2013年5月18日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

 日経サイエンスにサプリメントの効果に関する記事がありました。

 サプリメントでの栄養補充が効果的どころか、統計的に効果は疑問であり、逆に死を早める可能性があるというものです。食事の代わりをすべてサプリメント で済ますことになんとなく違和感を感じますが、この話を聞いてBSEが話題になった頃の大学教授の話を思い出しました。
 教授は「牛が牛の脳を食べることは、人が人の脳を食べるのと同じで不自然でしょ。共食いですよ。そりゃ、問題が起きるのも当然です。」と主張していました。

 このなんとなくの違和感というものが遺伝的に私達に組み込まれた故のものなのでしょうか。

 上の文章に違和感を感じた人、そうです、今回から更新は、長年務められた山岡さんに代わり、佐野が担当します。
     

 スピードメーター (前田さん)  

  瞬間のスピードを測るのに適切な教材を考えました。

  おなじみのビースピでは瞬間というより平均の速度という印象が強いので、バイクのスピードメーターを
 使ってみました。

  バイクのスピードメータを分解しました。   取っ手を回すと針が動き、時速が確認できます。


  物理基礎の授業で、スピードメーターを観察させ、動作原理を考えさせましたが、今のところ、 反応はないそうです。

 確かに高校1年生には、難しいかもしれませんが・・・

 



  手を置いている所がゴールです。どちらが先に着くのか?

  このスピードメータの原理は次のように考える事ができます。取っ手を回転させるとケーブル内の ワイヤーが回転し、 ワイヤーに連結されている末端の磁石も回転します。そして、この磁石の回転が アルミの円盤に渦電流を発生させ斥力を生み出します。この円盤の動きによって ゼンマイ式のばねとつながったメーターが動くようになっています。

 ワイヤー(磁石)の回転数がアルミ板の移動距離に正比例するのかという疑問もありました。
 スピードメーターの目盛りの間隔がほぼ等しいですが、角度の間隔は異なっているように見えなくもありません。 これは、正比例しないがためのことでしょうか?
  目盛りの間隔は等しいようですが、角度は・・・

 キャタピラーの運動 (前田さん  



  おもちゃのキャタピラーの上にアヒルとひよこを乗せます。キャタピラーが滑らずに前進すると、アヒルとひよこどちらが先にゴールに着くでしょうか?
  アヒルとひよこをキャタピラに乗せます。   手を置いている所がゴールです。どちらが先に着くのか?
 答えはアヒルです!
 
 なぜ、このようになるのでしょうか?


 
 アヒルが先に着きます。ひよこはキャタピラ上では動きません!




 タイヤとベルトが空回りしないとすると、図のようにベルトの下部の点は地面に対して静止します。 タイヤが破線の部分までL[m]動くとき、ベルトは上部、下部の合計2L[m]の長さ動くので、アヒルはキャタピラに対してと同じ距離Lで進むことが分かります。
 動滑車のアナロジーが使えるというわけです。

 円運動の速度の違いとして扱えるという意見もありました。タイヤ上の点Oから観測するとき、タイヤの中心の速度V=rω、タイヤの最高点の速度V′=2rω= 2Vとなり、タイヤの中心の2倍の速度でキャタピラは動くというものです。
  様々な考え方が提案されるのがサークルの魅力です。

 干渉縞を中学生に (飯田さん  

 次回の先進科学塾は6月8日(土)9日(日)に行われます。先進科学塾には中学生の参加者も見込まれることから、 回折格子による光の干渉の実験を工夫し、中学生でも理解できるように工夫しました。

 まずは、演示実験です。
 回折格子による光の干渉の実験において、回折格子からの距離と干渉縞の間隔を観察するには水槽など透明な容器に 煙やフォグを充満させる方法が知られていますが、飯田さんは、スクリーンを斜めに置くことによって回折格子 からの干渉縞の間隔を立体的に(!?)観察できることに気付きました。
  スクリーンを斜めにしただけですが・・・
 ちょっとした発想の転換ですが、干渉した光を観察するだけで、回折格子からの距離と干渉縞の間隔の関係がはっきり分かります。
少しの工夫で回折格子からの距離と干渉縞の間隔の関係が分かります。
 スクリーンと回折格子を90°回転させると教室全体で観察できるとの声があがりました。これなら、 教室のどこからでも観察できますね!


 続いて、個人個人で定量的な実験を行い、理解を深めていきます。
装置を90°回転させると、教室全体で見れますね。
 飯田さんは中学生でも理解できるように装置に2つの工夫を加えました。 1つは、観察装置に目盛を付けること。2つ目はグラフ用紙を使い、1次の干渉光でのdsinθ=λを 計算ではなく、定規で測ることです。
 次の手順で実験を行います。まず、観察装置で青色、赤色の干渉光ができる目盛りを読みます。次に、 装置で観察された光の道のりをグラフ用紙に書き入れます。さらに、格子定数はなれた光線を書き加え ます(ここでスリット間隔が非常に小さいため、2μmを10cmに拡大)。最後に、2つの光線に垂 線を引けば、dsinθ=λが定規で測定でき、回折格子による光の干渉が理解できます。
工作用紙で作られた観察装置です。
 回折格子越しには目盛が書かれており、見るだけで計測できます。  グラフ用紙に光の道すじを書き、定規で測定!


 光の干渉は高校で学ぶ内容であるので、中学生に分かるのかという意見もありましたが、計算の苦手 な高校生達には効果的な授業展開であるように思います。


 マイクロスコープ (飯田さん  
 飯田さんはElecomのマイクロスコープを購入しました。

 パソコンにUSBで接続でき、30倍まで拡大できます。また、映像を録画できるソフトウェア も付属しています。以前から同等の物はありましたが、この値段は3000円弱、随分お手頃になってきました。
  130万画素で30倍の倍率です。毛根や皮膚のチェックに使う人もいるのでしょうか?

 パソコンの液晶を拡大してみると、ドットの集合で画像を表現している事がよく分かります。

ノートパソコンの液晶を拡大すると ドットがたくさん見えますね。
 では、このような印刷物を拡大してみるとどのように見えるでしょうか?
その辺にあったパッケージを拡大してみると
 これも同様にドットの集合体ですね。
これもまたドットの集まりなのですね!
 鈴木さんがお持ちのデジタルカメラでも同じようにできるという事で新聞広告を拡大して見せてくれました。


 高倍率のデジカメがあればをパソコンやテレビにつないでも、同様の事ができそうですね。

 実像と虚像の見分け方 (鈴木さん  

 中学校に虚像と実像の違いを理解させるために、像があるように見える所にスクリーンを置いて像ができるか確かめることで、 実像と虚像の違いを実感させる必要があるのではという問題提起です。

  スクリーンに映る像は光がそこに実際に集まっているので実像。逆に、スクリーンに映らない像は錯覚によって見え
ているように感じる虚像というように区別するわけです。
 
 まず、凹面鏡を重ねたミラージュでやってみました。像は実像か虚像かどちらでしょうか?
   このブタの像は実像?それとも虚像?
 スクリーンを持っていくと、像が写ります。つまり、これは実像ですね。

 ここで半透明のスクリーンを用いたのは上から観察できる必要があるからです。
   ブタの像がスクリーンに映し出されました。

 次は、鏡にできる像について調べてみます。この実験には、 鏡ではどこに像があるか場所が特定しづらいので、ハーフミラーを使います。   
<参考> 鏡の像 (鈴木さん)
 ハーフミラーの奥にできている像の位置にスクリーンを持っていくと、スクリーンに像は映るでしょうか?



 この場合は映りません。よって、虚像だということが分かります。


 これなら生徒たちも鏡の中の像が虚像だと理解できるでしょう。

ハーフミラーを使えば像の位置が特定できます。

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