2014年9月27日(土)愛知工業高校での例会の記録の第3ページです


 電荷の移動と電気力線 (臼井さん  
 コンデンサーの極板の外に電場が生じない事を説明するのに、電気力線を書けば説明することができ、この事は教科書で触れているものもあります。

 缶を使って作った平行板コンデンサーを作り、その間にはく検電器を置きます。そこに負に帯電した塩ビパイプを近づけると、箔が開きます。
 平行板コンデンサー内外の電場を説明するのに分かりやすい説明です。
 次に、2つの金属を導線でつなげ、同様に塩ビパイプを近づけると、箔は開くでしょうか?

 結果は開きません。

 このとき、金属板間には静電遮蔽が起こり、電場がなくなります。

 この事を、臼井さんは、上に述べた電気力線と電荷の移動で説明を試みました。

 今、電荷1つから出る電気力線を2本とし、図のように、塩ビパイプに帯電する負の電荷が2つであるとします。

 空き缶をコンデンサーにするのも味がありますね。
 すると、導線でつながれた金属板間で静電誘導が起きた結果、負の電荷が1つ移動したとき、ちょうど平行板コンデンサー間で電気力線が打ち消し合います。
 このことから、塩ビパイプに帯電する電気量と平行板それぞれに帯電する電気量の大きさの比は、2:1になるというものです。
 帯電する電荷の電気量が異なることに何か違和感を感じたものの反論はでませんでした。

 数十分後、飯田さんが塩ビパイプが負に帯電するならその相手が必要で、アースが正に帯電することを考えなくてはならないことを指摘しました。

 この事を考えると電気量の大きさは等しくなることが説明できます。
 最後には正しい答えらしきものが出ました。

 アルミでシールド (臼井さん  
 電流が流れているとき、電気コードにガウスメーターを近づけると、30[V/m]の大きさになりました。
 交流の電場をシールドしようとアルミホイルを使いましたが、ほとんどシールドできません。

 アースを取ってみると、やはり、ほぼシールドできました。
 シールドするにはアースを取ってやらないとアルミホイル自体に渦電流が流れてしまい効果はほとんどないようです。

 電磁調理器では1m離れた場所でもかなりの電場が生じ、調理器用に電磁波をシールドすると謳われ販売されているエプロンも存在するようですが、効果があるのか不安ですね。
 アースを取らないとほとんど効果はありませんでした。

 ジャイロ効果 (伊藤政さん  
 科学部の生徒がジャイロ効果の研究を行っているということで、これまでに行ったことを紹介してくれました。

 まずはじめに、生徒にジャイロ効果に関する実験を教え、実際に作ってもらい、原理を考えさせました。
 1つ目は、伊藤さんがweb上で見つけた、中古のLD(レーザーディスク)2枚を貼り合わせ木の棒を差し込んだ、巨大ジャイロゴマです。

 自転車の車輪を使う方法が過去に紹介されましたが、こちらの方が手軽でしかも安価、目から鱗のアイデアです。
 LDを使うというアイデアはヒットです。
 次は、岐阜物理サークルのジャイロ二輪車についてです。

 この説明を岐阜物理サークルの本を読んで理解ができたのですが、Web上で見つけた東大の名誉教授の論文の式が理解できず、参加者で議論となりました。

 岐阜のジャイロ2輪車の仕組みについて調べましたが...
 侃々諤々の意見がありましたが、引用の前のページがその場になかったことのあってか、結論は出ず、単に式と説明が合致していない疑いもあります。
 内容が内容だけに分かりやすく書いてくれると助かりますが...

 ばねにはたらく力 (川田さん  
 川田さんの友人は自動車部品製造の会社で働かれていました。その会社から米大手自動車メーカーに製品を納入した際、安全基準を満たしていないとクレームが付き裁判になりました。

 議論となったのは次のような問題です。

 右の図のように、あるばねを20Nの力で引き伸ばしておきます。ここで、ばねの全長が変わらないようにこのばねの中央に20Nの力を下向きに加えたとき、点OはO′に移動しますが、このときの上のばねと下のばねの弾性力F1,F2はいくらになるかという問題です。

 この問題に関して大手メーカーの開発者から、F1 = 40[N]となる主張しました。しかし、到底納得できなかった友人は反論として、以下のように論証を行いました。
 ばねのばね定数をk、20Nで引いたときのばね全体の伸びをLとすると、
弾性力 20 = kL ― @,
     F1 = 2k (L/2+Δx) ― A,
     F2 = 2k (L/2−Δx) ― B,
 点O′での力のつりあいより、F1 = F2 + 20 ― C
 A+Bに@を代入し、F1 + F2 = 40 ― D  C,Dより、F1 = 30[N], F2 = 10[N]となる。

 これを聞いた米のメーカーは和解金と支払う決定を下したとのことです。

 JISS規格の有効数字 (川田さん  


 有効数字について調べていたところ、工業の分野では有効数字の扱い方に規則AとBがあり、規則Aが使われることが多いようです。  規則Aでは、数値の丸め方として、4捨5入という方法が用いられ、工学部や工業高校で用いられています。4捨5入とは、5の前が偶数のときは切り捨て、奇数のときは切り上げを行うという方法です。

 私も含め、理学系や教育系が多いサークルメンバーには初見のもので、驚きをもって受け止めた人も多い様子でした。


 謎のおもちゃ (深谷さん  
 深谷さんが、購入した輪っか状の玩具を紹介してくれました。

 これは、筒の中の球が輪を何周したか計測するものです。
 腰周りに持って使用することもできますが、何かいい使い方があるでしょうか?
 何かいい利用方法は?

 美味しんぼ問題とその背景 (井階さん  

 政府関係者がたかが1つの漫画である「美味しんぼ」について、批判を繰り返したことに、背景に何かあるのではとの推測が働きましたが、この問題について、井階さんが岩波「科学」の記事等を元にまとめ、例会ニュースの巻頭に執筆されました。

 今回はその元となった資料等を紹介してくれましたので、概要を紹介します。
 環境省は「これ以下なら影響がないというしきい値があり、造血機能低下は500mGyであり、鼻血のような出血傾向が起きるのはそれより高い被ばく線量である」という見解を発表しています。

 環境省が言及するしきい値があるかないかという議論は今も続いていますが、この問題は、広島長崎でのアメリカの原爆投下による被ばく者の保障の問題から続くものです。
 実際、爆心地から2km以遠の被ばく者からも、鼻をはじめ、歯茎や腸などからの出血、発熱などの症状が統計的に有意に出ており、低線量被爆や直接被ばくでない残留放射線による影響と考えられる症状も出ています。
 また、アメリカのスリーマイル島やチェルノブイリ原発事故の影響を受けるベラルーシからも低線量被爆による出血等の健康被害の可能性を示唆するデータが出ています。

 日本でも1万7000万人の被爆者の2年に渡る健康データがあり、一般に公開し、多角的に分析がなされるべきですが、放射線影響研究所が公開を阻んでいること、政府が御用学者に分析・評価を任せ続けていることなど、問題の根の深さを指摘するものです。


 クレーンの仕組み (井階さん  
 病気療養中の井階さん。入院中に病室から毎日のように眺めていたクレーンに魅力を感じ、仕組みを調べてみたそうです。

<参考> コベルコクレーン株式会社(クローラークレーンを参照)
   クレーンの仕組みも

 ダイクロイックミラー (井階さん  

 授業で偏光を扱う際に、液晶の仕組みに触れた後に、電卓や携帯画面を偏光板で観察させてきました。

 しかし、最近は偏光板で真っ暗にならず、色付きが変化して見えるという声が増え、また、液晶プロジェクターでも同様に光の三原色補色が現れることが増えてきました。困惑していました。

 何気なく、プロジェクターの仕組みを調べていたところ、その原因がダイクロイックミラーであることが分かってきました。
 ダイクロイックミラーとは入射光の入射角により、波長ごとの反射率が異なり、特定の色彩を取り出すことができるミラーです。

 科学技術の進歩を感じますね。

<参考> マジカルシートを使った補色の実験(佐野さん)

   [前ページへ]