2016年7月23日(土)明和高校での例会の記録です。


 LEDを使った葉緑素の光吸収 (石川さん)  

 光の散乱や吸収・透過の内容は高校の教科書に記載されていますが、光源には白色光を使うことが多いように思います。

 石川さんは、光源に赤・青・緑のLEDを用いることで、波長によ散乱や透過の違いも理解できるのではと考え、試験管立て風の装置を製作しました。
 この装置は、4本の試験管の真下に、試験管固定のための穴があり、その中に高輝度LEDが左から赤、緑、青、白と固定されています。そして、下の台にはスイッチと乾電池を使った電源部があり、電流値が同じになるようLEDと直列に抵抗を入れています。

 右の写真で試験管内に入っているのは、石川さんが持参した菜花を安価な燃料用アルコールで葉緑素を抽出し、コーヒーフィルターでろ過したものです。
 自宅の菜花から抽出しました。
 前日に抽出したものを持参してきたそうですが、高温の影響か、緑色が薄くなってしまっていましたが、スイッチを入れ、暗くすると、写真のように見えました。
試験管を上から覗くと、赤・青は吸収されてあまり見えませんが、緑は透過して眩しいほどです。

 試験管を上から覗くと、緑と青はあまり透過しませんが、赤は眩しいほどでした。
 実際に観察すると本当に綺麗でした。
 また、青色LEDの上にある試験管を少し持ち上げると赤ワインのような発光が見られます。これは葉緑素が青い光を吸収して励起した後、光合成に使われることなく、低いエネルギー準位に落ちた際に発した蛍光と説明できます。

 同様の現象が、ブラックライトを当てたときにも観察できました。
 ワインレッドの蛍光が見られました。


 吊り下げ式デジタルスケールの活用 (佐野さん)  

 ばねばかりは、実験を行う上で、@上下方向の力しか測れないA目盛がつりあいの位置を超えて振動してしまうB逆方向の力が測れない など問題があり、お世辞にも使い勝手がいいとはいえません。

 佐野さんは、前回の例会で臼井さんが紹介された安価な吊り下げ式デジタルテスターを購入し、どのような実験に使えるか試してみました。

 作用反作用の法則の確認に。
 まず、簡単なところでは作用反作用の法則、2台のテスターで引き合い、値を確認します。

 次に、ばねの単振動です。つりあいの位置で0点補正をかけ、単振動させると+−で力の向きと大きさが連続的に表示できます。
 ただ、サンプリング間隔が固定されており、目盛の表示に時間差があるため、その瞬間の力を示せない、また、動きはじめてから最高点や最下点での力を意図して表示できないところは難点です。
 単振動では、合力の大きさが逆向きでも表示できます。
 最後は、横浜物理サークルで紹介されていた実験をもとに考えた、最後は張力の大きさを考えさせ、このスケールを用いて実測する試みです。

 床と車の間には摩擦があり、矢印の方向に車が動き出すとき、図の(ア)(イ)(ウ)で張力の大小関係はどのようになるかという問題です。

 
 横浜物理サークルで紹介されていた車の引き合いです。
 結果は、T1≒160gw、T2≒200gw、T3≒230gwとなり、
1>T2>T3 となりました。
 佐野さんは下図のような力の作図を考え、運動方程式を使って理論と整合性をとりましたが、(ウ)のおもりの質量をさらに増やしても理論通りに張力そして摩擦力は増えていないようでした。
 また、(イ)(ウ)では、断続的にタイヤが空回りするため、「T2を静止摩擦力と定義するのはどうか。ただ、T1よりこれだけ大きいのはタイヤが回転するとき地面を蹴るキックの力か?」「摩擦力が変化してモデル化しずらいので、単純な機構のものを使うべき」など、この実験での定量化を疑問視する声もありました。
 吊り下げ式デジタルスケール2つを直結します。
   定量化を厳密に求めないなら、ばねの方が面白いという声も!


 シュポシュポ管  (飯田さん  

 「たのしい授業」に記載された「シュポシュポ管」の実験をやってみたところ、とても楽しかったということで意気揚々と飯田さんが水場で実験!
 笑顔のまま、30〜40cmの長さに切った塩ビ管の上方を指で軽くふさぎ、もう一方は水につけたまま、何度も上下に動かします。

 すると、水が吹き出し、指にあたって前方へ多くの水が、残りはあさっての方向へ!
 大満足で満面の笑みを浮かべる飯田さんですが、窓やら床やら、水がどんどんこぼれて大変なことに。無邪気な悪魔のような飯田さんの行動に明和の生徒たちは井階さん以上に心配の色を見せながら苦笑い。外でやるのが無難です!

 3階から水を噴射!下には誰も居らず、助かりました。
 その後、小川さん、川田さん、SSH部の生徒さんとチェレンジしました。

 慣れるまでに多少時間がかかりますが、振るときに上下させると指が離れる程度に軽くふさぐというコツをつかめれば、上手くいくようです。    
 小野さんも次第にコツをつかみました。
 飯田さんによる動作原理の説明です。


 流体力学の基礎 (山本さん  

 「流れのふしぎ」日本機械学会 編を読み、概略を伝えてくれました。

 まずは霧吹きの原理です。

 霧吹きには2種類あり、1つはパイプを1部分のみ細く絞る方法、もう1つは突起物を入れる方法です。  まずは、前者について、ストローを使った簡単な実験を例に説明します。

 ストローを一部分だけ絞ると、『ベルヌーイの定理より、その部分の断面積が小さいため、流速が大きくなり、圧力が低くなります。』
 そのため、そこに小さな穴を開けると水を吸い上げます。
 このとき、水流が気泡と交ることで、水は細かい霧状になって出てきます。  
 ストローに穴を開けます。ここから水が入るようにします。
 2つ目は塗装用のスプレーガンなどに使われる方法です。
   この説明に関して、「ストローの出口では流速が大きく、ベルヌーイの定理から、そこの圧力が低くなり、液体を吸い上げる」と説明されている場合があります。
 しかし、流線曲率の定理から、流れが曲る部分の内側の圧力が下がり、液体を吸い上げるというのが、正しい説明になります。

 その他、飛行機の翼も、ベルヌーイの定理で説明している本が多くありますが、これでは薄い翼の揚力を説明できないため。、流線曲率の定理の効果も大きく、言及すべきとの話でした。  
 ストローを細くするのに、針金を使っています。
   また、コアンダ効果という、流れが凸な曲面に沿って流れようとする効果の話もありました。
 これは、蛇口から水を出し、スプーンを近づけると、スプーンの曲面に沿って水が曲がるなどの現象の説明に使われます。
 ストローの穴を水につけ、ストローを強く吹くと霧状になります。


 電場、磁場中での荷電粒子の運動 (川田さん)  

 磁場中での荷電粒子の運動は、等速円運動やらせん運動など教科書に出ているものの、高校生にとってかなり難解な内容に思えます。

 右のような、ローレンツ力に関する横浜国立大学の入試問題を見つけ、川田さんは、電場も磁場もある空間での荷電粒子の運動を計算してみました。

 内容的に大学院試に出る程度のものだそうですが、微分方程式を立て計算すると、水平面を1回転させたときの円の一点の軌跡であるサイクロイド曲線となりました。
 これを、横浜国立大学は巧みな(?)誘導を用いて、大学受験問題としています。
 それは、等速度で動く観測者を用いて、円運動として観測し、そこに等速の運動を合成させるという手法です。

 ただ、その中では、電場中では、静止した観測者と、等速で動く観測者では、電場の強さが変化します。
 これは、等速で動く観測者から見ると、荷電粒子がその向きとは逆向きに等速に動いて見えるため、起電力V=qEが生じるためです。
 下線部は川田さんが引いたものです。


 霧箱 (林さん)  

 霧箱を2種類持ってきてくれました。1つは大型のもの、もう一つは小型で班で観察する程度のもの。  新たな実験として、中央に側面と同じ材料で仕切りを加えることで、β線が遮断させることを確認できるようにしました。

 また、容器を段ボールで作り、そのまま使い捨てにするというのも、面白いアイデアです。


 霧箱製作のエキスパート(?)ならではの細かな改良点もあります。
 仕切りを加え、放射線が遮断されるかどうか。
 まずは、霧箱に使うラップはポリメチルペンテン製のCO-OPラップを使ったことです。実験で静電気の関係もあり、ラップの材質は霧箱の性能に大きな影響を与えること、塩化ビニル素材のものは以前から良くないことをつかんでいましたが、ポリエチレンよりも上手くいくそうです。さらに、ラップは使用直前に新しいものに取り替えることも重要だそうです。
 また、霧を作る原料のアルコールは高価な「エタノール」だけでなく、メタノール(取扱注意!)の混ざった安価な「燃料用アルコール」や「プロパノール」が使用可能であることが分かっただそうで、林さんはプロパノールを使っているとのこと。
   さらに、断熱材にはこれまで使っていた発泡スチロールより高性能な建築用のスタイロフォームを使っているということです。

 これらの工夫で、ドライアイスを使って、一日中、霧箱で放射線を観察できるようになりました。
 円形の針金で静電気を掃除しています。


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