん  
 新しい教育課程が始まっています。井階さんの学校では、「科学と人間生活」を行っています。
 科学と人間生活には自然科学のさまざまな分野の話が入っているので、今回、生物分野の実験、葉緑素の光吸収の波長による変化を示す実験に挑戦しました。
 

 装置は、大型プリズムと光源だけです。
 何も置かないときの分散のスペクトルを確認した後、プリズムの前に色セロファンを置いたときのスペクトルの変化を見ます。
 緑色のセロファンを置いたとき、赤、青の色が弱まっていることがわかります。つまり緑色のセロファンは、赤、青の光を吸収するということがわかります。
   光源と大型プリズム。   光源の光のスペクトルです。
  プリズムの前に緑のセロファンをおくと・・・   スペクトルが変化していることがわかります。
 
 いろいろな植物の葉から葉緑素を抽出しました。この抽出液をプリズムの前においてスペクトルの変化を見ます。
  各種の植物からの抽出液です。   4番はサクラの葉から抽出しました。
  
 ビデオで撮ればテレビ画面で確認できます。上側が空気層、下側がサクラの抽出液。
 少しですが変化を確認することができます。
 波長による吸収曲線を描くには、光度計が必要ですが、高価なものです。 生徒には定性実験でも十分変化を知らせることができると思います。 
 スクリーンの代わりにビデオカメラを置きます。    上側:空気層のスペクトル。下側:4番の抽出液のスペクトル。
 直視分光器を使うと、スペクトルの変化がもっとはっきりするという意見も出ました。光源も、白色光源の方がいいのでは、という意見も。(この実験の光源は、白熱電球でした。)
 いろいろ工夫の余地がありそうですね。

 物理の教員は生物分野が苦手(?)ですが、井階さんおように、いろんな分野の実験にチャレンジすることも必要ですね。


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